母さん
大丈夫?
父さん
痛くないか?
輝
大丈夫だって
母さん
でも…
母さん
一人で入院なんて…
父さん
心配だ
輝
大丈夫、大丈夫
輝
お医者さんも
輝
看護師さんもいるし
輝
あ、病室だ
母さん
お見舞いに来るからね
父さん
気をつけるんだぞ
輝
分かった、ありがとう
カチャ………バタン
輝
はぁ…
あぁ、こんな大事なときに骨折なんて… 試合には出られないな… 本当、俺って一番不幸かも…
医者
大丈夫?
輝
…………あ、はい、大丈夫です
看護師
安静にしていてね
輝
はい、分かりました!
考え事してて気付かなかった… あぶねぇ、良かった…
ふん……ふふん…ふん♪
輝
ん?何の音だ?
隣の患者さん
ルル~ルル~~♪
隣の患者さんが微かに本当に小さな声で鼻唄を歌っていた。
輝
綺麗な声…
輝
誰がいるのだろう?
誰がいるか気になったが、その日は疲れからか、睡魔に襲われ、眠ってしまった…
一週間後…
輝
おぉ、治ってる!
輝
スゲー!
母さん
良かったわね!
父さん
大丈夫か?
父さん
もう動けるか?
輝
うん、もう大丈夫!
母さん
荷物持って行くね
父さん
家に帰ろう
輝
あっ、待ってお礼を言ってから帰るから
母さん
あら、そうね
母さん
だけれど、今時間がなくて…
父さん
そうなんだ、すまん
輝
父さん達先に帰ってなよ
輝
俺は後で帰るから
母さん
でも…
父さん
いいじゃないか
父さん
輝も、もう子どもじゃないからな!
母さん
父さんが言うなら…
輝
ありがとう、父さん、母さん!
母さん
気をつけてね
父さん
待ってるからな
輝
はーい
医者
おぉ、輝君!
医者
元気になったのかね?
輝
はい、先生!
輝
ありがとうございました!
医者
これも仕事だからね、いいんだよ
医者
気をつけてね
輝
はい!
看護師
あら、輝君
看護師
もう動けるの?
輝
はい!
輝
ありがとうございました!
看護師
いえいえ、いいのよ
看護師
気をつけてね
輝
はい!
そういえば…隣の人に挨拶してなかったな。 最後に挨拶していこう
カチャ………
開いたドアからお隣さんの顔が見える…
輝
……!?
その人はとても綺麗な顔付きをしていて、どこか、悲しげな瞳だった…
輝
やっべ!
隣の患者さん
………?
あの人がこちらに目を向ける… 俺はとっさに隠れ、そそくさと、家に帰った…
輝
(あの人綺麗だったなぁ…)
母さん
ちょっと、輝?
父さん
大丈夫か?
父さん
ぼーっとして
輝
え?あーうん、大丈夫!
あー、またぼーっとしてた… なんかあの人のこと忘れられないな…人のことなんかすぐに忘れるのに、何でだろう?
また…あの病院にいってみようかなぁ…