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テストお疲れ様です! 過去を振り返って苦しそうだったけど最後報われて良かった..っ✨️ 2周年おめでとうございます~!✨️ 続きも楽しみにしてます!
テストお疲れ様でした☺️ 私も前テストを受けてほぼ返却されたんですけどボロボロでした👍 2周年おめでとうございます🎊久々に見られて嬉しいです! 本当に過去系など内容がすごいです✨続きも楽しみにしてます☺️✨ テストも終わった事ですし、ゆっくりなさってください👍✨
テスト終わったぁぁぁぁ!!! わぁぁぁぁぁッッッ!!!!(歓喜)
2024/06/28投稿
第50話
「存在低迷青年期」
桃
窓から朝日が差し込む。 俺は母さんが寝ていたはずのベッドに、しがみつくように突っ伏していた。
朝日で起きた訳では無い。 ずっと起きていた。この3日間。
お通夜して、お葬式して、火葬して、 やっと終わったと思ったら急に体の力が抜けてしまった。
桃
ずいぶん前に近所の人が亡くなってそのお葬式に行ったことがあったが、親族が走り回っていたのをよく覚えている。 「故人を偲ぶ暇も無いじゃないか」と、横目で見ていた。
しかし、このくらいの忙しさが丁度いいのかもしれない。
じっとしていたら心がおかしくなる。 ずっと考えていたら、耐えられないほどの悲しみに暮れることになっていた。
....あぁ、瞼が重い。
桃
ガチャッ
桃
起きたら寝た時と窓の外がまったく同じ景色だった。 すぐに起きた感覚では無い。もしかすると丸一日寝てたのかも。
桃
甘い甘い匂いがする。 まるで母さんが居る時の朝のような。
お父さん
父の手元を見る。
桃
桃
お父さん
お父さん
桃
お父さん
お父さん
部屋の埃も取り払われているようだった。空気が綺麗だ。 父さんがやったのだろうか。
窓から入ってくる風にカーテンが揺れている。 いつぶりだろう。この光景。
桃
陽の光が降り注ぐリビングに朝の爽やかな風が頬を撫でていって、その風につられて匂いが漂ってきて....
キッチンには匂いの正体を微笑みながら持っている大切な人が居て、 髪を結っていて、それが光に反射して輝いて、緑のエプロンが似合っていて。
こっちを向いて「おはよう」って、 優しい笑顔で言ってくれるんだ。
桃
言ってくれていたはずなんだ。
桃
お父さん
桃
桃
もう受け止めたと思ってたのに.....
幸せを失うのが、こんなに辛いなんて。
桃
パシュッ(弓矢
モンスター
マテック
桃
マテック
マテック
母の死から2年。俺は15歳になった。
師匠との喧嘩の頻度は相変わらずだけど、指摘ばかりされていたのがそうでも無くなった。 自分でも成長は十分感じている。
マテック
桃
桃
マテック
桃
卒業?
桃
桃
マテック
桃
桃
グラッ
桃
ドッシャーンッッ!!
桃
マテック
桃
マテック
マテック
桃
ついにこの脳筋修行から解放される時が来たんだ...!!
マテック
桃
マテック
桃
マテック
マテック
桃
....音頭めっちゃ適当だったなぁ〜。
桃
マテック
桃
桃
どうやら狩人には弟子の修行が終わって旅立つ時に師から贈り物をするという文化があるらしい。 サンタのじいさんから聞いた。
こんな師匠でも用意してくれてたり....
桃
マテック
桃
えーなに?最後くらいって感じ? テンション爆上がりなんですけど!!
何かなぁ....服とかかなぁ....!✨️
マテック
桃
めっちゃオシャレなやつとか? それとも珍しい龍とかのやつかな?
マテック
桃
桃
えーと....このベルトは......
桃
桃
マテック
桃
本音を言えばそりゃ不満だよっっ!! 超!!!不満!!!!
そこら辺で買えるやつ....なんなら俺今 自分の付けてるからな!? なんかもっと冒険者らしいものだと思うじゃん!!!
でも本気でこれをプレゼントとして渡してくれたのなら不満とか言うのも申し訳ないし....
マテック
本気じゃねぇな。悪意感じたわ。
桃
マテック
マテック
注文していいなら言ってよ....!!
