TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

あの飲み会から数日__

蘇枋は同居していた部屋を離れようと 着々と準備を進めていた。 飲み会後、蘇枋は ホテルに泊まったらしい。 ダンボールに積み替えられた 自身の衣類等を 持ちながらそう語っていた。

引っ越す先は まだ収入が安定していないからと、 安いアパートを選んだらしい。 この部屋からどんどん蘇枋の 面影が消えてゆく感覚に襲われ、 この数年間の恋人としての思い出は、 全て俺の夢なんじゃないかとすら 錯覚した。

蘇枋

桜君、ありがとう
手伝ってくれて……

いや、そんくらい構わねぇけどよ

本当に引っ越すのかよ

俺は別に……

「このままでもいい。」 引っ越すのは金も掛かるだろうし、 俺の勝手な我儘で別れたんだ。 そこまでさせられない。 そう思った。

蘇枋

大丈夫だよ桜君

蘇枋

もう引越し先は決まってるし、
今更辞めまーす!
なんて言えないでしょ?

そうだけどよ……

蘇枋

これは俺のケジメだから、
桜君は心配しなくてもいいんだよ

わかった。

別れた後も、 こうして普通に話せているのだから シェアハウスみたいな感じで 一緒に住んでいても、 問題は無いと思う。 なんて色々自分の中で理由を 並べるが、 結局まだコイツと一緒に 居たいみたいだ。

ダンボールが積み重なって行く部屋を もう1度しっかり見て、 蘇枋は本当にいなくなるのだと 痛感した。

蘇枋なんか飲むか?

俺買ってくるけど

蘇枋

ん〜
じゃあ桜君が入れたお茶で

何巫山戯た事言ってんだ

俺茶なんて入れたことねぇだろ

蘇枋

冗談だよ

蘇枋

俺は何も要らないよ

おっけー水な

蘇枋

俺、水って言ったっけ

言った言ったー

適当に返しながら 玄関の扉を開けた。 この会話のテンポが、 最早懐かしく感じた。 日の光がジリジリと 照らし、 1つだけの人影が伸びていた。

恋人の間は一緒に買いに行ってたな なんて1人悶々と考えた。 暑いのに汗1つかかない 余裕の笑みの男と 汗だくで歩いていた俺 影は2つに伸びており、 蘇枋の冗談で顔を 真っ赤にしたのも思い出した。

今思い出しても、 自分の頭が オーバーヒートしそうになる。 自分の頬を思いっきり叩き、 忘れよう と1歩1歩近くのコンビニへと 歩を進めた。

日が落ちた帰り道 恋人になって浅い俺たちは 影を2つ並べ、 一緒に歩いていた。

日が落ちているにも関わらず、 辺りは暑さで包まれていた。 そんな中、 タッセルのピアスをつけ、 深い赤色の髪を持つコイツは、 俺と違い汗1つかいてなかった。

蘇枋

今日は思ったよりも暑いね〜

汗1つかいてないお前に
言われたくねぇよ

蘇枋

俺、汗はかかない主義だからね

水道かよ

蘇枋

どういう意味かな?

そんなんまの意味だよ

汗を自分で止めている。 そう捉えた俺は、 水道みたいだと表現した。

蘇枋は少し俺に距離を開けながら、 後ろを着いてきていた。 地面に広がる影も、 どこか、悲しそうに見えた。

恋人になって日は浅いとは言え、 いつもと同じ距離感で、 本当にこれでいいのだろうかと そう思った。

蘇枋

ねぇ、桜君。

蘇枋

ちょっといいかな、

あ?いいけど
急になんだよ

急に何を言い出したかと思えば、 蘇枋は地面を見ながら 自分の居る位置を調節していた。 何をしてるんだと思いながらも 早くも遅くもないペースで歩き続けた。

蘇枋が俺の斜め前に出て、 急にこちらを振り返った。 ビックリして、 反動的に俺は固まった。

蘇枋

ねぇ桜君

俺の名前を呼びながら蘇枋は、 俺たちが歩くアスファルトを指さした。 そこを目で追うと、 指で刺されていたのは影だった。 これがなんだと思った瞬間 蘇枋の陶器の様に白く 整った顔が、 俺の顔へと近ずいた。

蘇枋の声が、 耳元で囁かれ 顔が暑くなるのを感じた。

蘇枋

この影、
よく見てご覧?

蘇枋

キスしてるみたいだよ

何時もの巫山戯た声じゃなくて、 低く、でもしっかりと俺に聞こえる声で 蘇枋は話しかけてきた。 俺自身は、 手をぎゅっと握り込み、 プルプルと震えていた。

その後動けなくなった俺を、 蘇枋は手を繋いで家まで送ってくれた。 手を繋いでいる間、蘇枋は 俺の隣を歩いてくれていた。 この時、蘇枋との距離が、 ダチから恋人になった気がした。

タバコの吸殻かき集め____

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

1,406

コメント

5

ユーザー

フォロー失礼します!!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