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9 - No.9 いつめんの黄色い方へ2

♥

301

2024年12月13日

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大 遅 刻

はい

大変申し訳ございません

二ヶ月以上の遅刻 許されるわけないけど 本当にごめんなさい なんでもしますすいません

はい

物語、遂に書き終わりました

そしてもうひとつ 謝りたいことが

なんと、計985タップ

めちゃくちゃ長くなった ほんとにごめんなs((

はい

以下注意事項

今回の物語は 以前りほ様が書かれていた 「イツメンの🔴様へ」の物語の続きを 自分なりに想像して書いてみた オマージュ作品となります

許可はとってます(随分前に)

しかし、りほ様も続編を投稿する 予定があるようでしたので その内容と少しでも被らないよう 元のセリフや設定を改変している 部分が結構あります

なのでもしよろしければ りほ様の作品の方を読んでから こちらをお読みください

そして本当に遅れてごめんなさい

それでは、どうぞ

何百年も前の話だ

ある小さな村の神社に 一匹の妖狐が住んでいた

その妖狐は、人間を嫌った

神社に汚いゴミやクズを なに食わぬ顔で捨てていく

そんな人間達を 心の底から嫌っていた

妖狐

………………

妖狐

またじゃ…またゴミが捨てられておる…

妖狐

ここはゴミを捨ててよい場所じゃあないというのに…

妖狐

…紙くず、食べ残し…人間の糞、それに、動物の死骸まで…

妖狐

…人間は、本当に残酷な生き物じゃ。

妖狐

さて、これはどこに埋めにいこうか…

少女

……………

妖狐

…………ん?

妖狐

(…なんじゃ?あの娘は…)

妖狐

(ここの村では見たことの無い顔じゃ…こんな時間に出歩いて、大丈夫なんじゃろうか…)

妖狐

(…なにやら、神社の中をじっと見つめておるようじゃが…どれ、ちと様子を見てみるか。)

少女

………わぁ……

少女

…すごい、この神社…

少女

なんというか、こう…凄い神聖な感じがする…!

妖狐

(…ほう…この娘、見る目があるのう…)

少女

……でも…………

妖狐

(…!この娘、急にこちらに振り返りよった…!)

妖狐

(まさか、わしが見えておるのか?…いや、一般人にわしの姿は見えんはず…)

少女

…この神社に、このゴミの山は似つかわしくない!!

妖狐

……………!?

少女

せっかく綺麗な神社なのに台無しだよ…

少女

…よし、どこかに埋めにいこう!

少女

えっと…埋める場所、埋める場所…

妖狐

………………

妖狐

(…この娘…もしやこのゴミを、全て一人で片付けようとしておるのか?)

妖狐

(まさか…ここを掃除をしたとて、娘には何の得にもならぬはず…)

妖狐

(じゃあなぜ?人間の分際で、そんな…)

少女

…よし、私の家の穴に埋めよう!

少女

それじゃあ、新聞紙でゴミを包んで…

妖狐

…不思議じゃ……

少女

…………ん?

少女

……………

少女

…誰か、いる…?

妖狐

……………!

妖狐

(声を聞かれた?なぜじゃ、こいつはわしの姿も見えんはず…)

少女

…あ…あ、あのー………

妖狐

(もしや、わしがあの娘に関心を持ったからか?それとも、彼女が神社に得を積んだから…)

少女

…………あの!!

妖狐

うおっ?!

少女

わっ…え、えーっと…

少女

…あなたは、いったい…?

妖狐

……………!

妖狐

…お主………

妖狐

わしが…見えておるのか?

少女

……………え?

妖狐

…なるほど…つまりお主は、最近この村にやってきた新しい住人というわけか。

少女

はい!それで、村のいろんなところを探索してたんですけど…

少女

…この神社、いいところですね。

少女

なんか、こう…すごく惹かれます。

妖狐

おぉ、そうかそうか。それはよかった。

妖狐

…して、お主。お主は以前から、わしのような妖を見ることができたのか?

