やめて―
消したって何も変わらないから―
美空
や…
海晴
?
美空
や、やめ、て…
海晴
なんで?
海晴
嫌がらせされてるんだよ?
海晴
あ、そうか!
海晴はその落書きを残したまま
席に座った
ガラガラ
高野
おーい席につけー
高野
始めるぞー
とうとう先生は落書きに見向きもしなくなった
海晴
!?!?
海晴
え、ちょ…
葉子
きりーつ
海晴
ちょ、先生!
高野
なんだ、岩田
海晴
え、後ろの黒板…
海晴
先生落書き気がついてないんですか?
高野
ああ、これはいつも神崎が書いてるやつだから気にすんな
高野
転校生が来ようがお構い無しなんだ
高野
俺も迷惑だから嫌なんだがな
海晴
え、でも美空って今きたばかりですよ
高野
ご丁寧に自分の名前が書いてあるから神崎だろう
高野
見てわからんのか?
海晴
でも、美空はそんな字じゃないです!
高野
あのな、黒板に書く時って、ノートに書く時と違って字が多少変わって見えるだ。
高野
ともかく、もう神崎にはうんざりしてるんだからやめろ。
海晴
はぁ?美空、今日机に落書きされてましたよ?
海晴
それにその机いつも別の場所に運ばれているみたいで俺が来た時運んでましたよ!
高野
どうせなんかの手伝いだろう
海晴
じゃあ、美空の手にはチョークの粉がついていないのに、
海晴
黒板を書いて居ないはずの春奈ちゃんの右手にはなんでチョークの粉が付いているんですか?
春奈
はぁ?
春奈
あんなウザイ奴の罪をあたしに着せないでよね
春奈
やめてよ変な冗談
高野
神崎は左利きだぞ
海晴
ほら!見てくださいよ!
わざわざ私の左手をみんなの前に掲げる
海晴ってなんで私を庇うんだろ
結局何も変わらないのに
高野
付いていないな、だからどうした?
海晴
これでも美空がやったって言うんですか!!
ガラガラ
松川浩二
なんなんだ!うるさいな!
高野
教頭!
海晴
あ、教頭先生、ちょっと見ていただけます?
松川浩二
何だね?
海晴
先生は、この黒板の落書きを見てどんな人がやったと思いますか?
松川浩二
う、これは…
松川浩二
この、神崎?って子、
松川浩二
その子を嫌ってる子じゃないかな
松川浩二
明らかに悪口だね、書いたのは誰なのかな?
春奈
うっ…
高野
神崎です。
松川浩二
何故だい?
高野
教頭、名前が書いてあるじゃないですか。
松川浩二
何故だ?名前が書いてあればその子が書いたことになるのかい?
松川浩二
それに、自分の名前とともに悪口を書く子なんて居ないだろう
松川浩二
神崎…神崎…
スタスタ
松川浩二
君が書いたのかい?
美空
ち、違います…
松川浩二
ふむ、この子ではないだろう。
高野
何故ですか教頭!
松川浩二
逆に言うが、何故君は神崎さんがやったと言い張るのかね?
松川浩二
常識的に考えてそれはないだろう。
松川浩二
それに君はここからじゃ見にくくてわからないだろうが、
松川浩二
神崎さんの机にビッシリと落書きが。
松川浩二
それも悪口で、黒板の字と似ている。
松川浩二
これはすべて、他の誰かがやったのでは、と疑うべきなのではないか?
松川浩二
よし、決めた。
松川浩二
今日中にアンケートをする。
松川浩二
嘘や悪口を書かず、
松川浩二
あったこと、それを見て自分が思ったことだけを書きなさい。
松川浩二
紙はまた持ってくる。
松川浩二
それでは。
高野
ま、待ってください教頭!
松川浩二
何だい。
松川浩二
君は疑うべきことを疑わなかった。
松川浩二
そして教師としてあるまじき、
松川浩二
生徒が精神的屈辱を受けていることに目を背けた。
松川浩二
それは教師としてどうなんだい?
松川浩二
然るべき対応を取らせてもらうよ。
高野
お、お待ちください…
ガラガラ
ピシャリ
シーン
あーあ、…
どうなるんだろ、私…
でもやっぱ、親にバレてもな〜…
あーあ、やっぱり私は、
変わらないんだ…