mrpk

鏡を見た。

自分でも思う。もう誤魔化しようがないくらいに疲れきった顔。

自分の酷い顔を隠すためにメイクに慣れてしまったなんて、誰にも言えないよな。

あの人はよく可愛いって言ってくれるけど、こんなゾンビみたいな気持ち悪い顔、どこが可愛いのかわからない。

ﾊﾟﾘﾝｯ！！

鏡の中の自分が一瞬笑ったような気がして、思わず鏡を殴って割ってしまった。

そんなことはないはずなのに。

手から血が滴り落ちる感覚。自分の乱れた呼吸やドクドクと耳に響く心臓の音まで

全部うるさくて気持ち悪い。

この人は…僕の大切な人。

何も出来ない俺を受け入れてくれた人。

俺に生きる意味を与えてくれたのはこの人だった。

優しいな。ずっと。

キッチンから香ってくる匂いで分かる。多分もう用意してくれてる。

せっかく準備してくれたのに食べないのは、申し訳ない。

味がわからない。

屈託のない笑顔を浮かべて嬉しそうにしている君の目に、俺はどう映っているんだろう。

きっともう、とうの昔に愛想はつかされてるはずだ。

こんなに我儘で手のかかる人間なんて、嫌になるだろ。

実際俺だって俺のことが嫌になってる。

このどうしようもない人生を捨てられたらって、何回思ったかも分からない。

でも死ねないんだ。どうしても。

だってKAITOは俺に苦しんで欲しくも死んでほしくもないはずだから。

俺が泣いても怒ってもなでなでして大丈夫だよって言ってくれる、やさしくて大切なKAITO。

KAITOがいるなら、生きないと。

生きておかないと。

そうだ。タイミングを見て、かいくんから離れよう。

残りの人生に俺がいたら、かいくんはきっと不幸になる。

僕はありがとうをしっかり言えたことがないから。

きけない。

「僕は君のそばにいていいの？」

聞くつもりじゃなかった。そもそも、そばにいたいなんて烏滸がましいこと、かいくんがいいよって言っても俺が無理。

かいくんには、僕なんかよりもっと魅力的な人がいる。

ただ、本当は俺だけのかいくんで居てほしい気持ちもあって

心の中で渦巻いている。

ああもう、ほんとダメだな。

なんで迷惑をかけることしかできないんだろう。

他の人ならもっと、

もっと上手くできるのに。

ごめんって言わないでよ。

言わなきゃいけないのは俺の方なのに。

かいくんのせいで

得意だった「大丈夫」がつかえなくなってきた。

我慢するのも苦しくて

昔はこんなんじゃなかったのに

こんなに弱くなかったのに。

かいくんが俺を幸せにしたせいでこうなっちゃった。

恩返ししなくちゃいけないのに、世話を焼かれるのはずっと俺の方。

精一杯伝えた。本心だから。

寂しい気持ちも、嫌だなって気持ちももちろんあるけど、でもそれ以上にかいくんには俺なんかに構ってないでちゃんとした人生歩んで欲しいんだよ。

こつん、とおでこを合わせて手を握ってくれるKAITO。

無理だよ、もう、俺にはふさわしくないんだ。かいくんは。

相応しくない、ちゃんとお別れしなきゃって、

おもってるのに………

かいくんの優しさに触れたらいつも何かが崩れて、全部どうでもよくなって

一生添い遂げたいなって、思っちゃうんだ。

頭に触れる手がじんわりあったかい。

こんなに優しい、優しすぎる人、俺にはもったいない。

けど、

まだもうちょっと、もうちょっとだけでも隣にいたいな。

手の傷が、ズキ、と痛んだ。