少女

いえ、全然!なんなら、今の今まで妖という存在がいるとすら知りませんでしたし…

妖狐

そうか…ではやはり、わしが興味を持ったからか…

少女

…えっと…あなたは、この神社に住んでいる妖なんですよね?

妖狐

…あぁ、そうじゃ。

妖狐

わしはこの神社に住み憑く妖狐…九尾と呼ばれる存在じゃ。

少女

やっぱり…この神社、すごく居心地いいですもんね。

少女

それに、九尾…なんか、かっこいいです!

妖狐

ほっほっほっ、嬉しいことを言ってくれるのう。

少女

…あの!妖って、他にはどんな方がいるんですか?

妖狐

ん?そうじゃのう、例えば…

少女

…あ、大変!もうすぐ夜になっちゃう!

少女

そろそろ帰らないと、お母さんに怒られる…

妖狐

おお、それは大変じゃ。

妖狐

親御さんを心配させない為にも、早くお家へお帰り。

少女

うん。今日はありがとう、九尾さん!

少女

…また、遊びに来てもいい?

妖狐

あぁ、もちろん。お主なら大歓迎じゃ。

少女

やった!ありがとう、九尾さん!

少女

それじゃあ、またねー!

妖狐

あぁ、またな。

妖狐

………………

妖狐

(……あの娘の目……)

妖狐

(赤く綺麗で、無垢で、純粋で…)

妖狐

…とても綺麗な、良い瞳じゃったのう…

それからというもの

その娘は毎日のように その神社へ訪れた

そして娘が神社へ来る度に 妖狐は娘を好いていった

いつしか、他にも様々な妖達が その娘に惹かれていき

神社の昼はいつも 娘と妖達で賑わっていた

よし、今日は鬼ごっこをしようぞ!

また鬼ごっこか?お前はいつもその遊びをしたがるのう…飽きんのか?

少女

いいじゃん、いいじゃん!鬼ごっこしよ!

じゃあその後、お人形遊びもしたい!きっと楽しいよ!

少女

いいねいいね、たくさん遊ぼう!

妖狐

(やれやれ…随分と妖が増えてきたな…軽く20は超えておる…)

妖狐

(…しかし、あの娘も他の妖達も、とても楽しそうじゃ。)

妖狐

(…あやつらも、元々は人間を嫌っておったはずなのにのう…)

妖狐

(わしも含め、皆あの娘に感化させられてしまったようじゃな。)

妖狐

(…そういえば、あの娘の名をまだ聞いておらんかったな…)

妖狐

おい、お主。名はなんというんじゃ?

少女

あ、そういえば教えてなかったね。

少女

私の名前は…………

妖1

う、うわぁぁぁぁあ!!

妖狐

?!

なんだ、今の叫び声は?!

あ、あそこ!あそこに叫んでた子が倒れてる!!

少女

大変、助けに行かなきゃ…!

妖狐

(…なんじゃ、何が起こっておる?)

妖狐

(あやつはなぜ倒れて…)

…おい、待て!そいつに近寄るな!!

少女

えっ?

???

…よし、二匹目も退治完了っと。

妖2

…ぅ、ぁ…………

???

てか、妖多すぎでしょここ。なんでこんな集まってんの?

少女

あ、あの人…女の子の妖を…!

あいつ、どこかで見たことがあるような…

…ま、まさか…あいつは…!

妖狐

祓い屋か……!

祓い屋

…あれ、知ってんの?祓い屋も有名になったもんだなぁ…

忘れることなどない…私らの仲間を、何百も葬りさりよって…!

少女

な、なんで…一体何が起こって…

君は逃げて、あいつは僕達が…

祓い屋

さて、三匹目は…こいつにしよっと。

…っ、ぐ………

妖狐

おい、やめ………!

少女

やめてっ!!!

祓い屋

……………!

祓い屋

…あれ、人の子。どうしたの?

祓い屋

今ここ危ないから、近寄らない方がいいよ。君には見えないかもしれないけど…

少女

よっ、妖達を、傷つけないで!

祓い屋

…………!

