雪城葵
(まずい、このままじゃあ雪翔お兄ちゃんが殺される。まさか片瀬さんが散弾銃を持ってるなんて。早く行かないと。)

東雲薫
ちょっと待ってよ葵。

望月雪翔
隠すなら天井裏か床下か壁の中だけど、壁の音は問題なかったし、天井裏にもなかったな。ってことはやっぱり床下だよね…って僕としたことが、クローゼットの中を見るの忘れてた。床板をやる前にクローゼット見ておかないとな。

雪翔が独り言を呟きながらクローゼットを開けようとした時、部屋の扉が勢いよく開かれ、葵が雪翔を連れ部屋を出る
雪城葵
雪翔お兄ちゃん!

望月雪翔
葵?何かあったの?

雪城葵
良かったまだ無事だった。ハァハァ、すぐにこっちに来て。

望月雪翔
え!?どういうこと?

東雲薫
葵!!

望月雪翔
薫まで来た。

東雲薫
葵、一体どうしちゃったのよ。突然走り出すなんて。さっき無理はしちゃダメって言ったばかりなのに。

雪城葵
2人共、散弾銃に勝てる自信ある?

望月雪翔
え?

東雲薫
ん?

葵のとんでもない一言に薫と雪翔は驚きと疑問により顔を見合わせ、首を傾けた。それから薫が葵に説明を求めた
東雲薫
ちょっと待って、何故散弾銃が出てきてしかも勝たなくてはいけないのかしら。突然のことすぎて頭が追いついてきてないんだけど、私と雪翔にわかるように説明して欲しいわ。

雪城葵
えっと、片瀬さんは死んでいなかった。しかもこの家の中にいる。それでさっき雪翔お兄ちゃんが開けようとしてたクローゼットに隠れてる可能性が高いの。これは私の予測なんだけど、クローゼットの中に隠れて、クローゼットを開けた人間を持っている散弾銃で殺るつもりなんだと思う。キッチンにクレー射撃仲間と撮ったと思われる写真があったのと、キッチンには散弾銃はなかったし、もしもこの部屋に散弾銃があったら雪翔お兄ちゃんが気づいて私たちに言うはず。だけど見つかっていないということは片瀬さんが持っていると考える方が自然でしょ。それに多分片瀬さんも私たちがいることには気づいてるから…

雪城葵
(これで大丈夫なハズ。2人には悪いけど、未来を見ることができるけど自分の意志関係なく発動したりしなかったりと発動条件もタイミングも何もかもよく分からない能力のことは言わない方がいい。それにしても残留思念を使った後に未来視が発動したせいで頭痛と眩暈がしてきた。だけど片瀬さんが散弾銃を持っているこの状況でこの家を出るのは危険だし、そもそも目の前で犯人の片瀬さんを見逃すのはかなりマズイ。ここで片瀬さんを捕まえるまでは倒れる訳にはいかない。いつも通りに振る舞わなくちゃ。)

望月雪翔
だからクローゼットから僕を遠ざけたのか。確かに散弾銃持ってる相手に生身で応戦は無理だね。さっきはありがとう葵。やっぱり葵はすごいね。

東雲薫
つまりは、私達が来て慌てた片瀬は散弾銃を持ってクローゼットに隠れ、クローゼットを開けた雪翔を射殺し、逃げようとしているってところね。私と葵に見つからないように逃げるか、私と葵も射殺してから逃げるかは分からないってことで合ってるかしら。

雪城葵
そうだと思う。

望月雪翔
でも、ここには散弾銃の弾を防げそうなものは無いしね。なにか対抗出来るものさえあれば僕が何とかできるんだけどね。何もなしに散弾銃に勝てる程強い人間なんて存在しないよね?少なくとも僕の知り合いにはいないなぁ〜。

東雲薫
生身でもワンチャンいけそうな人ならいるわ。むしろ勝てる可能性もあるわ。

望月雪翔
え?誰?僕も知ってる人?

東雲薫
えぇとってもよく知ってる人よ。だって望月雪翔、貴方なのだから。

望月雪翔
な、なな、なんで僕?人より少し運動神経はいいけど散弾銃の弾を避けて散弾銃を相手から奪うなんて到底できそうにないんだけど。薫は僕をなんだと思ってるんだい?

