念の為バレないようにそっと扉を開いた。
音が出ないように、ゆっくりと。
あ、誰かいる。
男の子と、女の子。
一体2人は何をしているのか、誰なのか気になってしまった。
そんなちょっとした思いだった。
扉を開けた10センチ程度の隙間からそっと目を覗かせた。
あれって、もしかして蓮くん?
そうじゃない、と思いたくても
あの艶々輝く髪、微かに聞こえる低い声、すらっと高い身長。
あれは蓮くんに違いなかった。
嘘、今日用事あるって言ってたよね?
なんで?用事ってなに?
この女の子と会うため?
そんなぐちゃぐちゃになった感情のまま、私はじっと2人を見つめていた
すると、2人は口付けを交わした。
角度を変えて、何度も。
回数を重ねる毎にそのキスは段々と深くなって、2人は溶けていく。
もう嫌だ、こんなの見たくない。
相手が誰かなんてもうどうでもよかった。
ただ、蓮くんが私以外の子とあんなことをしているなんて知りたくもなかった。
たかがそれだけ。
されどそれだけ。
途端に、全てがどうでもよく思えた。
今まで蓮くんのためにいっぱい努力した。
蓮くんと釣り合う女の子になるために、
スキンケアにもこだわったし、髪にもヘアオイルを塗って髪を艶々にして。
普段しないことでも、蓮くんのためだと思えばなんだって出来た。
私の今まで、何だったんだろ。
まあ、そりゃそうだよね。
蓮くんかっこいいんだもん。
私なんかに振り向いてくれるはずなんて、最初からこれっぽっちもなかったんだ。
それに気付けなかった私が馬鹿だっただけ。
全部私が悪いから。
全部、全部。
もうこの場から逃げ出したくて仕方がなかった。
これ以上、あんな蓮くんなんて見たくなかったから。
私は廊下に出て走った。
速く、速く。
嗚呼、やっぱりもう終わりにしなきゃいけないんだね、私たち。
いや
そもそも私たちは始まってすらなかったのかもね。
帰ったら、ちゃんと蓮くんと話をする。
私たち終わりにしようって
ちゃんと伝える。
もうこんな気持ち、さっさと忘れてしまいたい。
蓮くんも、あの女の子も。
とにかく全てを忘れられれば楽になる。
あれ、私泣いてる?
そっか、私ちゃんと蓮くんに恋してたんだ。
たしかな恋をしてた。
だから。
恋をしてたからこの気持ちに踏ん張りを付けるんだ。
でも本当は
まだ蓮くんのことを諦められていなかった
蓮くんが私のことを好きになってくれればいいのに。
私しか見えないようになったらいいのに。
コメント
2件
どっちも応援したくなる!
蓮くん… 北斗ー!!