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スタジオの扉を開けた瞬間、湿った朝の空気が、少しだけ残ってた。
史記
楓弥
俺の声に続いて、 楓弥が少し遅れて入ってくる。
なんてことない日常の入り口。
……のはずなのに。
もーりー
誰かのそんな声が聞こえて、振り返ると、もーりーとケビンがちょっとだけ目を見合わせてた。
ケビン
もーりー
史記
なるべくいつも通りを装ったつもりだったけど……バレてた?
聖哉
せいやが楓弥の肩をポンと叩いてからかうみたいに笑うと、
楓弥はピクリと肩を揺らして、 顔をそらした。
楓弥
――うわ、わかりやすっ。
そんな反応されたら、 余計に怪しまれるじゃん。
史記
さりげなく話題を切り替えて、 みんなを流す。
でも俺の心臓は、リハ前だってのにやけにうるさかった。
楓弥と、距離が縮まった実感が嬉しくて。
“秘密”の共有が、 どこかくすぐったくて。
でも同時に、このまま隠し通せるのかって、不安もちょっとだけ、よぎる。
俺たちは“カップル”として見られてる。
でも本当の「気持ち」を知ってるのは、まだ――俺たちだけだ。
ちらっと視線を向けると、楓弥はまだちょっとぎこちない笑顔のまま、振り付けの確認をしてた。
――大丈夫。ゆっくりでいい。
史記
楓弥
楓弥は小さく頷いて、俺の隣に並んだ。
手を取るには早いけど、 並んで立つにはちょうどいい距離。
それが今の、俺たちの“リアル”だった。
楓弥
いつも通りの声を出したつもりだったけど、少しだけ、うわずってたかもしれない。
昨日――いや、今朝か。
ふみくんの家で目覚めて、朝ごはんを食べて、一緒にスタジオに向かった。
それだけのことなのに、 俺の中では、全部が“特別”だった。
聖哉
突然声をかけられて振り返ると、 せいやくんがニヤっと笑ってて。
楓弥
聖哉
楓弥
めちゃくちゃ焦って、 言い訳を探すけど何も出てこない。
そんな俺を見て、もーりーくんとケビンくんがこっそり目配せして笑ってた。
やば……絶対バレた……。
心の中で叫びながら、 ふみくんの方を盗み見た。
彼は自然体で、でもいつもよりちょっとだけ柔らかい空気をまとってる気がして。
その姿を見るだけで、 胸がきゅっと苦しくなる。
俺、隠せてないよな……
史記
ふみくんのその声に、我に返る。
楓弥
俺は小さく頷いて、 ごまかすように返した。
リハーサルが終わって、みんなが水を飲んだり、ストレッチしたりしてる隙。
俺は、少しだけ距離をとって座ってる楓弥の横に、そっと腰を下ろした。
史記
楓弥
その声は、どこかあたたかくて、俺にだけ向けられてるのが分かる。
史記
楓弥
史記
楓弥
俺は小声で笑って、手元のタオルを指先で弄ぶ楓弥の手に目をやった。
史記
楓弥
楓弥の肩が少しだけ揺れた。
俺は声を落として、隣の彼にしか聞こえないように言った。
史記
史記
史記
楓弥
言いかけて、 楓弥は一度言葉を飲み込んだ。
リハ終わりでダラっと休憩してたら、 スタジオの隅っこでなにやらイチャイチャ……じゃなかった、話し込んでる2人が目に入った。
愁斗
愁斗
隣でストレッチしてたケビンくんに耳打ちする。
ケビン
愁斗
ケビン
まるで映画でも見てるような気持ちで眺めてたら、隣からいきなり声が飛んできた。
もーりー
もーりー
ひでが笑いながら突っ込むと、 ふみくんがピクッと肩を揺らす。
史記
ケビン
ケビンくんがさらっと追い打ちをかけて、場がドッと笑いに包まれる。
ケビン
楓弥
焦って否定する楓弥の声が裏返ってて、また爆笑。
ふみくんはふみくんで、耳まで赤くして「ほんとに何もないってば」とか言い訳してるけど……
――ぜんっぜん説得力ないからね!?
愁斗
俺がボソッとそう言うと、 ケビンくんも笑って頷いた。
ケビン
愁斗