祓い屋

へぇ…君、見えてるのか。

少女

どうして妖を傷つけるの?ここのみんな、何もしてないのに…

祓い屋

ん?…あぁ、そうか。君は知らないのか。

祓い屋

はじめまして。俺は人類を守るために妖を祓う、"祓い屋"という者だ。

祓い屋

妖という存在はね、人間を一方的に嫌って、人間に害を与えるんだ。病気や地震、津波に火事…他にも沢山のね。

祓い屋

そんなの許せないだろう?だから俺は、そんな妖達を祓うべく戦っているんだ。

祓い屋

…そうだ。君も見えているのなら、俺と一緒に祓い屋に…

少女

絶対にならない。

少女

そもそも、ここにいる妖達は人間にいじわるなんてしない。

少女

やさしい妖達まで祓っちゃうなんて、そっちこそ一方的じゃん!

少女

それに妖にだって、あなたと同じように人間を嫌う理由があるはず…

少女

だからきっと、人も妖も話せば分かり合える!

少女

私は祓い屋にはならない。妖を祓うんじゃなくて、妖と仲良くしたいの!

祓い屋

………………

祓い屋

……ふーん………

祓い屋

そっか、それは残念。

祓い屋

それじゃあ、一人で全部祓うしかないか…

妖狐

…!そこの妖、避けろ!!

妖3

っうぁ"!…ぁ……

祓い屋

よし、三匹目〜。

妖4

っあ"ぁぁぁあ"あ"!!

祓い屋

四匹目〜!

妖狐

…っ、くそっ……!

妖狐

(まずい…このままでは、全滅する…!)

少女

……………

少女

……なんで…………

妖狐

…はぁ…っはぁ………

なんだこいつ、とても強い…!

祓い屋

…君達、全然懲りないね。こんな倒すのに苦労したの久しぶりだよ…

祓い屋

…でも、今日は日が暮れてきちゃった。

祓い屋

夜になると妖が強くなっちゃうし、ここらでおいとまさせてもらうよ。

祓い屋

それじゃあ、またね〜。

あ、ちょっと!待って!!

妖狐

…逃げられたか…

おい、娘。大丈夫か?

少女

………………

……………娘?

どうしたの?体調悪い?

少女

…ど……て……

…ん?今、なんて…

少女

…どうして…みんな傷つけるの…?

妖狐

…………!

少女

なんで…っ、なんでみんなを祓うの…?みんな、いなくなっちゃったよ…?

妖狐

…………娘……

少女

みんな、優しかったのに…みんなと遊ぶの、楽しかったのに…!

少女

なんで…なんでっ……!

妖狐

………………

大丈夫?落ち着いた?

少女

…うん。ありがとう、絵魔。

妖狐

(……………?)

妖狐

(なんじゃ…娘の目が、妙な決意に満ちておる…)

少女

…ねぇ、みんな。あの人の家、どこにあるか知らない?

…あの人とは、さっきの祓い屋のことか?

少女

うん、知ってる?

うーん…私は知らんな。

はい、僕知ってるよ!だってあいつの家、めちゃくちゃ有名な祓い屋だもん!

少女

………!そっか……

…おい、そいつの家を知って何になるのだ。

妖狐

…お主、一体何を……

少女

…みんなに、お願いがあるの。

祓い屋

ふぅ…ただいまー。

祓い屋 当主

おぉ、帰ってきたか。今日は遅かったな。

祓い屋

いやー、父上…実は、さっきまで妖退治してたんだけど…

祓い屋

随分めんどくさいやつらがいてさ…今日、祓うの失敗しちゃったんだよね。

祓い屋 当主

おぉ、珍しい。お前が苦戦するとはな。

祓い屋

そうなんだよー、ほんと骨のある奴らで…

ガラッ

家来

っ、当主!大変です…!!

祓い屋 当主

おぉ、どうした?そんなに慌てて…

家来

や、屋敷の外…屋敷の外に…!

家来

百鬼夜行が、来ています…!

祓い屋 当主

っおい、そこをどけ!