桃
桃
マテック
桃
修行が終わったことばかりよろこんでいたけど、よく考えれば故郷ともお別れだな。
そりゃたまには帰ってくるだろうけど....ちょっと寂しいかも。
桃
遠いしほいほい帰れないし。 ...2年前父さんにはあんなこと言ったけど、自分もここをほっぽって出ていくんだな。
俺、なんのために頑張ってたんだっけ。
桃
王都に来たいから冒険者になったんだった......!!!
桃
賑やかな街並みも道を通っていく様々な人々も、向こうにそびえたつ王城も。 みんな俺の好奇心を刺激する。
就職して、給料もらって、 ほがらか王都ライフをおくる!!!
桃
桃
郵便局の玄関口でうなだれる。
1番いいなと思っていたパーティーは ダメだった。
王都に来てまだ2週間である。 そこまで焦る必要も無いのだが、なんせ何かしてないと落ち着かないもので、 あちらこちらへ走り回っているところだった。
気持ちを切り替えて2通目の手紙の封を切る。
桃
まぁダメ元で受けたところだし受かってないだろうな。 そもそも俺みたいな駆け出しがこんな 超大型パーティーに入れるわけ....
桃
なんだよこの即落ち二コマ。 なんで受かっちゃってんの俺!!
いやでも...これは良いスタートダッシュなのでは? いや、ダッシュというか俺もうここから安泰なのでは.....??
大型パーティーは自分から抜けない限り追い出されることはあまり無い。 つまり派手なことせずせっせとクエストに出ていたらこれから食いっぱぐれることはほぼ無いと.....
桃
神様が俺の見方をしてくれた。 今まで頑張ってきた俺を見ていてくれていたんだ。
これは師匠に自慢せねば。
桃
俺はさっき出たばかりの郵便局の戸をもう一度開き、軽快なステップを踏んで手紙を書きに向かった。
仲間
桃
仲間
仲間
桃
ジュスティスにはすぐに馴染んだ。 それはそれは楽しかった。
15歳とか同年代の人が案外居て、寮生活の影響もあって仲良くなれた。
小さい頃は同年代の子と全然遊ばず ずっと母にばかりくっついていた俺にとっては何もかもが新鮮で、それがたまらなく充実してるように感じていた。
仲間
桃
仲間
桃
自分でもいい性格では無いなと思うが、同期の中では少しばかり突出した技術を持っていたようで、心の中が満たされていくのを感じていた。
みんながもてはやしてくれるのを、 素直に受け取りすぎた。
桃
親への甘え方しか知らない子供だったせいで、今度は仲間への頼り方が分からなかった。 だから全部一人で背負い込んで、全部一人で片付ける。
よくなかったんだなぁ、これが。
クエストリーダー
桃
桃
クエストリーダー
桃
クエストリーダー
クエストリーダー
クエストリーダー
桃
つまりゴブリン10体を相手しろと....
桃
ゴブリンなんて楽勝だ。 あの群れは....少し大きい個体みたいだけど、まぁ10対なら頑張ればいけるだろう。
それにクエストリーダーに直々に任されたんだ。受ける他ない。
桃
師匠のプレゼントに少々ムカついたので、初任給とその次の給料で買った。
一応師匠のも付けてるけど....やっぱり青龍のベルトのほうが輝いてる気がする。
師匠の「成果の一つや二つ上げてから」という言葉も重なって、俺はとにかく出世したかった。
少し焦りすぎていたのかもしれない。 不安なことはちゃんと不安だと言うべきだった。
桃
モンスター
1匹....やっと1匹。 こんなに時間がかかるのは予想外だ。
周りのゴブリンはどんどん倒されていく。俺のところはずいぶん遅れているようだ。
桃
桃
モンスター
桃
桃
ビュォンッ(ナイフ
モンスター
こいつ知能が高い....? どうしよう。なかなか倒せない。
桃
一旦....5匹くらいを追い払って.....
桃
モンスター
桃
仲間
仲間
桃
仲間の悲鳴が聞こえて振り返る。
俺が払ったモンスターに飛びつかれて、背中から赤が滲んでいた。
桃
俺が周りを見ずに《大嵐》を使ったからあいつにゴブリンが向かってしまって、それで背中をやられたんだ。
まだ飛びつかれたまま.....あ、早く助けないと。
ドクンッ
大丈夫。大丈夫だから。 落ち着いてやればできるから。
ドクンッ
桃
ヒュォッ....(風
桃
モンスター
桃
真っ白な天井。 薬の匂い。
ここは....