雪城葵
確かに雪翔お兄ちゃんなら不意打ちじゃなければできそうだね。反射神経もいいし、力も強いもんね。

望月雪翔
葵まで何言ってるんだい?普通に無理だよ。大体人間が拳銃の弾を避けるなんてどう考えても無理があるよ。僕死んじゃうって。

雪城葵
散弾銃の全長は79.9cmくらいでクローゼットは奥行きが大体広くて60cmだから構えてから撃つまでに少しのタイムロスがあるから…

東雲薫
いやー、雪翔ならいけるわよ…むしろ雪翔しか無理ね。最悪、撃たれる前に銃口を曲げればいいのよ。ね!葵。

望月雪翔
いやいやいや、無理だよ!!僕は人間だからね。そんなとんでも理論展開しないで!!葵も何普通にクローゼット開けてから発砲されるまでの時間計算しようとしてるの!!

雪城葵
雪翔お兄ちゃんが無理だって言ってたから私がやろうかなって。散弾銃はクローゼットの奥行よりも大きいから構えてから撃つまでに少しの時間があるからそこで犯人から散弾銃を奪うなり蹴り飛ばすなりできないかなって思ったんだけど…

望月雪翔
!?…僕がやる。葵にそんな無茶させられない。

雪城葵
でも、それだと雪翔お兄ちゃんが

望月雪翔
成功すればいいけど、失敗したら葵が死ぬかもしれないんだよ。それは嫌だ。それに僕がやれば怪我人を出さずに確保出来るかもしれないんだろう?なら僕がやってやる。

東雲薫
それでこそ雪翔ね。頼むわよ。

望月雪翔
わかってるよ。でもご褒美が欲しいなぁ。だって失敗する可能性もあるし、何よりすっごく危険なことをするのに何もなしって言うのはねぇ。そうだなぁ、僕のお願いを聞いてくれるっていうのはどうかな?

東雲薫
変な事言わなければそれでいいわよ。葵はどう?

雪城葵
私ができることなら。雪翔お兄ちゃん頑張ってね。

望月雪翔
じゃあ殺ってくる。

東雲薫
何故かしら、凄く物騒な単語が聞こえた気がするわ。

片瀬霧矢
!?

望月雪翔
貴方が片瀬さんですね?

片瀬霧矢
死にたくなければ…ヒィ

望月雪翔
これで撃たれる心配はないね。さあ来てもらいますよ。

片瀬霧矢
うそ…だろ。さすがに分が悪すぎる。俺がやりました。あの女をスーツケースに詰めて首に氷で作ったナイフを刺して駅に置きました。俺が犯人なので殺さないでくださいぃ〜。

望月雪翔
潔いいね。警察が来るまで拘束はさせてもらうけど、殺さないからそんな怯えるなよ。なんか僕が悪者みたいじゃないか。拘束以外は危害を加えないからもう少し落ち着いてくれ。

片瀬霧矢
あれを見て怯えるなって方が無理あるだろ!!散弾銃を手で折り曲げるなんて普通は出来るわけねえんだよ!!初めて見たわ。そんな怪力野郎を前に冷静で居れるわけねえよ。はぁ〜なんか言いたいこと言ったら落ち着いてきた。しょうがねえ、アンタには勝てねえのは分かりきってるし、ここは大人しく捕まりますよー…なんてな、捕まるくらいならあの人に貰ったコレを飲んでやる。

雪城葵
ダメ!!

望月雪翔
やめろ!!

片瀬の言葉に警戒をといたその時片瀬は小瓶を開け、中身を飲んだ。葵と雪翔が止めようとしたが、時すでに遅く片瀬は小瓶の中身を飲み干していた。
片瀬霧矢
ざまぁみろ…ウッゴボッびちゃびちゃ

望月雪翔
クソッ、やられた。ごめんね葵、僕がもっと気をつけていたら…

雪城葵
そんなことないよ。私がもっとちゃんとしていたらこんなことにはならなかったんだしね。今回のは私の考えが足りなかったんだよ。スワロウテイルの方には謝らないとだね。もっと慎重に物事を進めるべきだった。

東雲薫
2人のせいじゃないわよ。片瀬が毒を持ってるなんて普通思わないわよ。それより葵、右目が薄紫色になってるけど、何か読み取ったの?

望月雪翔
でも葵は何も触ってないはずだよ。しかも手袋つけてるから使えないはずだよね?

雪城葵
…え?(あぁそっか。残留思念読み取ってその後未来見たから異能が暴走してるんだ。頭痛と眩暈を我慢してたから感覚が麻痺し始めてる。)

東雲薫
葵、大丈夫?今日はかなり無茶させちゃったけど…

雪城葵
あ、ごめん何か言った?聞いてなかった。(薫お姉ちゃんが何か言ってるけど聞き取れない。)

東雲薫
葵、両目が薄紫色になってるわ。とにかくどこかに座りましょう。

雪城葵
…ッイ(薫お姉ちゃんが何か言ってるけど聞き取れない。頭痛と眩暈が酷くなってきたし、何も触ってないのに見えてるこの記憶は誰のなの。頭が割れそう。)

望月雪翔
葵?