祓い屋

わぁ、凄い量の妖だね…

祓い屋 当主

…まずいことになったな…

祓い屋

…ていうか、そもそも百鬼夜行ってなんなの?俺あんま詳しく知らないんだけど。

祓い屋 当主

あぁ…百鬼夜行とは、数百に渡る妖が何か一つの目的のために、リーダーを中心に群れて行動することを言う…

祓い屋 当主

…しかし妖は、本来群れることや誰かと息を合わせることを嫌う。

祓い屋 当主

だからこそ、百鬼夜行が起きることは滅多に無いんだ。

祓い屋 当主

それなのに…こんな突然、なんの拍子もなく百鬼夜行が始まるとは…

祓い屋

…でも俺、百鬼夜行はリーダーがいなくなってしまえば機能しなくなるってのは知ってるよ。

祓い屋

だからさ、早くリーダーを祓いに行こうよ。

祓い屋 当主

…いや、無闇に近づかん方がいい。

祓い屋 当主

先程も言った通り、妖は群れるのを嫌う。

祓い屋 当主

その妖達を統一するということは、リーダーは相当な力の持ち主だ。

祓い屋 当主

一度屋敷に戻って、作戦を練ってから…

祓い屋

…ねぇ、百鬼夜行のリーダーって、行列の一番前にいるんだよね?

祓い屋 当主

ん?あぁ、そうじゃ。リーダーは他の妖を率いる為に先頭に…

祓い屋

……父上………

祓い屋

先頭にいるの、人の子だよ…

祓い屋 当主

……………なんだと?

妖狐

…おい、娘。何をする気だ?

少女

…祓い屋の人に、妖達と話し合って貰いたいの。

少女

きっとそうしたら、分かり合えるから…

妖狐

………………

妖狐

…………そうか……

妖狐

(…あの娘の目は、とても不思議じゃ。)

妖狐

(あの目は、妙に妖を魅了する)

妖狐

(先程、急にわしらに「もっと妖達を集めてくれ」と頼んだかと思えば…)

妖狐

(その妖達を、あの瞳でいとも簡単にまとめあげ、祓い屋の家にまで連れて来よった…)

妖狐

(…娘、お主は一体……)

祓い屋

…ねぇ、何してるの?

…!先程の祓い屋……!

お前達に、仇を返しに来たのだ!

たくさん仲間を祓われた分、しっかりお返し…!

少女

やめてっ!!

……………?!

……………なぜ?

少女

…今回は、戦いに来たんじゃない。話し合いに来たの。

少女

ねぇ、妖も人間も、みんなで話そうよ。そしたらきっと、みんな仲良くなれる…

少女

…私、嫌なの…誰かが亡くなっちゃうのも、祓われちゃうのも、とても嫌なの…

少女

お願い…もう、みんなに争って欲しくない…だから……!

………人の子……

妖狐

……………………

…そうだね、みんなで話そう。

少女

……!ほんと…?

…確かに、いつまでも争っていても何も意味は無いのかもしれない。

…それも、そうか……

少女

……みんな………!

妖狐

…はっはっはっ、その通りじゃな!

妖狐

祓い屋の者共よ。この通り、わしらはお主らに敵対する気は無い!

妖狐

だから諸君…一度この娘の声に、耳を傾けてはくれないか?

祓い屋 当主

………………

家来

…なぁ、話し合いだってよ?

家来

そんなの信じていいのか?

家来

いやでも、ほんとに戦う気は無さそうだぜ…?

家来

それじゃあ、少しくらいは聞いてやっても…

すごい…すごいよ!君の思いが、みんなに届いてるよ!

…もしかすると、この娘のおかげで本当に人と妖の仲が良くなるかもしれんな。

…本当に、凄い子だな…

少女

…お願いします。どうか一緒に……!

グサッ

祓い屋

…そんなの、俺はごめんだね。

少女

……………!

妖狐

…………は?

祓い屋

…君達、俺がこの子の真後ろにいたのに気づかないなんて、さすがに盲目すぎない?

祓い屋

そのせいで…百鬼夜行のリーダー、殺せちゃうよ?

少女

…っ、ぁ"あ……!