シェイラ
桃
シェイラ
桃
この人、知ってる。 「シェイラ」さんだ。ジュスティス本部のムードメーカーで、剣士としての実力はパーティー指折りの中に入るほど。
どんな人にも優しくて、15歳の頃に拾った捨て子をずっと大切に育てているという話を聞いたことがある。
シェイラ
桃
桃
シェイラ
シェイラ
桃
俺の不注意で全治2ヶ月....? 仲間の2ヶ月を奪ってしまった?
桃
シェイラ
シェイラ
桃
久しぶりに誰かに甘えた。 甘えたというか、ただの自分の都合に 付き合ってもらった。
申し訳なさと同時に、縮まった心が少しずつ戻っていくのを感じていた。
桃
シェイラ
シェイラ
桃
シェイラ
シェイラ
桃
シェイラ
そういえば「人手不足だ」とか言って焦っていた幹部の人を少しだけ手伝った事がある気がする。
計算と文章を綴るのは小さい頃から本で学んできたので俺からしたら楽勝だったのだが、引くほど感謝された。
シェイラ
シェイラ
桃
シェイラ
シェイラ
似たもの同士....
桃
桃
シェイラ
驚いた顔をされる。 いらないことを言ってしまっただろうか。いや、絶対いらなかった。
「あなたみたいなただの善意」なんて、失礼極まりない。 やっちゃったかな。怒ってるかも。
しかし、「出世できるかも」と思ってやったのは本当のことだ。 これが嘘じゃないなんて、俺はどれだけひねくれているのだろう。
桃
シェイラ
桃
シェイラ
桃
係長たち
係長たち
桃
桃
係長たち
係長たち
係長たち
桃
係長たち
係長たち
係長たち
桃
係長たち
17歳の終わり頃に、リーダーから直接 会計係長の座に任命された。
大、大、大出世である。 17歳なんて若すぎるし、前会計係長の助手を始めて2年弱しか経っていない。 成人すらしていないのに。
これは憶測だが、前会計係長が進めていた冒険者育成計画が上からしたら邪魔だったのだろう。 そばで見ていたから分かる。とにかく人数を増やす経営方針に反していた。
きっと俺は都合のいい操縦可能な子どもだと思われているのだろう。 会計係長の仕事を思い通りに動かすという魂胆なのは見え見えだ。
なんだか最近上手く笑えないし....揚げ足とられないようにと思い始めたら会話も楽しくなくなってきた。 冒険者たちからの俺へのイメージはあまりよくないのも知っている。
自分から望んだはずだけど、なかなか上手くいかない。 母さんの言ってた「やるべき事」って、結局なんなんだろう。
桃
係長会議に混ざる20にも満たない、なんの力も持たないガキ。 そんなものにはなりたくなかった。
けど、理想と現実は違う。
自分のできる最大で「正義」を振りかざして出来ることを精一杯やっているつもりだけど、それでもやり切れない。
都合よく利用されるときは圧と多数決で口を塞がれてしまう。
桃
これは"正義"ではなく、ただの"自分達の都合"でしかない。
それでもやめたら食っていけないし、 もっと悪化しないように見張りながらできる範囲で最善を尽くすことはできる。
うん....多分これが俺のやるべき事。
桃
前にナイフ持ったのいつだっけ?
桃
シェイラさんが亡くなった。
クエスト中に魔族にやられたらしい。 十数人というかなりの人数だったらしいが、なぜやられたのだろう。
考え始めたらキリが無いな。 あまり深掘りしないほうが何の懸念も無くシェイラさんをおくることができる。
桃
赤
さっきまで棺の前で泣きじゃくっていた少年が、心ここに在らずという顔で横を通っていった。
例の拾った子だろう。 1度くらい喋ったことがある気がする。彼、今13歳だったかな。
....俺と同じか。
桃
赤
赤
桃
桃
赤
話しかけない方がよかったかな。 つい、5年前の自分と重なって声をかけてしまった。
この少年も相当忙しいだろう。 クエストから帰ってきてすぐのはず。 心情的にも肉体的にもだいぶやられていると思う。
赤
赤
桃
桃
前会計係長に俺を推薦してくれた後もなにかと気にかけてくれて、時折2人で話をしたりしていた。
忙しいはずなのに俺にも時間を割いてくれて、本当に優しい人だったな。
赤
赤
あまりにも力無く笑うのが、どうしてもいたたまれない気持ちになった。 俺はずっと泣いていたのに。彼は彼なりに自分を律して振舞っているのだ。
桃
赤
桃
赤
桃
桃
赤
赤
桃
できることって本当になにもない。 これは彼自身の心の問題だし。
ただ、休まないとそれこそ少年が限界になるだろうから、これくらいは年上としてしてあげないと。
俺は同年代の相談出来る相手なんて居なかったし、全部一人で抱え込んだ。 これが結構辛いのだ。
この子はそうでないといいけど.....
