1ヶ月以上投稿できてなくてごめんなさい.....遅くなりました!!!
2024/06/8投稿
第49話
「人生幸福最盛期」
ガチャッ
父
桃
父
ナイコ・ミヴェーニュ 3歳。
父と母と田舎に3人で暮らしてる、普通のちっさい男の子。 強いて言うなら文字を読めるようになるのが少し早かったくらい。
でも起きるのは嫌い。
桃
父
桃
父
父
桃
父
母さんも父さんも好き。 多分、俺の人生幸福最盛期はここら辺だと思う。
当たり前の幸せと、俺にはもったいないくらいの愛情。
願わなくても手に入るそんな日々。
幸せじゃない時なんて、本当、ひとつも無かった。
桃
父
母
朝日が差し込むキッチンに立つ母。 緑のエプロンはいつも変わらなくて、後ろでとめてる髪型もずっと同じ。
俺は「偉い」と言われてテンションが上がる系の3歳児である。
桃
父
桃
父
キッチンから匂いの正体をダイニングへ運ぶ母さん。
母
桃
アップルパイ。
桃
父
桃
父
父
俺を椅子に下ろしながら言う。
桃
桃
父
桃
父
桃
母
父
父
いただきます!
母
母
母
父
まるで俺(息子)に言い聞かせるような口調で詰め寄る母さん。 何度目かも分からないその言葉を父さんが笑いながらあしらう。
4歳の俺の誕生日。父の単身赴任先への移動が早まってしまったので、1週間早く駅で見送りをしている。
桃
せっかくの誕生日を邪魔された気分で、父のせいでは無いと分かっていても反抗心から素っ気なく言ってしまう。
父
父
桃
父
父
桃
王都はとにかく遠いと聞いた。 乗り物に乗っても何時間もかかる。
桃
父
父
父
桃
先程の母さんのようにずっと口酸っぱく言ってくること。
1度聞けば分かるのに、何度も何度も言い聞かされる。 母さんのことが大切なのは分かるし俺も同じだけど、もう耳にタコができそうである。
父
桃
桃
父
ギュッ
俺と母さんを優しく引き寄せて抱きしめる。 いつもの豪快な勢いは無くて、別れを悲しんでいる雰囲気に戸惑った。どんな反応をすればいいのか分からない。
父
母
桃
真面目な顔の父と泣きそうな母。 いつもと違う雰囲気の両親に、どうすればいいのかさっぱりな俺。
少しむず痒いような見送りだった。
その年から、ミヴェーニュ家では俺と母さんだけの生活が始まった。
桃
母
桃
桃
母
桃
2人で食べると少し残るアップルパイ。
桃
母
桃
桃
ズルッ
桃
バッシャーンッッ
桃
母
行動範囲が少し広がって
桃
桃
ザァァッ......(波
砂のお城
桃
母
桃
桃
母
桃
多分泣き虫も少しは逃げた。
桃
母
桃
母
桃
桃
母
「愛情」 という言葉は知らずとも、 感じ取れるようになっていった。
桃
母
桃
母
母
桃
父さんもたしかに一緒に居るような、 そんな日々。
俺は近所の子とあまり遊ばない子供だったので、母とばかり遊んでいた。
「母さんを任せた」という言葉と、人とのコミュニケーションを面倒くさがるようなひねくれた性格のおかげで、常に母さんの後ろを着いて回っていた。
大人になってから思い返してみると、 結構なませガキだった気がする。 良く言えば自由奔放?