……っ、娘!!

…お、おい……

…娘の左胸に、刀が…!

少女

っあ"ぁぁぁあ"あ"!!

ど、どうしよう…人の子が、人の子が…!

…っ、心臓を貫いている…もう長くは持たん…!

妖狐

…お主…なぜこの娘を刺した!!

祓い屋

…俺は人と妖が共存するなんて、絶対無理だと思ってる。現実的にも、生理的にも。

祓い屋

妖の存在は、絶対に許したくないんだ…だから俺は、この子を殺す。

祓い屋

この子も可哀想だよね…妖に気に入られたせいで、俺に刺されちゃったんだもん。

祓い屋

安心して、この子の遺体はしっかり焼却してあげるから。

少女

…っ、はぁ…ぁ……

…ダメだ…もう、間に合わない…!

そんな…ねぇ、なんで!なんでこの子が…っ!

…祓い屋…お前たちは、絶対に…………!

妖狐

……許さない………

…………!?

おい、妖狐。やめろ、一回落ち着──

妖狐

…ここにいる人間は、全員…

妖狐

……死んでしまえ。

その日の夜

祓い屋の屋敷を中心に とても大きな地震が起こった

その屋敷に住む者のほとんどは その地震で亡くなってしまった

娘を殺された妖達は 心の底からそれを嘆いた

そして、何匹もの妖が もうあの少女と会えないのならと 娘と戯れた神社から姿を消した

しかし、何匹かの妖達は その娘を忘れないためにと その神社に住み慿いた

その妖達は、少女がまた 遊びに来るかもしれないと 何日も、何年も、何百年も 待ち続けているそうだ

りほ

…ねぇ、あれから何年たった?

なづ

あー、ざっと100から…1000年くらい?

しほらよぬら

いやざっとすぎでしょ。

絵魔

…あの祓い屋の家系、まだ妖祓ってるらしいよ。

りほ

…もう、その話はいいよ。あそこの話なんてしたくもない。

絵魔

…それもそうか。

なづ

あーあ、暇だー。

絵魔

すごいどうでもいいけどさ、みんなあの時からすごい口調変わったよね。

りほ

あぁ…まぁ、時代も変わってってるしね。

しほらよぬら

ねね、鬼ごっこしない?

なづ

…よぬ姉、毎回それやりたがってない?飽きんの?

しほらよぬら

だって、あの子とたくさん一緒に遊んだ遊びだから…

なづ

…………あっそ。

絵魔

…あの子、ほんといい子だったよね…

なづ

…………そうだね。

しほらよぬら

…ねぇ。なんか、あそこにすごいこっち見てる子いない?

なづ

え、どこ?

しほらよぬら

ほら、鳥居の後ろに…あ、隠れた。

りほ

…え、もしかしてうちらのこと見えてる?

なづ

まじで?そんなことある?

絵魔

おーい、この声聞こえたら手ー振ってー!

しほらよぬら

…あ、凄く小さく振り返してる。

しほらよぬら

あれ確実に見えてるし聞こえてるね。

なづ

まじか、今どき一般人で見える人とかいるんだ。

絵魔

ほんとそれな…って、りほどした?

りほ

………………

りほ

(…あの、赤い瞳は…)

りほ

……娘………?

しほらよぬら

……………へ?

絵魔

あ、ちょ…行ってっちゃった。

無夜

うぇっ…え、なんか近づいてきたんだけど…

りほ

おい、お主…お主、あの時の娘か…?

無夜

え、ちょ、待っ…だ、誰ですかあなた…

しほらよぬら

ちょいちょいちょい、りほストップ。

なづ

ちょっとグイグイ行き過ぎ。

絵魔

口調元に戻ってるよ。

りほ

……あ、あぁ…ごめん……

しほらよぬら

驚かせてごめんね。君、名前は?

無夜

え?えっと…無夜です…

しほらよぬら

無夜、よろしくね。

なづ

私はなづ。

しほらよぬら

私はしほらよぬら、よぬ姉って呼ばれてる。

絵魔

僕は絵魔…あ、お団子いる?