桃
やっぱりそろそろ防具の一新をした方がいいだろうな。エントランス見てるだけでも本当にみんなボロボロだ。
でも上が許してくれる....? あの人たちエントランスなんて見ずに自分たちの執務室にこもって紅茶飲んでるからな。
「最近、会計係長が何もしないでエントランスでぼーっとしてる」とかいう噂が流れても困る。 俺も執務室に居た方がいいのだろうか。
桃
この5年間で故郷に帰ったのは最初の1年だけ。1度しか帰ってない。 父とはたま〜に手紙を交換するけど、向こうも忙しいのか半年に1回あるかないかぐらいの頻度だ。
このまま何もせずおじさんになるまでここで会計係長の座に居座るのだろうか。
前までは偶然の出世に必死でしがみついて頑張っていたのに、最近はそんな執着も無くなってきた。
どれだけ案を通そうとしても却下されるし、かと言って派手なことはできない。
桃
リーダーの秘書
桃
リーダーの秘書
桃
リーダーの秘書
リーダーの秘書
桃
桃
リーダーの秘書
リーダーから手紙なんて何事だろう。 面倒事じゃないといいけど...
桃
シューッ(ナイフであける
中身は意外と短かった。 上から順に目を通す。
桃
長い長い決まり文句の末に、突き放すように綴られた一言。
思わず声を失った。
5年勤めたはずのパーティーに、こんなにもあっさりと解雇されてしまった。
桃
赤
赤
桃
赤
このパーティーを正式に出ていくまでの猶予は1週間だった。
部屋の片付けと、執務室の整理と、次の家の準備。その他諸々。 1週間というのは短いものだった。
そんな中、俺は2年前に喋ったきりの何も知らない少年を呼び出していた。
桃
しょうもない腹癒せだった。 言ってること思ってること、全て反対。
正直今から出ていくパーティーがどうなろうと知ったこっちゃないし。 「頑張ってる冒険者に」って、なんでこんなに善人ぶってんだろ。
桃
今まで必死にやりくりしてきたお金を、パーティーが崩れるほどじゃ無いと言えど腹癒せのために使ってしまうなんて。
これからのために残しておいたほうが良かっただろうか。 次の会計係長が冒険者に割り振るお金が少しでも増える可能性があった?
あぁ、もやもやする。 なにもかも中途半端すぎた。
故郷に帰らず、鍛えてきた弓も持たず、今ある地位を必死に守って、自尊心が傷つかないように塞ぎ込んで。 解雇されたら腹癒せだなんて。
桃
もっと従順な係長で居るべきだった? 前会計係長が簡単に解雇された時点で察するべきだった? 事務の仕事を断ればよかった? そもそも故郷を出なければよかった?
弓とナイフなんか....鍛えなければ......
桃
本当に、なんのために生きてるんだろ。
パシュッ(弓
モンスター
桃
やっと調子が戻ってきた.... 筋トレはしてたから体力は辛うじて失ってなかったけど、やはり腕はだいぶ落ちている。
結論から言うと、1人はだいぶ気楽でよかった。 自分の都合でクエストを選べるし、トラウマになりつつあった周りを気にしなくていいというのにほっとした。
ここ3ヶ月みっちりクエスト漬けの日々を送ったおかげで、会計係長時代に上げられなかった分のレベルが急に上がっていった。今ではC+だ。
桃
穏やかな生活。 その反面、なんの刺激も無い。
「なにのために生きているのか」という疑問は深まるばかりだった。
カランカランッ♪
桃
今回のクエスト先は遠かったから帰るのがしんどかったな。 1人だから近くに泊まってもよかったけど....早く報告したほうが依頼主的には嬉しいだろうし。
それにしてもこの時間のギルドは賑やかで人が多い。
桃
エリーさん
桃
桃
エリーさん
桃
エリーさん
エリーさん
大抵の冒険者は報酬重視だが、俺はとにかく量をこなしたいので手当り次第クエストを受けている。
たしかに報酬が多ければ多いほど得なのだろうが、今のクエストスタイルで誰かが助かっているのならそれでいい。
エリーさん
桃
桃
エリーさん
桃
エリーさん
エリーさん
桃
元会計係長なんだから当たり前だ。 でもなんで....?言ったことないよね? もしかして正体バレた?
