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リーファーの薬草師

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リーファーの薬草師

5 - リーファーの薬草師のアフターストーリー

♥

42

2022年04月11日

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メリエン

まだ、朝の3時か……

メリエン

眠れないなぁ。

今日は朝ご飯のサンドウィッチを楽しみにしすぎたせいで無駄に早起きしてしまった。

メリエン

ヴァロさん、
いないだろうし……

メリエン

ちょっと広間に
出てみようかな。

ヴァロさんが、踊っている。

メリエン

あ、ヴァロさん。

ヴァロ

な、何!?

その時突然ヴァロさんが横転したの。

メリエン

大丈夫!?

ヴァロ

こほん。

ヴァロ

悪い、少し
驚いただけだ。

メリエン

あぁ、ごめんね。

ヴァロ

平気だ。

ヴァロ

見なかったことに
してほしい。

ヴァロさん意外とカッコつけなのね。

メリエン

気をつけてね。

ヴァロ

う……

ヴァロ

君に心配される
筋合いはない。

メリエン

ヴァロさんも踊るの、
好きなの?

ヴァロ

ああ、まあ……

メリエン

アタシも踊るの好きなの。

メリエン

踊らない?今から。

ヴァロ

い、今から!?

ヴァロ

いや、私は……

メリエン

ダメかな。

ヴァロ

ダメじゃないけど……

今日のヴァロさんは、いつもよりもしどろもどろで落ち着かない。

転んだのがよっぽど恥ずかしかったんだろうね。

ヴァロ

うっ……

ヴァロ

ヴァロ

私の手を取れ。

メリエン

うん!

ヴァロさんは、ファーデン(アタシの故郷)にいた人よりも踊るのがすごく上手いの。

吸血鬼の姿に似合うほどに。

メリエン

ヴァロさん、すごい!

ヴァロ

そうか。

午前3時の古の館の広間に、ステップを踏む音がこだまする。

社交パーティーにどれくらい参加してたんだろってくらい、当たり前に美しくその人は踊ったわ。

なんだか、映画の中に入った気分になれたの!

ヴァロさんにお願いして、キッチンに来たの。

ヴァロ

嫌なにおいがするだろ。

確かに、紫色のもやがあたりを覆っているような気分なの。

メリエン

うん。

ヴァロ

どうする。

メリエン

サンドウィッチ、
一緒に作りたいし。

ヴァロ

平気か?

ヴァロ

苦しくなったら
いつでも戻れ。

ヴァロさんキッチン掃除してる?

メリエン

じゃあ、材料出すね。

アタシが冷蔵庫に手をかけた途端!

ヴァロ

それじゃないっ!

ヴァロ

あ……

ヴァロ

ヴァロ

その隣のだ。

ヴァロ

そっちは別のものが
入っている。

メリエン

うん、わかった。

ヴァロさんは普段はこんな風に激したりしないの。

今日、どうしちゃったんだろ。

食堂で、サンドウィッチを食べたの。 美味しかった。

でもやっぱり、ママの作ったサンドウィッチと味が違うな……

ヴァロ

お気に召さなかったか?

いや、でも最初にここに来た時は、ママの味に似てる、もっとおいしいサンドウィッチだった。

メリエン

いや、前と、
味が違うなって。

ヴァロ

そうか?

ヴァロ

それは、悪かった。

メリエン

でもこれも美味しいよ。

ヴァロ

……。

ヴァロ

やはり私では……

メリエン

ん?どうしたの?

ヴァロ

なんでもない。

メリエン

ヴァロさん!

ヴァロ

なんだ。

メリエン

薬作ろう!

この前、ママを治すためにどんな病でも治すという薬草をいつもの森で採ったの。

でもそのせいで、さっき行ってみたらあの場所の「バランス」が崩れちゃって、薬草が採れなくなってたの。

だから、もっと遠くの森で薬草を採集してきたの。

ヴァロ

ああ。

ヴァロ

私が瓶に薬草を詰めるから
君が魔法をかけてくれ。

メリエン

オッケー!
薬草を潰して混ぜるのも
よろしくね。

ヴァロ

分かった。

メリエン

オーダーメイド
承りますって、
のぼりに書いていい?