無夜

え…あ、いや、大丈夫です…

りほ

……………

はら、りほも!

りほ

…う、うん。りほだよ、よろしくね。

無夜

はい、よろしくお願いします…

なづ

…ねぇ、なんでここにいるの?なんで私らが見えるん?

絵魔

というか、君くらいの歳だと今の時間帯って学校じゃない?

無夜

う"っ………

しほらよぬら

あ、確かに。なんでこんなとこいんの?

無夜

…え、えーっと…実は、不登校でして…

なづ

あぁ、なるほど。それで暇つぶしに散歩って感じ?

無夜

は、はい、まぁ…

無夜

…実は、学校であんま上手くいってなくて…

絵魔

へぇー、無夜って特撮ヒーロー好きなんだ。

無夜

うん、めっちゃ好き。あでも、ハマったのは去年の戦隊からだから、あんま詳しくないんだけど…

無夜

って、そろそろ家帰らなきゃ。暗くなってきたし…

あぁ、そっか。そんな時間か。

りほ

…ねぇ、また明日も来てよ。この神社。

無夜

え?…ま、まぁ、暇があったら…?

しほらよぬら

やった!じゃあ、また明日ね!

無夜

う、うん、また明日…!

絵魔

無夜、気をつけてねー!

しほらよぬら

……………

しほらよぬら

…無夜ってさ、絶対あの子の生まれ変わりだよね。

なづ

ね、それ思った。なんか雰囲気がうまく言えんが似てる。

絵魔

見た感じ、あの子と血縁関係もあるっぽいから…あの子の兄弟の子孫かもね。

なづ

なるほど、血縁かつ生まれ変わりってことか…

絵魔

…だからだよね、僕らが見えたのも。

しほらよぬら

うん、絶対そう。

絵魔

…まあどちらにしよ、前のあの子みたいに楽しく遊べたらそれでいいや。

なづ

それもそうね。

りほ

………………

絵魔

あーあ、ほんとに明日も遊びに来てくれないかなー。

あはは…確かに人間って、裏切りガチだしね。

りほ

…きっと来るよ。だって、あの子の生まれ変わりだもん。

絵魔

…うん、そうだね。

りほ

………………あ。

なづ

……ん、どした?

りほ

……無夜………

絵魔

…え、ほんと?!

りほ

ほら、あそこ…!

りほ

なよるきたー!

無夜

うわっ、ちょ、昨日とテンション変わりすぎ…

なづ

へぇ…ちゃんと約束守ったんだ。偉いね人間なのに。

少女

人間なのにって…なづお前なぁ…

絵魔

まぁまぁ。折角無夜来たんだし、お団子でも持ってくるよ。

りほ

あ、それならもうよぬ姉が取りに行ったよ?

絵魔

えぇ!?僕が持っていきたかったのに…

なづ

えま、どんまい。

無夜

あ、あはは……

りほ

……………

りほ

(…懐かしい。)

りほ

(まるで、あの子と遊んでいたときに戻ったみたいだ。)

りほ

………………

りほ

…ずっと、一緒にいたいな…

無夜

じゃ、自分はそろそろ帰るわ。

りほ

え……早くない?

絵魔

人間にとっては、もう帰らなきゃ行けない時間だよ。

りほ

……そっか………

なづ

また明日も来なよ。

無夜

え、強制?

なづ

もちろん。

しほらよぬら

そんな嫌な顔しないでよー、私達だって暇なんだってば。

無夜

いやまぁ、そんな嫌では無いからいいんだけどさ…

しほらよぬら

……………!

しほらよぬら

…じゃあ、約束だよ?

無夜

うん、約束。

無夜

それじゃあ、また………

???

あぁ、ちょっと待って。

無夜

…………ん?

りほ

……………!!

りほ

(…あの風貌…あの立ち回り…)

りほ

(…あやつ、もしや……!)

???

君、それが見えるのかい?

無夜

え…まぁ、はい…

無夜

…って、あなたもあそこにいる奴ら、見えるんですか?

???