やりたいことは心置きなくさせてもらえたし、わがままをよく言う子供だったが我慢を強いられたことは無かった。 不自由を知らない幸せな日々だった。
母
桃
母
母
桃
父とは手紙などで頻繁に連絡を取っていたのでそんなに寂しい気持ちは無い。
しかし去年した約束でもある。
桃
母
母
桃
王都なう。
桃
桃
これが想像以上の長旅であった。 お尻は痛いわ王都に近づくと人は多くて狭いわ、まじでキツかった。
ということでめんどくさい子供の俺はずっとぐずっている。
母
桃
母
母さんも疲れているはずなのに、俺のわがままを否定することも無くすぐに抱っこしてくれた。 いや5歳だろ。自分で歩けや俺。
父
猛スピードで向こうの方から迫ってくる久しぶりの父親の姿。
見た目は何も変わっておらず、ボサボサな髪と黒いコートに長いブーツで迎えてくれた。
父
ギュゥッ
母
桃
母さんと抱っこされている俺を一度に抱きしめる。 俺の顔は父の体に押しつぶされた。
周りには人が沢山いるが、母さんが「離れて」と言っても父さんはしばらくこうしていたいようだ。
桃
父
桃
父
桃
父
桃
果たして何が偉いのだろうか
父
父
桃
さて、ちょうど1年前は王都に対する興味など微塵も無かったないこ少年なのだが、わずか齢5歳で人生の分岐点が訪れる。
桃
桃
桃
桃
王都にどハマりした。
桃
夢の中でも
桃
ズルッ
桃
バッシャーンッッ
桃
母
起きていても
桃
桃
食べているときでさえ
頭が王都に埋め尽くされていた。
桃
毎年俺の誕生日がくるたびに父に会いに行くのだが、この前3回目の王都へ行った後日である。 つまり俺は今8歳。
必死に王都に行く方法を模索しているのである。
5歳の頃に父さんに聞いたら 「勉強したら王都のいい学校に入れる」 という話を聞いたので、家の父の書斎を使ってもいい許可をもらって適当に本を読み始めて3年。
言葉の知識はかなり増えたし、母さんに「文字が綺麗になった」と褒められた。
桃
賢い学校とやらで学びたいことは特に無い。勉強も好きなわけじゃないし。
もっとしたいことをするべきでは?
桃
強いて言うなら母さんを守るくらいだろうか。
桃
村長
桃
村長
村長
村長
桃
桃
悩みを持つ ↓ なんでも知ってそうな村長に聞いてみる ↓ 村長がどえらい道を進める ↓ 無知な少年ないこはそれを鵜呑みする
↑当時8歳の思考回路である
桃
村長
ガチャッッッ
桃
母
桃
桃
桃
母
母
事の経緯を説明中、俺は興奮しながら話していたのでその時点で気づくことは無かったのだが、母さんは実に頭の痛そうな顔をしていた。
そりゃそうだ。 大切に育ててきた息子が、いつ命を無くすか分からないような職に付きたいと言うのだからそんな顔にもなるだろう。
母
ひとつ、覚悟したようなため息をついて真っ直ぐな目で俺に言った。
母
母
母
どうにか分かってほしそうな顔である。 我儘を初めてさえぎられ、俺はまだ子供と言えど違和感を覚えた。
けれど大人には程遠い。 まだ純粋無垢な子供である。
桃
母
桃
桃
母
じっとしてればいいものを。 少し考えていれば分かった事を。
大好きな母に喜んでもらいたい一心で、 何も周りが見えていなかった。
母さんを守るために必要なのは力じゃ無かったし、王都に行ってしまえば母さんがひとりになるのは予想出来たはずだ。
無邪気な少年は、後の自分がひどく後悔することをまだ知らない。
村長
村長
マテック
頭のてっぺんがハゲていて、謎に手入れされてそうな尖ったひげは真っ白。 第一印象は「仙人」だった。
紳士....っぽさは無いが、ラフな服装にも関わらず、当時の俺は幼いながらも威厳のようなものを感じとっていた。
母
桃
師匠との出会いである。
マテック
桃
マテック
桃
マテック
桃
師匠の家は山奥で、村の教会との距離と言えば、俺の足で普通に歩くと小一時間ほどの距離である。
そして今はもう夕方。
桃
マテック
桃
マテック
桃
ザシュッ.....ザシュッ.......(薪割り
桃
桃
弟子入りして約1年半。師匠とは一日に5回喧嘩をするような関係になった。
初っ端からの脳筋メニューに痺れを切らし、敬語が外れるまでに時間はかからなかった。 今では愚痴もお構い無しに口に出している。たまに怒られるけど。
朝は早いし修行は人外育てたいんかってくらい厳しい。
これまで我儘をなんでも聞いてもらっていたのだな、と、不自由になってから気づいた。
桃
自分で行かないから知らないのかもしれないけど結構遠いんだよ。 もうタバコの葉育てちゃえばいいのに。
見事なパシリ扱いを受けているのに腹を立てながら、日頃のストレスを薪にぶつけていく。
おじいさん
桃
声がした方を見る。 真夏なのに、サンタクロースのようなおじいさんがこちらを見ていた。
桃
紫
なんか小さな子供まで見える。
不審者?こんな山奥に? 盗賊とか....??