ヴァロ

ああ。

ヴァロ

よろしく。

空き瓶の中に薬草をつめて薬を作って売る商売をしているの。

空き瓶は木でできた箱の中に入れておいて、これとのぼりをもって歩くの。

そして、箱の中に入っている薬を売るんだ。

これが意外と高評なんだよね。他にこの街に薬師はいないのもあって。

長い間重いものを持っているせいで、 この前痛めた右手がひりひり痛んできた。

心なしか、傷が開いてきたような気すらする。

りん

おう、ヴァロと
メリエンじゃねえか。

りんちゃんは、女祈祷師で、一回アタシのこと裏切ったの。

でも、罪悪感があったらしくてたまに助けてくれるの。

ヴァロ

ああ、リンじゃないか。

りん

何してんだ?

メリエン

あ、りんちゃん!

メリエン

今ね、薬売ってるの!

りん

どれ、一つ買ってやろう。

メリエン

ありがとう!

ヴァロ

代金は300円になる。

りん

おう!

りん

メリエン。この前
勇者という名の醜女に
切られた傷は痛まんか?

メリエン

まだすごく痛むの。

りん

そうか……

りん

売り物とか
ケチなこと言わずに、
メリエンにひとつ
薬をやってくれよ、
ヴァロ。

ヴァロ

ああ。

りん

じゃあ、オレは失礼する。

ヴァロさんはアタシに薬を手渡した。

傷口に塗ると、すぐにそれが塞がって痛みも無くなった。

メリエン

へー!アタシたち、
こんなにいいものを
売ってたんだね。

ヴァロ

ああ。

ヴァロ

メリエンの回復魔法は
凄いからな。

メリエン

ありがとう!

メリエン

今日の売れ行きも
良かったね、
ヴァロさん。

ヴァロ

ああ。

ヴァロ

かなり儲かったな。

メリエン

儲かった……
なんかヴァロさんが言うと
お金持ちって感じがするの。

ヴァロ

そうか。

ヴァロ

まだそのオーラを
消しきれて
いなかったのであれば
謝らねばならぬ。

メリエン

ん?昔は、
お金持ちだったの?

ヴァロ

私が吸血鬼になるよりも
前の話だがな。

メリエン

へー。

ヴァロ

あの頃はよかったよ。

ヴァロ

全てはあいつが……

メリエン

あいつ?

メリエン

ヴァロさんに、
噛みついた人?

ヴァロ

ヴァロ

この話は終わりだ。
市場に行こう。

メリエン

うん。

やっぱり、今日のヴァロさんはおかしいの。

本当は話したいんだろうけど、話したらダメなことをわかっている……

そんな雰囲気があったの。

ずっと、同じような日々が続いた。

薬の売れ行きこそ好調だったが、もう体力的にも精神的にもおかしくなりそう。

大人が、毎日に疲れてしまう気持ちが すごく分かったの。

多分あれから一ヶ月くらい経ったかしら。

ヴァロ

辛いだろ。

ヴァロさんは、アタシの心を読むようなことを言った。

メリエン

うん……

メリエン

もうやめたいくらい。

ヴァロ

……やめるか?

メリエン

でも、そしたら……

ヴァロ

薬草師、やめても
いいんだぞ。

ヴァロ

私だって、
毎日人間の姿に化けて
働くのは辛い。

ヴァロ

客から、悪い吸血鬼を
倒しに行くと言われるのが、
辛い。

初めて、ヴァロさんが弱みを吐いた瞬間だった。

メリエン

でもそれなら、
どうやって生きていくの?

ヴァロ

死ねばいい。

メリエン

そんなの、嫌だ!

ヴァロ

考えろ。

ヴァロ

生きていても希望は、
ないだろ?

ヴァロ

母親は死んだ。

ヴァロ

父親は今、どこにいる?

メリエン

えっとね、
リコンしたの。

ヴァロ

ほら!

ヴァロ

希望なんて、
ないじゃないか!

ヴァロ

ははは……

ヴァロ

ヴァロ

なあ……

ヴァロ

私のために死んでくれよ。

そこにいたのは人間ではない。

そこにいたのは、血に飢えた牙を丸出しにし、生に狂った化け物だった。

リーファーの薬草師

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