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世界が嫌いだ
世界は私という存在を否定してくる
どうしてなのかは分からない
でも、確かに私の『私らしく生きる』という目的に対して拒んでくる
ひとつ、両親に恵まれなかった
私のやりたいことは全て否定
母の口癖は『貴女は私の言うことを聞けばいい』
私はお母さんの操り人形じゃない
どんなに否定しても私の声はあの人には届くことは無い
物理的な距離は近くても心の距離は遠く
その間にはとてつもなく厚い壁が存在する
その壁が私の声をかき消していく
分かりたくないけどあの人の理屈は理解出来てしまう
あの人が今まで生きてく中でやっておけば良かったという後悔
その後悔を自身の娘に経験して欲しくない
きっと根本はそこなんだろう
でも、その気遣いが私を苦しめる
そしてその苦しみを言葉にして伝えても届かない
あの人の”優しさ”は私にとっては毒でしかない
この苦しい事態をさらに苦しめるのは父の存在
あの人は私とお母さんの話に対して関心の二文字はない
私はお母さんの引いてくれた線路に沿って進むのは嫌だと反論する
対するお母さんは自分が引いたレールに沿って生きれば苦しみはないと言う
私は自分が苦しくなるならないじゃなく
やりたいことをやりたいと言うのに
あの人にその言葉は通じない
そしてこのやり取りに対してお父さんは気にもとめない
食事時にこの話題が出てれば黙々とご飯を食べ
我この件に関さず、といった態度をとる
休日時ですらこの話題になることもある
けどお父さんはリビングのソファーに腰掛けパソコンとにらめっこ
こんな人に私は相談なんて出来やしない
したところで何にもならないのだから
家でさえ孤独なのに私は外に出ても孤独だ
自分で言うのも恥ずかしいことだがどうやら私は世間で言うところの美人らしい
そのうえ学もあるという現状で学校ではいわゆる高嶺の花という扱い
実際のところ勉強が出来るのはお母さんの操り人形だからである
あの人の意に沿わないと激高してしまう
だから望まないが勉強は欠かさずやるようにしてる
誰が好き好んで勉強に打ち込むものか
望まない美貌と学があるせいで私は友達と言える人はいない
むしろ学校では敵ばっかりだ
私が勉強できてそのうえ異性にモテるもんだからそれが気に食わない女達に散々な事をされる
どうして私はこうも不幸なのだろう
”美しさ”は世間ではプラスに作用するのでは無いのか?
何故、私にはマイナスに作用するのか?
もう私は疲れた…
家にも外にも私の居場所はない
自分の部屋ですら居場所とすら言えない
本棚を見れば参考書がズラっと並んで
そこに私の好きな物は何も無く、お母さんの好きな物しかない
いや、正確にはお母さんのなって欲しい姿を形作るための物しかない
私のために与えられた部屋なのに私らしさは何もない
この部屋は物が沢山あるのにカラッポだ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
暗い部屋でそう小さくつぶやく
その時突然スマホの画面に灯りが点る
アヤメ
アヤメ
アヤメ
気になりスマホを手に取り確認する
飛んできていた通知は『言霊アプリ』というものからだった
彼女自身も話していたとおり暇を潰すような娯楽アプリは何も入れてない
なのに何故かアプリの通知が飛んで来ているのだ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
通知をタップしそのままアプリに飛ぶ
画面は質素な作りでタイトルと文字を入力と書かれた記入欄のみ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
彼女はそう言い記入欄に『友達が欲しい』と打ち込んだ
意外なことに彼女は自分を苦しめる母の死を願うでもなく
自分に関心を持たない父に恨みをぶつける訳でもなく
学校で自身を気に食わないと言ってくるやつらに対して報復する訳でもなく
心の底から溢れ出た僅かながらのわがまま
小さな頃からの大きな憧れ『友達が欲しい』だった
その言葉を打ち込み確定を押す
打ち込んだ文字は消えて記入欄には再度 『文字を入力』とだけ出てくるのみ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
寝ようと思いスマホの画面を閉じようとした時
『文字を入力』と出てる記入欄の下の空白に文字が打ち込まれいく
【私でよければお友達に】
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
アヤメ
その言葉を理解したのか文字を打ち込んでいないのに反応が帰ってくる
【うん。私と貴女はお友達】
初めて私はこの世界で”居場所”を見つけた