昼休み
類
(教室にいたら絡まれるかもしれないし、しばらくは中庭でご飯食べよう…)
司
神代!!
類
ひぇ
司
一緒に食事でもどうだ?今一度、ゆっくり話そうでは無いか。
類
あ……や、えっと…
司
…む、その量で足りるのか?
類
え、あ、足ります。
司
オレのおかずを分けてやってもいいぞ!
類
え?!
類
あ、いや、いいです。そんな、僕なんかには勿体ないので…
司
なんと…
司
(やはり謙虚だ……)
類
(御曹司さんのご飯なんて、多分いいもの過ぎて口に合わない…)
司
神代!やはり、君は生徒会に入るべきだ!
類
えぇ?!
司
君のように謙虚で美しく、頭脳明晰な者こそ相応しい!
類
(謙虚…?美しい…?頭脳明晰…?)
類
(この人何言ってるんだろう…)
司
是非、生徒会に入れ!
類
あ…嫌です。
司
何っ!?
類
それと…僕、用事あって。失礼します、会長。
彰人
いやー、やっぱ振られてましたね。面白いくらいに。
冬弥
会長…
司
ふ……ふふっ…
司
あぁ…何故だろう?あんな風にあしらわれたのは初めてだ…何故か気分が高揚している!
彰人
…(諦め)
冬弥
や、やはり「恋」とはすごいですね…!
司
全く、その通りだ!
司
アイツのことが気になって気になって仕方ない…
司
必ずや、手に入れてみせよう!
彰人
…で、今度は何してるんですか。
司
ふっふっふ…彰人よ。オレは完璧なプランを考えた。
彰人
はぁ
司
まず、ここに神代を呼び出す。そして…ここに辿り着くまでにあるあの角!あそこで偶然を装いぶつかる!
司
そして、それに対してスマートに手を差し伸べるんだ!どうだ、完璧だろう!
彰人
うわ…童貞の妄想かよ…
司
なんだと?これで勉強したのだから間違いないだろう!
手に持っていたのはThe少女漫画だった。
彰人
おーい、このバカ(生徒会長)にこんなもん渡したバカは誰だー?
冬弥
あ、俺だが…
彰人
だよな、お前しかいねぇもん。
司
この参考書によると、これでヒロインと距離が近づくそうなんだ!完璧だろう!
彰人
(少女漫画を参考書とか言うな)
冬弥
はい!とても良いと思います!
彰人
…
彰人は一瞬諦めようかと思った。
彰人
…というか、会長。そんなタイミング良く角でぶつかれます?
彰人は何とか耐えた。
司
そこに関しては安心しろ。神代の1歩の秒速くらいは把握してる。そこから計算すると、神代が教室から出てあの角を曲がるのは丁度5分と32秒だ。
彰人
キッッショ
司
何か言ったか?
彰人
いいえ、何も。
彰人
そんな所で持ち前の頭の良さ出してこないで下さいよ。
冬弥
流石です、会長!
司
ふっふっふ、そうだろう!!
司
よし!早速神代を呼び出すぞ!!
彰人
あ……
彰人は止めなければ、と思った。
彰人
……
彰人
(すみません、神代センパイ……)
彰人は諦めた。
彰人
(俺にはこのバカを止められません…つか、帰りてぇ)
廊下
類
(なんか会長から呼び出された……怖…)
類
(どうしよ…バックれる方が怖いし…)
類
(…どうにでもなれ!)
タッタッタッ
類
ん?
ドンッ!
類
わっ
司
どわっ!?
ドサッ
類
(え、会長?!ど、どうしよう!!吹っ飛ばしちゃった!!!)
司
(しまった!!オレが転んでしまった!!)
類
ご、ごめんなさいっ!!会長、大丈夫ですか?
司
なっ!?
司
(な、なんとスマートに、オレに手を…!!)
司
(…ハッ、オレがドキドキしてどうする!!)
類
会長…?あの、保健室行きますか…?
司
ぐっ……!!
司
き……今日のところは勘弁してやる!!
類
へ?
司
さらばだ!神代!!また会おう!
類
え、あー
類
(よ…呼び出しはもういい…のかな?)
司
今日こそ、オレは完璧なプランを立てた。
冬弥
流石です、会長!もう次のプランがおありなんですね!
司
ふっふっふ、前回は失敗してしまったからな!今回は必ず成功させるぞ!
彰人
(諦め)
司
まず2人とも…これを見ろ!
冬弥
!こ、これは…?
司
「壁ドン」というらしい!
司
オレのプランはこうだ!まず、神代の所に行く。そして、この参考書のように「壁ドン」とやらをして、生徒会に誘う!
冬弥
なるほど!
彰人
ちょっっっっと待て!!!!
司
む、どうした彰人。
彰人
いや、あの……俺、一応会長のことは尊敬してるんですよ。会長に憧れて生徒会入ったみたいなところもあるし…
司
おお、まぁ当然だな。
彰人
なので会長のためを思って言います。それは流石にドン引きだし普通に怖いしキモいし、有り得ないです。
司
ぐはっ…っ!!
冬弥
か、会長っ!!
司
は……はは、面白いことを言うな、彰人…
司
ドン引き…?キモい…?有り得ない…?このオレがか?!
彰人
いくら会長でもキモいです。マジで。
司
がはっ…っ!
冬弥
か、会長!大丈夫ですか?!