桃
おじいさん
桃
桃
桃
ドサッ
紫
おじいさん
紫
おじいさん
紫
桃
桃
おじいさん
桃
あ....意識が........
桃
ここ....ソファ?
紫
紫
桃
誰だこの子.....? なんだっけ....「しょう」だっけ?
紫
桃
向こうがお客なのに俺が接待されているみたいである。 水はありがたくいただくけど。
桃
紫
紫
桃
紫
初めて呼ばれた。 自分の名前を女の子っぽい名前だとは思っていたが、ちゃん付けは初めてだ。
桃
紫
幼い笑顔を見せる。
マテック
桃
やつれた様子の師匠が顔を出した。 いつものパサパサした雰囲気はどこかへ行ったようだ。
おじいさん
桃
桃
紫
桃
紫
ということはこの子は孫なのか。 たしかに静かに光るような紫の目が同じである。
紫
紫
桃
おじいさん
おじいさん
桃
おじいさん
おじいさん
桃
紫
紫
桃
桃
紫
サンタさんが言った「釘をさしておいた」というのは本当にありがたいことをしてもらったと後でしみじみ感じた。
どうやらあのおじいさんには師匠に対しての凄い抑止力を持っているようで、修行のメニューは変わらなかったが、他の部分は師匠も何でもかんでも任せるのを辞めたらしい。
ということで俺の中であのおじいさんは尊敬に値する人物になった。
後から聞いた話によると、初兎ちゃんことアメシストの瞳の少年はおじいさんの実の孫では無く、拾い子だそうだ。 目が似てたのはたまたまだったらしい。
自己紹介でも言っていたように剣士の手解きを受けているようで、 小さい山をひとつ超えたマテック師匠のこの家までの道がちょうど良い修行になるらしい。
俺が師匠に弟子入りした当時からここへは来ていたらしいが、いつも俺が修行中の時だったようだ。
師匠曰く、サンタのおじいさんとは戦友らしい。 まだ血気盛んな頃に壮大な旅をしたとかなんとか、聞いてもない"自分の"武勇伝を沢山語ってくれた。
大切な友人なのだそう。 楽しげに喋る姿は新鮮な師匠だった。
ドスッッ(ソファに座る
桃
マテック
桃
マテック
中等科の年齢になったからっていきなり修行のハードルを上げるのはやめてほしい。12歳も13歳もさほど変わらないだろうに。
マテック
桃
寝っ転がったまま手紙を受け取る。 母さんの名前だ。
桃
カサッ....(手紙を開ける
桃
桃
マテック
桃
元々喘息持ちの母だが、俺が弟子入りして半年くらいの時から咳が酷くなったとは聞いていた。
近頃どんどん会う回数が少なくなってきているのは感じていたが、まさか手紙が届くほど体調が変化していたとは思っていなかった。
桃
マテック
桃
マテック
マテック
何があっても俺が修行を休むことを許さなかった師匠が、こんなことを言うとは。
その真剣な眼差しも相まって、これがただ事ではないのを理解した。
ガチャッ...