雪城葵
ヒュッ ハァハァ…ごめん2人共、異能がハァヒュッ暴ヒィハッ走してる…ドサッ

望月雪翔
あおい、あおい、しっかりして。

東雲薫
雪翔、キッチンから私の鞄持ってきて

望月雪翔
わ、わかった。

葵が倒れ、薫が雪翔に鞄を持ってくるように指示を出す。
東雲薫
葵、仰向けにして顔は横に向けるために動かすね。

雪城葵
ヒュッハァハッハッコホッッヴハッヒュゲホゴホッハッフゥンッゴボッハァッヒュッヒューハッハッゲホッ

葵は荒い呼吸を繰り返し、吐血した。薫が顔の向きを変えたことによって窒息は免れたが、目は固く閉ざされている
東雲薫
良かった間に合った。けど、ここ事件現場なんだよね。どうしよう葵の血が床とかに着いちゃった。事件現場の物は勝手に動かせないし、汚しちゃったのはまずいわよね……まぁ五十嵐警部ならわかってくれるハズよね。葵のことを気にかけてくれてるし大丈夫、ちゃんと説明すればいいことだし。

望月雪翔
薫、持ってきたよ。

東雲薫
ありがとう、それじゃあ雪翔は警察に連絡して事情説明して。

望月雪翔
わかった。葵は大丈夫?

東雲薫
あまりいいとは言えないけど、応急処置だけここでするわ。それと、あの人にも連絡しておいて。それでスワロウテイルの事務所に来てもらうように言ってくれる。

望月雪翔
了解、じゃあ連絡してくるよ。

東雲薫
お願い。

東雲薫
応急処置と言ってもそんなにできることはないのよね…あ!誠一に連絡するの忘れてた。今からでも遅くは…ないよね。

薫は、誠一にスパロウメモリーが掴んだ情報を箇条書きにし送った。送信した直後に雪翔が部屋に戻ってきて、話していると電話が鳴り、薫は通話ボタンを押した。
望月雪翔
連絡してきたよ。

東雲薫
ありがとう。それで今からスワロウテイルの事務所に行くわよ……電話だわ。

東雲薫
もしもし、何か不明点でもあった?

踏分誠一
いや、内容は分かりやすかったから平気なんやけど、恵美が薫に褒めて欲しいから早く来てって言っとってな。

東雲薫
そういう事ね。まどかは変わらないわね。あ!悪いんだけど少し頼みたいことがあるの。まどかと神柴さんも呼んでくれない。

踏分誠一
ええで、ちょっとまっとり…恵美、健三、薫姉ちゃんが頼みたいことあるんやって。

恵美まどか
もしもし、薫、頼みたいことって何?

東雲薫
葵が倒れたからソファーでもいいから寝かせられる場所貸してくれる?それと医者を呼んだから先に来ちゃったら待っててくれるように言って欲しいのよ。スワロウテイルの方がうちの事務所より近いし、何よりさっきの箇条書きのメールの細かいところとかも情報共有したいのよ。ダメかしら。

恵美まどか
ハァー、そっちの名探偵は随分貧弱なんだね。まぁいいよ。僕も薫の言っていることには賛成だし、僕のベッドを貸してあげるよ。その方がちゃんと休めるだろ。

神柴健三
まどかさんがそう仰るなら私は構いません。

踏分誠一
なぁ薫、雪城さんは大丈夫なんか?何か用意しておいた方がいいもんとかあるか?

東雲薫
神柴さん、まどか、ありがとう。誠一、汚れてもいいタオルとぬるま湯を用意しておいてもらえると助かるわ。

踏分誠一
おっしゃ任しとき!気をつけて事務所に来てな。

恵美まどか
ねぇ、医者ってどんな人なの?

東雲薫
ごめんまどか。言い忘れてたわね。見た目は20代でも通りそうなちょっと妖しげな男で東と葵が呼んでたわ。多分偽名だとは思うんだけど、何しろ謎が多いのよね。あの医者も葵も。

恵美まどか
わかった。

東雲薫
それじゃあ切るわね。

踏分誠一
おう、準備して待っとるで。

望月雪翔
薫、連絡はしてきたよ。警察から伝言で申し訳ないのですが、到着するまでそこにいてくださいとの事だよ。あの人はスワロウテイルの事務所なんて行ったことないから少し時間がかかるって。

東雲薫
そう、わかったわ。ありがとう雪翔。

望月雪翔
どういたしまして。それにしても葵は能力が暴走したって言ってたけど、何かあったのかな?

