当たり前のことを
当たり前に心においてゆける人間なんて
そう当たり前にはいないだろう
不思議なことだが
消えてしまうと分かっていても
常に想い消えずにしてゆける人間なんて
ほとんどいないだろう
悲しいことだが
俺もその一人
未熟で、馬鹿で、いつも誤る
そんな俺も、いつの間にか
父になっていた
サユリ
マコト
マコト
サユリ
サユリ
サユリ
マコト
マコト
サユリ
サユリ
マコト
サユリ
マコト
サユリ
サユリ
マコト
サユリ
サユリ
サユリ
マコト
サユリ
サユリ
マコト
マコト
サユリ
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マコト
マコト
数時間前のサユリとのトークを見ながら
思わず深い溜息が突風の如く吹き出る
時刻は0時を少し過ぎたところ
自宅のマンションの廊下をよろよろと歩いて
玄関を正面に構えると
あまり力の入らない右手で鍵を静かに回した
マコト
サユリとユウマは寝てるようだが
玄関の明かりは点いていた
『暗い入り口は寂しいでしょ?』
確かそんなことを言っていたような
マコト
マコト
床を少し軋ませながら
ダイニングに向かって歩いてゆく
起こさぬように
ゆっくり、ゆっくりと
ダイニングの明かりもやはり点いていた
スーツと鞄を適当に椅子に置き
寝室の襖を少し開けてみる
マコト
マコト
マコト
本当は
〝声を掛けたい〟
でも、出来ない
妻と息子の顔をしっかりと眺められるのも
最近は寝顔だけ
それでもいいと思える反面
どこかやるせない
ユウマの少し汗ばんだおデコにひっついた前髪を
横に流しながら
意味の無い思考がカラカラと空を掻いた
マコト
マコト
襖をパタンと閉じ
ダイニングの椅子に座る
マコト
マコト
マコト
牡蠣の殻の様な白い皿に
鶏肉とキノコと玉ねぎをトマトソースで煮込んだものが
綺麗に盛り付けてある
大好物だ
でも
いつもとは何かが違う
マコト
鶏肉たちのその上に
輪切りにされたゆで卵が花柄にくり抜かれて
トッピングされていた
マコト
電子レンジに器を入れて
自動温めのボタンを押す
じぃーっという音がなり始めると
俺は椅子に座った
マコト
マコト
首元のネクタイを少し緩め
椅子の背もたれに寄りかかる
冷蔵庫横のカレンダーにふと目を向けると
今日(正しくは昨日)に
オレンジの蛍光ペンでグルグルと丸が引かれていた
マコト
マコト
マコト
ゴーゴル先生を起動
父の日 由来
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マコト
マコト
マコト
マコト
マコト
マコト
さっきのゆで卵は
白い薔薇
マコト
マコト
マコト
チンッ
〝時すでに遅し〟
マコト
ご飯と煮立ってしまった味噌汁を装い
飲み物を冷蔵庫から探す
と
ど真ん中に
『おとうさんありがとう』
とカラフルに描かれた文字と俺の似顔絵があった
〝なんかあの子が夕方からコソコソしててさ〟
マコト
目と鼻からなんか出てきた
マコト
マコト
マコト
サユリ
マコト
サユリ
サユリ
マコト
サユリ
サユリ
サユリ
マコト
サユリ
マコト
サユリ
サユリ
サユリ
マコト
サユリ
サユリ
サユリ
マコト
時たまに
自分が父であれているのか
不安になる時がある
息子の顔もろくに見れやしないし
妻には苦労をかけてばかり
俺はいつだって未熟で
人から学ぶ事が未だに腐るほどある
そんな俺が息子に何を教えられる?
父とはなんだ?
どうすれば良い父親でいられる?
そう考えてしまう
でも
〝父の日〟に
妻の作った飯を噛み締めて
息子の描いた自分の似顔絵を眺める
寝室ではすやすやと眠る子がいて
隣には顎肘をつきながら
優しく微笑む妻がいる
俺の頭がなんと言おうとも
誰がなんと言おうとも
こんなとき
俺は紛れもなく
父なのだろう
そう思う
サユリ
コメント
22件
藍田みづさん 似顔絵いいですね〜!! 私も昔あげた記憶があります笑 来年があります!!笑 素敵なコメントをありがとうございました(*´∀`)
うわああああああ(´;ω;`) 父の日に太ってる事気にしてるお父さんをちょっと痩せさせてあげたつもりの下手っぴな似顔絵をあげてたあの頃が懐かしいよおおおお 今では父の日なんて「忘れてた☆」で済ましちゃいます。°(°´ω`°)°。ちゃんと何かあげよう…今更コメントすみませんでした!
しおらーさん おぉ〜、ありがとうございます! 少し掛かってしまいますが、作らせていただきますね(*´∀`)