小悪魔な月ちゃんは陽センパイにだけ勝てない

パッと顔を上げて笑った三園さんをじっと見つめる

居心地が悪そうに視線を逸らした彼女は、困ったように笑った

場違いな感情を抱えたまま、わたしは三園さんに尋ねる

声色をいつもより少しだけ優しくして、ふわっと横に座る

そう言って無理に笑った三園さんを見て

わたしは彼女を、ほんとうにいい子だと思ってしまった

そして言うのを躊躇うのは、きっと対人関係だからなんだと思った

話すことは同時に、その子の印象を下げることになるかもしれないとか

そういう類の、配慮

わたしはズルい

知っていた。三園さんはこうすれば、彼女の持つ特有の分け隔てない優しさのせいで…

言うしか、なくなるってことを

まとめると、三園さんは他のクラスの友達から好きな人の相談を受けていて

その好きな人と三園さんも友達だったので、頼まれていろいろ聞いてあげたりしているうちに

頼んできた本人と、更にその友達たちにも悪く思われてしまったらしい

そう言ってへらっと笑った三園さん

わたしは何故か、初めて彼女の本当の想いを見た気がした

これ以上は何も言わなかった

だってわたしなんかには、何も言えなかったから