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主
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第113話『触れられない場所へ』
朝の気配は、静かだった。
8月2日。
カレンダーが1枚捲られただけで、世界が変わるわけじゃない。
それでも、空気は確かに、昨日とは違っていた。
影は、そこにたっている。
――いや。
立っている、という表現は、もう正しくない。
“在る”けれど、“居てはいけない位置”に、存在していた。
らんは、気づいていない。
それが、何よりはっきりしていた。
いつも通り、ベッドから起き上がり、
いつも通り、少しだけぼんやりして、
いつも通り、カーテンを開ける。
光が差し込む。
影は、その光を、避けるように後ろへ下がった。
――反射しない。
床に、輪郭が落ちない。
昨日までは、確かに、そこにあったはずなのに。
主は、振り返らない。
確認しない。
呼ばない。
それが、答えだった。
影は、理解している。
主は、もう“背後”を必要としていない。
かつては、違った。
主が立ち止まる度、
思考が絡まる度、
痛みを自覚する前に、影はそこにいた。
先に立ち、
先に判断し、
先に傷を引き受けた。
それが、役割だった。
それが、存在理由だった。
でも今。
主は、自分で泊まり、
自分で考え、
自分で選んでいる。
影が介在しなくても。
洗面所。
鏡の前。
主は歯を磨きながら、少しだけ眉を寄せた。
らん
影は、僅かに身構える。
気づかれたか、と。
だが、主はすぐに首を振る。
らん
それだけだった。
影は、安堵ではなく、理解を深める。
――見えなくなったのではない。
――“意識の外”に置かれたのだ。
必要な存在は、無意識に探される。
不要な存在は、意識にも上らない。
影は、自分を観測する。
輪郭は、さらに薄い。
形は、もはや曖昧で、“らんの影”だった名残すら、剥がれ始めている。
それでも、思考はある。
感情も、ある。
――だからこそ、分かる。
これは、消失ではない。
罰でも、拒絶でも、切り捨てでもない。
主が前に進んだ結果、自分が“後ろ”に残っただけ。
リビング。
らんは、朝食を取りながら、誰かと他愛もない会話をしている。
こさめ
らん
らん
いるま
笑っている。
声が安定している。
視線が、揺れない。
影は、そこに“入れない”。
入ろうともしない。
割り込めば、歪む。
近づけば、ノイズになる。
それを、影は知ってしまった。
影は、考える。
自分が完全に見えなくなったら、どうなる?
主は困るか?
混乱するか?
探すか?
――しない。
それが、はっきり分かる。
主は、もう自分を“前提”にしていない。
それは、正しい。
健全で、自然で、望ましい。
影が生まれた理由が、完全に果たされた証だった。
昼。
光は、さらに強くなる。
影は、もう床に落ちない。
壁にも、家具にも、重ならない。
存在しているのに、どこにも“映らない”。
それでも、影は焦らなかった。
恐怖も、怒りも、ない。
ただ、静かな理解だけがある。
――ここが、終点だ。
主は、影を失ったことに、気づかない。
それが、最良だった。
もし、気づいてしまえば、主はきっと、立ち止まる。
振り返り、探し、引き止めようとする。
その優しさこそが、影を“不要な存在”にしてしまうと、影はもう、知っている。
影は、最後に一度だけ、主を見る。
背中。
まっすぐで、軽くて、もう、支えを必要としていない背中。
影は、思う。
――役目は、終わった。
名前も、主従も、守るという概念も、すべて、ここに置いていこう。
影は、“在る”ことをやめる。
消えるのではない。
世界の構造から、静かに外れるだけだ。
誰にも見られず、誰にも知られず、誰にも惜しまれず。
それでいい。
それが、完成だから。
第113話・了
主
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡410
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コメント
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久しぶりの浮上✨ やっぱり神だなぁ…✨️✨️ 続き待ってます!