冬弥
彰人!会長は今までそんな事を言われたことが無いから、耐性がないんだ!
彰人
いや、でもこれはマジで誰か言ってやらないと、本気で傷つきますよ。
彰人
冬弥、考えてみろ。お前ならそうだな…親父に置き換えて、さっきの会長のプラン想像してみろ。されたらどう思う?
冬弥
父さんに…さっきの…?
冬弥
……う"ッ、
彰人
キツくね?
冬弥
死にたい
司
な…なら、一体どうすれば良いと言うのだ……
彰人
そーですね。まずはやっぱ、友達になるところからじゃないですか?
司
友、達…?
司
って…どうやってなるんだ?
冬弥
…友情の証として、軽く島を贈るとか?
司
おお、なるほど!
彰人
「なるほど!」じゃねーよこのバカ共!!
彰人
なんっで金持ちってのはすぐ島とか庭とかダイヤ贈ろうとするんだよ…
司
だって…権力の象徴だろう?
彰人
はぁ…いいですか?まず、考え方そのものがダメです。
司
なっ
彰人
物を与えて懐柔した関係を友達って言えます?
司
……それが友達じゃないのか?
彰人
違いますね。
冬弥
えっ…
彰人
友達ってのは、お互いが尊敬し合えて、かつ、信頼できるような関係のことです。
彰人
友達に優劣なんてありません。対等じゃないと意味ないです。
司
尊敬し合えて…信頼出来る…対等
司
……待て、それでいくとオレ友達いなくないか?
彰人
だからずっとそう言ってるじゃないですか。
冬弥
そんな…
司
だって、オレに見合うような人間なんていないから…
彰人
そーゆーとこですよ。
彰人
とにかく、友達になりたいならまずはその考えから改めてください。
司
む……
類
(僕は平穏に過ごしたいだけなのに…何で生徒会に絡まれてるんだろ…)
類
(もしかして嫌がらせ…?いや、悪意は感じられなかったし…)
司
神代類、少しいいか。
類
!?
類
え、あ、会長?!
司
話がしたいんだ。今いいか?
類
(話ってまた勧誘かな…)
類
(何て言えば諦めてもらえるんだろ…)
類
わ、分かりました。
生徒会室
類
(不味い…これは、僕を逃がさないつもりだ…)
司
神代。
類
は、はい。
司
その……と、
司
………………っ
類
?
類
(え、どうしたんだろう…)
司
(「友達になって欲しい」と言うのはこんなにも難しいことなのか?!)
司
その、と…
司
と……っ
司
友…達…に、なれ
類
…?
司
(よし!!言えたぞ!!)
類
えっと…すみません。もう1回いいですか?
司
何?!
類
いやあの、聞き間違いかと…
司
だから、友達になれと言っておる!
類
おや、聞き間違いじゃなかった
類
会長ともあろう方が、何故僕なんかと友達に?メリットなんてありませんよ。
司
む、友達とは損得でなるものなのか?
類
えっ
類
あ、いや…ちょっと違う…かも。
司
おお、やはりそうか。
類
(この人…自分勝手で傍若無人そうだと思ってたけど、意外と常識あるんだな。)
類
(案外いい人なのかも…)
司
それで…その、返事は、
類
あぁ、はい。僕でよければ是非。
司
!!!
司
ほ、本当か!神代っ!!
類
はい。よろしくお願いします。
司
!!
司
この流れで生徒会にも…!!
類
いや、それは御遠慮します。
司
そ、そうか…
司
…まぁいい。今日からお前はオレの「友達」だからな!
類
はい。
お友達になりました。
2年B組
司
神代!共に昼食をとろう!
類
えっ
司
見てくれ!今日は神代の分も持ってきてみたんだ!
類
は、はい??
司
気に入ったものがあれば是非食べてくれ!
類
そ、そんな。恐れ多いです。
司
む…友達とはおかずを交換するものじゃないのか?
類
うーん…
類
(会長ほどの人に僕のお弁当食べさせるのはなぁ)
司
む、神代のそれは弁当か。もしや手作りか?
類
えっと…はい。母が作ってくれて。
司
母上が?すごいな!
類
(良かった、バカにされなくて…)
司
む、これは?
類
ああ、冷凍のハンバーグです。これ、冷凍なのに結構美味しくて大好きで…
類
(って、会長は冷凍食品なんか知らないか、)
司
ふむ…どこのメーカーだ?
類
え?多分〇〇ってところの…
司
ほう、そうか。
類
あの…携帯なんか見て、一体何を…?
司
いや、好きならプレゼントしようと思ってな。今その会社を買収しようと…
類
?!?!
類
ま、待ってくださいっ!!
司
む?
類
ば、バカですか?!会社なんかもらっても困りますよ!
司
なんと
類
はぁ…
司
(た、ため息だと?!)
司
か、神代!なら代わりに…
類
いや、何も要らないです。
司
なっ……
類
…僕、先生から呼ばれてるので失礼しますね。
司
……
彰人
…流石に傷心ですか?
司
あぁ……友達とは難しいのだな……
冬弥
会長…
司
…
彰人
ま、まぁまぁ。あれはアンタが悪…じゃなくて、次頑張りましょ。
冬弥
そうです!きっと、会長のことを知れば神代さんだって好きになるはずです!
司
…少し1人にしてくれ。
冬弥
あ…
司
(怒らせてしまった……?)
司
(何がダメだったんだ…?クソ、全く分からん…)
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