桃
久しぶりの我が家は、少し埃っぽくなったくらいで家具の配置は何も変わっていなかった。
母
桃
椅子に腰かけていた母さんは前見た時よりずっと細くなっていて、顔色も優れないようだった。
久しぶりすぎて歯切れの悪い返事をしてしまう。
桃
桃
母
母
桃
母の願いを初めて聞いた気がする。 いつも俺のワガママばかりで、母さんは自分のやりたいことを何も言わなかった。
母
桃
母
母
桃
母
桃
桃
俺が帰ってきた日から、母さんの体調は悪化の一途をたどっていった。
桃
桃
母
ほぼ寝たきりになった母の声はずいぶん細く小さくなって、昔の声とはかけ離れている。
必死に息を吸って喋る姿を見ていると心が痛かった。
母
母
桃
俺も父さんも自分のことばかりで、家に帰る期間なんてほんの一瞬だった。 そんな中で、願いも言わず愚痴もこぼさず、ただ笑顔で見送ってくれた母。
そこにどんな複雑な感情があったのか、想像はできないけれどその結果がこれなのだ。
桃
桃
桃
母
今にもすっと意識がどこかへ言ってしまいそうな、苦しそうな声で言った。
母
桃
仕方なさそうな笑顔を見せる母。 「ごめんね」なんだろう。この人は手紙を送っていないのだ。
桃
父さんの職場に手紙を送ってから返ってくるまで1週間かかる。 つまり向こうに着くまで3.5日。
ここに来るまで8時間だから、最速でも4日ほどはかかってしまう。
4日間も....この状態の母さんが耐えれるのか.....?
桃
桃
いや、そっちの方が無駄な時間だって 本当は分かっている。
桃
桃
母
桃
桃
母
桃
桃
桃
桃
桃
そんな時間残されてるの?
自分への問いかけを振り切って、靴を履いて家を飛び出した。
桃
桃
桃
王都へ行く6時間、汽車の隅っこで ずっと手を組んで神様に願っていた。
「お願いします神様」なんて笑えてしまう。
今まで神様に願ったことすら無いくせに。全部家族が叶えてくれたくせに。 なんて図々しいのだろう。
それに気づいて懺悔したって、ちょっと遅すぎた気がする。 俺はずっと自分勝手だったんだって。
それでも神様に頼る以外思いつかなくて、なにか他の事を考える気にもならなくて。
汽車の隅っこでずっとブツブツ呟いている子供の切符を見て「王都、着いたよ」と肩を揺さぶってくれた男性の声に、 急いで汽車を飛び出した。
桃
門番たち
王城の正門に言ったら問答無用で追い払われるのは想像できたので走りながらさまよっていると小さめの門にたどりついた。
桃
桃
門番にしがみつくように頼み込む。 ここがそんなに使われない門なのか知らないが、門番は優しい人だった。
衛兵にしがみつくなんてとんだ無礼を 許して、話を聞いてくれた。
門番たち
桃
桃
桃
目の前が真っ暗になっていく。
桃
門番たち
桃
門番たち
門番たち
門番たち
門番たち
桃
父
桃
桃
父
桃
桃
父
桃
父
桃
父
父
父が目線を合わせて頭を撫でた。 顔が真ん前だ。
桃
桃
気がぱっと緩む。 強ばっていた体の力が抜けていく。 緊張がゆっくり解けていく。
泣きながら事を伝えた。
職場の人達が「すぐに帰れ」と言ってくれたらしい。 話し終わって3時間後には、もう最寄りの駅に着いていた。
その日は父さんを連れて帰って3日後の夜だった。
全開にした窓から妙に気持ち悪い暑さの風が、首を撫でるように通っていく。
母
母
桃
桃
父
桃
桃
父
父
桃
母
桃
母
桃
桃
母
悲しそうな顔をされる。 父が俺の背中に手を添えて、さすった。
父
桃
桃
桃
母
母
俺の手に右手を重ねてきた。 隠しようもない涙がボタボタ落ちて 止めようと思っても止まらなかった。
母
母
桃
母
母
母
母
桃
桃
桃
桃
続け
コメント
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めっちゃくちゃ衝撃的すぎて頭が追いつかない( ੭⌯᷄ω⌯᷅ )ウ,アタマガ
時差&初コメ失礼します! ほんとにめっちゃ感動して泣きました....(T^T) この物語のいろんな所で泣いてるんですけど今回の話がめっちゃ苦しさが溢れてて凄く心に刺さりました これからも頑張って下さい! 続き楽しみに待ってます!