桃
桃
エリーさん
エリーさん
桃
3人組の男性が机を囲んでなにか書き物をしている。 申請の紙でも書いているのだろうか。
エリーさん
エリーさん
桃
1時間....?えぇ.....?? パーティー組んで大丈夫なの?しっかりした人1人は要るんじゃない?
ど、どれだけ不器用の集まりなんだ....
桃
エリーさん
桃
黄
水
紫
桃
よくよく見たら知ってる人居るじゃん。
久しぶりに顔見たなぁ....変わらず元気そうでよかった。 向こうも王都に来たんだな。
桃
桃
紫
水
黄
紫
嘘だろこいつ。 ちっちゃい頃めっちゃ遊んだけど? 勇者ごっこで丸一日潰した幼き日の思い出を忘れたか??
いや、落ち着けないこ。 ここは笑顔をくずさず.....
桃
紫
紫
水
白魔術師の青年が疑いの目で初兎ちゃんのことを見る。
桃
水
桃
紫
紫
ガシィッ(頬
桃
あーあ....お兄さんキャラ消失〜......
紫
黄
水
桃
猛烈に勧誘されてる....
もう一生パーティーになんて入るものかと思っていた。 群れるのが苦手になっていたはずだし、 一人で大丈夫なつもりだった。
桃
桃
いつの間にか自分の名前を書いていた。 多分勧誘されただけが理由じゃない。
ずっと探していた。 「自分のやるべき事」を。
群れるのは苦手だったはずなのに、同年代の子に囲まれて満面の笑みを浮かべている初兎ちゃんが羨ましく思えた。
長年の捜し物が見つかる気がした。
桃
紫
この時の第六感ほど俺の今までの人生の中で正しいものは無かった。
もっと従順な係長で居るべきだった? 前会計係長が簡単に解雇された時点で察するべきだった? 事務の仕事を断ればよかった? そもそも故郷を出なければよかった?
弓とナイフなんて鍛えなきゃよかった?
いや、違う。
この仲間に出会うために、俺の今までのすべてが必要だったんだ。
桃
熱い。熱い以外の感覚が無い。 目が霞んで、息も苦しい。
なぜ初兎ちゃんは飛び込んだのだろう。 彼は怖くなかったのか。恐怖心というものが欠けているのだろうか。
いや、そんなの分かってる。
彼は俺とは違うから。ネガティブで、意気地無しで、心が汚れている俺とは正反対なのは重々承知している。
自問自答したって意味が無い。 早く見つけ出さないと死んでしまう。
桃
部屋を駆け回ってもどこにも居ない。 アニキが行った方に居たらいいけど、もし居なかったら.....
あぁ、裏口が見える。 約束したから戻りたくても一旦出ないといけない。
ガコンッッ
桃
桃
思いっきり外の空気を吸い込む。 火の近くなので少し咳き込んでしまったが、中よりは全然マシだった。
こんな苦しさいつぶりだろう。 目立つ怪我は辛うじてしていないが、目の痛みと手にできた火傷がこれ以上動くのを阻んでくる。
桃
煙を吸いすぎただろうか。 いや、まだ思考を止めてはいけない。
アニキが居ない。
桃
もしかして初兎ちゃんと子供はもう見つけてて、連れ出すのに手間取ってる?
それなら早く助けに....
でもそれって安全?
待ってた方がいいだろうか。 俺が決めたことだし....俺が居ないと思ってアニキがまた戻ったら?
桃
正しい判断ができない。 ぼーっとして論理的に解明できない。
感情に頼るのならば....
桃
助けにいくしかない。
桃
桃
さっき探したのと別の部分を探しながら駆け抜ける。 向こうよりも火の回りが早い。
まるで、文字通りの「地獄」だった。
どこにも居ない。 いや、居ないはず無いのに、果てしなく独りぼっちに感じてくる。
桃
また、やるべき事をできないのか。
ずっとこうだ。
自分はできると思い込んでるだけで、本当はなんにもできないただの無力な人間だってことに気づけていない。 まるで子供みたい。
俺は仲間も助けられないの?
