看護師
看護師
看護師
看護師
ツカサ
看護師
看護師
ベラベラと話し続ける看護師の隣を素通りする。
看護師
看護師
ツカサ
移動が決まってからというもの、オレの機嫌は頗る悪い。
一見して見れば、普通に見えるが内心は本当に煮えたぎっていた。
ツカサ
患者
チッッ、なんで今なんだよッ"
仕事上、無視して行くなんて出来やしない。
患者が呼んでいる。
医者であるオレを……呼んでいる。
ツカサ
患者
ツカサ
患者
患者
ツカサ
ツカサ
患者
ツカサ
ツカサ
頬がぴくぴくと引き攣る。
無理やり作られた笑顔が上手く保てない。
患者
ツカサ
患者
ツカサ
患者
何時診たかも分からない、この患者。
名前も病名も、カルテも、思い出せやしない。
ただのパッと見で何の病気か判断するのみ。
ツカサ
患者
ツカサ
患者
ツカサ
口にした言葉ですら、怒りが隠せない。
オレが小児外科の医者?、
考えれば考えるだけ反吐が出てくる。
患者
会う目的で来ていたのか、こいつは。
ツカサ
この現場ともお別れだ。
患者
ツカサ
振り返っても何も残るものはなかった。
仕事、仕事とやってきたのみ。
患者が死んでても、
病態が良くなって退院しても、
特に何も響くものなんて無かった。
ツカサ
ただ残るのは、
何処にも変え難い怒りのみだった。
__小児外科の移動。
小児、それを聞くだけでも嫌気がさしてくる。
ツカサ
ツカサ
院長から貰った担当患者のカルテ。
中身はすっからかんで。
ツカサ
ツカサ
こんな奴が何故病院にいるんだ?
それに、
ツカサ
カルテの枠に綺麗な空白がぽつりと目立つ。
家庭欄には何も無く、電話番号も関係も特に書かれていない。
ツカサ
結局、アイツの良いように丸め込まれただけだ。
ツカサ
ツカサ
奥の方まで続く廊下をぼんやりと眺める。
何の変哲のない、何処までも続いていく廊下。
これから、上手くやっていけるだろうか。
……こんな時、誰かが傍に居てくれれば。
ツカサ
ふらふらと小児外科の病棟へと歩く。
これから何が起こるかなんて分からないが、良い事が無いのは確かだ。
ツカサ
ツカサ
???
???
ツカサ
ツカサ
目の前を走る小さな影。
その影は突然廊下に伸び、消えていった。
ツカサ
ここの廊下は極めて人通りが少ない。
……医者であんな小さいヤツ、居ただろうか。
それに走っていった場所は……。
ツカサ
その時も何も考えていたなかった。
ただ、気になっただけ。
あの子供を探そうとか、見つけ出そうとか、一切考えていない。
本当に自分の好奇心だけで。
ツカサ
少し過ったこの雑念が、
この後起こる最悪な出会いに繋がるとは知らずに。
ツカサ
階段を上がって扉を開けば、広がる青一色の世界。
暖かい風が心地いい。
ツカサ
靡いて揺れる髪が少々邪魔だが、気分を紛らわすには丁度良かった。
ツカサ
ギラギラと照らし続ける太陽に目眩を覚える。
外に出る回数も増やすべきか?、
ツカサ
ツカサ
今はただ風に吹かれて居たかった。
先が見えない未来に不安を抱く気持ちを抱えて。
まさか、病院にもこんな施設が…
まぁ、ただの屋上だが。
綺麗な青空に手を伸ばす。
ずっと続く果てしない青空に。
ツカサ
_ガシャンッ
ツカサ
ツカサ
素足のままフェンス越しに立つ青年。
靴は丁寧に揃えられており、その周りには血が飛び散っていた。
その光景に不思議と釘付けとなる。
ツカサ
まるで漫画から飛び出してきた者のような青年は美しく
そして何処か儚い。
ツカサ
ツカサ
紫の髪は綺麗に揺れ、表情も見えない。
ツカサ
ツカサ
青年は下をまじまじと見つめていた。
……そんな、まさ…かな
脳裏に浮かぶ嫌な予感に早まっていく鼓動。
手が妙に震えている。
ツカサ
ツカサ
ツカサ
人の死なんて何回も直面してきた。
何回も見てきた。
ツカサ
その日は、やけに風が吹いていたと思う。
背中を押してくれるような風が何回も。
ツカサ
青年の体がふんわりと浮く。
予期した違和感は、
ツカサ
予想的中だった。
ツカサ
間一髪だと思う。
もしあのまま、立ち止まっていたら。
この青年に未来は無かったんだ。
ツカサ
フェンスに捕まり、腕一つで引っ張っている状態。
そう長くは持たないだろう。
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ツカサ
暴れ出す青年を腕1本でなんて不可能に近い。
ぷるぷると震える筋肉で何とか持ちこたえようと踏ん張る。
こいつ、今離して、とッ"、
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ツカサ
まずい、手がッ"、
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ツカサ
……コイツッ"っ、!!
澄んでいた瞳が一瞬にして光を失う。
ツカサ
何かを諦め絶望しきった、その瞳。
それは1番オレが知っている。
ツカサ
ツカサ
頭に血が上るような今までで出したことも無い力を腕に集中させる。
そして、勢い良く_
ツカサ
ツカサ
ツカサ
_グイッッ!!
ツカサ
腕に痺れるような痛みが走ったがそんなことは気にせず、
青年をぎゅっと強く抱きしめる。
__ガシャンッッ"!!
ツカサ
ツカサ
知ってるんだ、その瞳の奥そこで、
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ツカサ
胸の中でドタバタと暴れ回る。
それを離さまいとより一層強く抱きしめる。
ツカサ
胸元の方をぎゅっと強く掴まれる。
瞳の奥底に見えるSOS。
ツカサ
綺麗な黄色い月のような瞳に少しだけ光が灯る。
ツカサ
ルイ
ツカサ
ルイ
ツカサ
ルイ
ツカサ
ツカサ
ぁ、れ、オレ…自然に笑えて?、
今まで出したこともない声色でそっと囁く。
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ルイ
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ルイ
ツカサ
ぐすんっ、と啜り泣く声が聞こえてくる。
青年…いや、ルイが飛び降りようとした時。
確かにあの時ルイは__
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ツカサ
ルイ
ツカサ
ルイ
何故あんなことを言ってしまったか、なんて
今でも分かりっこない。
アレだけ人間に興味や関心を示さなかったオレが
何故あんなことを口に出来たのかなんて、分かるわけない。
ツカサ
ルイ
ツカサ
ツカサ
ルイ
ツカサ
あのまま、止まることだって出来た。
立ち止まって見ることだって出来た。
ツカサ
ツカサ
ルイ
ツカサ
飛び降りる時にあんな顔されたら、
まるで昔の自分のようだった。
だからきっと、助けたかったんだと思う。
ツカサ
溜息混じりにオレはまたより一層強く抱き締めた。
コメント
7件
天馬先生好きすぎる......、!!!
天馬先生、類くんに会う前にはめちゃくちゃイライラしてたのにあったら会ったで本心で優しくしてるのが本当に大好きです
むっちゃいい ごめんなさい語彙力どっかいきました 続き楽しみにしてます!