あぁ、もちろん。見えているさ。

無夜

…!じゃあ、あいつらと仲良くしてやってください。

無夜

あいつら、寂しいらしいので…お願いします。

???

…………!

???

…………そうか、君は……

???

……危ないな。

無夜

…………えっ?

なづ

っ、無夜!避けて!!

バンッ!

なづ

……っ、が………!

無夜

うわっ?!え、何?!

無夜

(今、なにか投げられて…なづが、自分を庇って…)

無夜

…っ、なづ、大丈夫?!

なづ

……っ、う"ぅ……

無夜

……何これ、御札……?

???

…ちっ、外したか……

祓い屋

そうさ、僕は祓い屋という者でね。

祓い屋

そこにいる妖達を、命がけで祓う仕事をしているんだ。

絵魔

祓い屋、いつまで僕達に迷惑かけるつもり?!

無夜

ねぇ、なづ全然起きないよ?これ、大丈夫なの?

祓い屋

あぁ、しばらくは目覚めないだろうね。結構強力な御札だし。

祓い屋

…でも、今日はもう暗くなっちゃうし…ここまでかな。

祓い屋

下見も終わったし、僕は帰るとするよ。

しほらよぬら

待って、行かないで!!!

祓い屋

…僕を深追いする前に、そこの猫ちゃんを看病してあげた方がいいんじゃない?

なづ

……ぅ………

しほらよぬら

………………っ!

祓い屋

…じゃあね、"俺"の家族を殺した、憎らしい妖共。

りほ

……………!

絵魔

…っ、ねぇ、待って!!

祓い屋

…っあぁもう、追ってこないでよ。お前らにはもうこりごりなんだ…

祓い屋

…今度は君を逃さないから、ね?

無夜

……え………?

祓い屋

それじゃあね〜。

無夜

…な、なんだったの、今の……

りほ

……………

りほ

(…あの祓い屋…あの時の祓い屋の生まれ変わりだ…!)

りほ

(…おそらく、無夜を見て記憶が蘇った…ってところかな。)

りほ

(そして、また百鬼夜行を起こされるのを恐れて、無夜を殺そうとしたんだ…)

なづ

………………

しほらよぬら

…大丈夫、なづは寝てるだけだよ。

無夜

そっか、よかった……

りほ

………………

祓い屋

この子も可哀想だよね…妖に気に入られたせいで、俺に刺されちゃったんだもん。

りほ

………………

しほらよぬら

…無夜、悪いことは言わないから、もう私達と関わるのはやめた方がいい。

りほ

…うん。無夜、見たでしょ?あいつの力。

りほ

いつ、無夜に危害が加わるか分からない…なんなら家族にも、危害が及ぶかもしれない。

りほ

だから…………

無夜

……自分は、みんなと一緒にいたい。

りほ

…………え?

絵魔

無夜……!

無夜

自分…学校は、まあ色々あって楽しくなくて…

無夜

…でも、みんなといるのは楽しいから…

無夜

…だから、みんなと離れるのは嫌だ。自己中かもだけど…

りほ

………………

絵魔

…無夜、嬉しいこと言ってくれんじゃん。

なづ

それじゃ、無夜とずっと遊ぶためにも…

なづ

祓い屋の奴ら、全員殺しに行こうか。

無夜

…え?なぜ?なぜ殺し?

しほらよぬら

そりゃあ、あいつらが無夜に悪いことしないように…

無夜

いやいやいやいや、流石にやめよう物騒すぎない?

絵魔

…じゃあ、どうすんの?あの人達、放っておいてもまたすぐ邪魔しに来るよ?

無夜

え?えーっと…

無夜

…殺すんじゃなくて、祓い屋の人達と話せ合えばいいんじゃ…ない、かな?

無夜

妖も人間も、どっちが傷つくのも嫌だし…だから、「もう妖達を傷つけないでください」って、説得したい…な?

りほ

……………!

なづ

いや、あいつらそんな聞き分けよくないって。

それに、油断してたら無夜がまた殺されちゃうかもしれないし…

無夜

…え、また?