東雲薫
分からないわ。でも今までは制御出来ていたし、それに半年前のあの事件の時以来両目が薄紫色になるなんてなかったのに。それに残留思念を読み取る時は確か左目だったはずよ。

望月雪翔
確かに左目だったと僕も思うけど、今回は右目が薄紫色になってたからもしかしたら葵の異能に何かあるんじゃないかな。まぁこればっかりは本人に聞いてみないとわかんないけどね。

2人が話していると警察が到着し、五十嵐警部に何があったのか説明した。主に雪翔が。説明が終わると今野がやってきた。
五十嵐 警部
東雲さん、〇〇駅の事件の容疑者が自供して自殺したって本当か?

望月雪翔
ご無沙汰してます。本当です。

五十嵐 警部
望月…お前じゃない。私は東雲さんに聞いているんだ。

東雲薫
確かに自供しているのは聞きましたし、目の前で服毒自殺されましたので本当です。毒の種類は分かりませんが、捕まるくらいならと言って飲んでました。

五十嵐 警部
東雲さんが言うなら信用できる。

望月雪翔
んなっ僕の信用無さすぎじゃないですか?酷いです。警察時代あんなに警部のために色々したのに僕のことを捨てるんですか?そんなのあんまりですよ。

五十嵐 警部
望月を信用してないんじゃない。東雲さんに確認していただけだ。目撃者に話を聞くのは基本だろう。なるべく多い方が何か分かることもあるだろうしな。それと警察と言っても望月は公安だったろ。あまり接点なかったはずだが…

望月雪翔
そんな、警部の部下に倉田架純っていたでしょう。その子は僕の同期で事件の事で色々助言してあげていたのに。忘れるなんて酷い。

五十嵐 警部
お前が、倉田に助言してたのか。確かにいつも欲しい情報を提示したり、犯人や凶器見つけたりと優秀だと思ってたが、まさか倉田に情報提供した奴が望月だとは思わなかった。それと誤解を招くような言い方をやめろ。なんでこんなのが公安にいたんだか。

望月雪翔
そんなの決まってるじゃないですか。僕が優秀だったからですよ。

五十嵐 警部
もうやだこの元公安。

東雲薫
すみません。うちの雪翔がご迷惑をおかけして。それともう一点謝らないといけないことがありまして……

五十嵐 警部
あぁ、葵ちゃんが吐血しちゃったんだろう。殆ど聞きたいことも聞けたし、葵ちゃんがどこに吐血したか教えてくれたら帰っていいよ。それにしても葵ちゃん大丈夫かい?吐血するまで無茶しちゃうなんて…

東雲薫
今は落ち着いてますし、大丈夫だと思います。一応医者を呼んでるのでこの後診てもらうつもりなんですけどね。

五十嵐 警部
昔から身体弱かったからね。お大事にって伝えておいてもらえるかな?

今野 結弦 (刑事)
望月さーん僕が病院まで送りますよ。

望月雪翔
送ってくれるのはありがたいんだけど、病院じゃないんだ。スワロウテイルの事務所なんだけどいいかい?そこに医者を呼んであるんだ。

今野 結弦 (刑事)
そうなんですね。それならスワロウテイルまで送っていきますよ。東雲さんもそれでいいですか?

東雲薫
いいも何も送ってくれるのはありがたいわ。

今野 結弦 (刑事)
そういうことで五十嵐警部、僕はスパロウメモリーの皆さんをスワロウテイルの事務所に送っていきますね。

五十嵐 警部
今野行動が早すぎるが、まあいいだろう。安全運転だからな。スパロウメモリーの3人を送ったら戻ってきてくれ。それじゃあ頼んだぞ。

今野 結弦 (刑事)
はい!それじゃあ行きましょうか。望月さん東雲さん。

望月雪翔
ありがとう今野。

東雲薫
ありがとうございます。今野さん。雪翔、葵抱っこできる?

望月雪翔
大丈夫、横抱きにして運ぶから。それじゃあ失礼します警部。

東雲薫
五十嵐警部、すみません。後をお願いします。

五十嵐 警部
構わないよ。わかったことがあれば連絡するからそのつもりでいてくれ。

東雲薫
勿論大丈夫ですよ。葵が元気になったら1度警部のところに行きますね。葵は警部と話すの好きみたいですし。

五十嵐 警部
葵ちゃんにそう言ってもらえるのは嬉しいな。それじゃあお大事にな。

東雲薫
ありがとうございます。それでは失礼します。

雪翔と雪翔に横抱きされてる葵と薫と今野刑事は片瀬の家を出て車に乗った。