桃
桃
ガラララッ(襖
襖を開けると火の粉が飛んできた。 腕で防ぐものの、首やら耳やらに当たってしまい「ジュッ」と嫌な音が鳴る。
空気が入ったことによる火の勢いが治まったのを確認してから中を見渡した。
桃
桃
少年を抱き抱えるようにして壁にぐったりと持たれている初兎ちゃんと、 猫を上着の内側で守りながら床に倒れて意識朦朧としているアニキが見えた。
駆け寄ると、アニキは辛うじて俺の声が聞こえてるっぽい。 初兎ちゃんと少年は気を失っていた。
桃
黄
桃
黄
桃
黄
目の感じから前もよく見えていないだろうに、苦しそうに体を起こす。
黄
桃
あぁ、こんな俺でもアニキは信頼してくれているんだ。
俺を頼ってくれるんだ。
桃
桃
初兎ちゃんをおんぶし、少年を前に抱える。 元来た道を走った。
桃
裏口が見えた。
桃
2人を抱えたままなのはかなりキツい。足が震えそうなのを抑えて、開いたままの裏口をくぐる。
桃
ガタッッッ
桃
上から何かが落ちる音がした。 同時に熱風を感じる。
嫌な予感から上を向く。
桃
燃えて切り離された屋根の骨組みが、 炎を帯びながらこちらへ迫っていた。
桃
桃
死にたくないけど、怖いけど、
桃
ガッシャーンッッ
桃
痛い....けど、熱くない......?
屋根の骨組みは焦げているだけで燃えていなかった。しかし、右足に落ちてきたので足はもうダメそうだ。
いや、信じてくれたアニキを置いておくわけにはいかない。 足がやられていようがなんだろうがもう一度行かないと。
桃
家の火が....消えてる....
さっきまで地獄のように燃え上がっていたのに、怖いくらいに静まっていた。
なぜかは分からないが、助かった。 きっとアニキの近くの火も消えているだろう。
きっとこのまま待っていれば、ほとけっちあたりが助けに来てくれるだろう。 きっと大丈夫。
桃
〈 ないちゃーん!!アニキー!!
〈 しょーーちゃーん!!
桃
半分気を失っていたみたいだ。 遠くのほとけっちの声でハッとする。
桃
カラッカラの喉で掠れた返事をする。 「ないちゃん!!」というほとけっちの叫び声が聞こえて、庭の方からその姿が見えた。
水
水
力が抜けたようにヘナヘナと座り込むほとけっち。 顔は今にも泣き出しそうだった。
まろとりうらの姿は無いが、街の成人男性たちも一緒に探しに来てくれたようで、数人がわらわらやってきた。
水
水
街の人
1人が向こうへ走っていく。
桃
桃
桃
水
水
水
また悲鳴のような叫び声。 彼、オーバーリアクションだよなぁ。 でもいつも通りのそれに安心したりする俺も、だいぶ不安だったのかもしれない。
桃
桃
水
「僕はないちゃんに着くからね」と念を押され、テキパキ指示を出し始めた。
2人がアニキを探しに行って、少年と初兎ちゃんは庭の向こうへ運ばれていった。
水
圧迫されていた足が解放され、痛みが襲ってくる。 思ったよりも血まみれだった。 これは悲鳴も上げたくなるだろう。
水
水
桃
水
「冷静すぎない?」と笑われた。 やはりまろ達が火をなんとかしたのだ。 水系の上級魔法でも使わないと消せないと思ったあの業火をどう消したのだろう。
水
桃
水
水
そこまで言うの? これでも火の中に飛び込んで頑張ったんだけどな。もうちょっとくらい褒めてくれてもいいじゃん。
水
桃
水
水
桃
水
桃
やるべき事はできていたのだろうか。
いや、笑顔だからできてたんだろうな。
桃
幸せを手に入れるのが怖かった。 最高ともどん底とも言えないような半生だったから、落ちるのが怖くてただそこに居た。
運命の被害妄想を膨らませていたけど、そんな動かない自分がダメだったのだ。
弓とナイフを鍛えてよかった。 ジュスティスに入ってよかった。 初兎ちゃんにまた出会えてよかった。
ないことして生まれてよかった。 産んでもらえてよかった。
すべて、今の幸せのためにあったんだ。
桃
続け
ちょっと失礼します!!soraです! すんごいことに気づきました!!
テラー始めて2年経ってる
6月16日をもって2周年のsoraに突入 いたしました。時の流れは早いですね....
沢山の方に見てもらえているおかげで 2年も続けることができました! 感謝です!!✨️ 来年度は受験生なのでさらに投稿頻度が落ちるか一旦活動停止するかになってしまう可能性はあるけれど.... 今年度中はまだ続けられそうなので 頑張ります!よろしくお願いします!
なによりこの連載終わらせないとね.... なるべく早く次出しますね!
次回お楽しみに〜!!