しほらよぬら

…とにかく、あいつらは無夜が思ってるほど優しい奴らじゃない。

しほらよぬら

説得なんかじゃ、きっと分かってくれない…ね、りほ?

りほ

……………

しほらよぬら

…………りほ?

りほ

…あの子と一緒だ。

りほ

あの子も…同じこと、言ってた。

少女

妖にだって、あなたと同じように人間を嫌う理由があるはず…

少女

…だからきっと、人も妖も話せば分かり合える!

少女

…祓い屋の人に、妖達と話し合って貰いたいの。

少女

きっとそうしたら、分かり合えるから…

少女

…私、嫌なの…誰かが亡くなっちゃうのも、祓われちゃうのも、とても嫌なの…

少女

お願い…もう、みんなに争って欲しくない…だから……!

りほ

…分かったよ、あいつらを説得しよう。

無夜

……………!

しほらよぬら

ちょ…りほ、本気で言ってる?

りほ

こんだけ思ってくれてるのに、拒絶する方が可哀想だよ。

絵魔

いや、それもそうだけどさ…危ないじゃん。

りほ

…ううん、きっと大丈夫。

りほ

だって無夜は、あの子の生まれ変わりで…

りほ

"あの子と同じ目"を持ってるんだから。

絵魔

…………!

絵魔

…そっか、それもだよね。

無夜

……………??

無夜

まったく話が読めないんだけど…?

りほ

まあまあ…とりあえず、無夜はもう帰りな。夜も遅いし。

絵魔

なづのことは任せとけー?

しほらよぬら

…無夜。また明日も、来てくれる?

無夜

…うん、もちろん。絶対来るよ。

しほらよぬら

………ありがとう。

絵魔

それじゃ、また明日ね。

りほ

気をつけて帰ってねー。

無夜

分かった、またねー。

りほ

(…無夜なら、きっと大丈夫。)

りほ

(だって…無夜の目は、綺麗だから。)

絵魔

…さて、無夜。

絵魔

今からよぬ姉と一緒に、"特訓"を始めようと思う!

無夜

…は、はあ……

しほらよぬら

はい、絵魔隊長!

絵魔

なんだ、よぬ姉!!

しほらよぬら

…いや、多分無夜今何も分かってないと思うから、先に何をするかの説明を…

絵魔

…あ、まずそっからか。

無夜

この隊長、不安だ…

なづ

…張り切ってるね、絵魔。

りほ

うん、すごく張り切ってる。

なづ

…りほはいいの?特訓に参加しなくて。

りほ

うん、大丈夫。私は神社を見張ってるよ。

りほ

…というか、"特訓"ってなに?

なづ

え?絵魔達が言ってたから…

りほ

いや、もしものときのために護身術を無夜に教えるって話じゃ…

なづ

あー…まぁ、特訓って言った方がやる気出るんじゃね?

りほ

…………なるほど?

りほ

…なづは多分、見張りの方が楽そうとか思ったんでしょ?

なづ

あー…まぁ、ね?

りほ

あはは、なづらしい。

なづ

そう?

なづ

…祓い屋、いつ来るかな。

りほ

どうだろう…多分夜には来ないだろうし、昼過ぎくらいじゃない?

なづ

確かに、それくらいが妥当…

祓い屋

やぁ、こんにちは。

なづ

…………っ!?

りほ

来た、祓い屋……!

祓い屋

ごめんごめん、お取り込み中だったかな?

祓い屋

…というか、今は君達しかいないのかい?他の妖達は…

りほ

そんなの、お前には関係ない!

りほ

なづ、はやくこいつを足止め…!

なづ

………………

りほ

…………なづ?

りほ

なんで、倒れて……

祓い屋

…あぁ、"ナヅ"とは、そこの猫又のことかい?

祓い屋

こいつの力は一番厄介だからね。昨日みたく、御札で眠らせたんだよ。

りほ

……………!

祓い屋

いやぁ、妖の体は凄いね。もうあれを回復していたとは…

祓い屋

…さて、君のことは後で沢山苦しめてあげたいからね。

祓い屋

君を倒す前に、まずはあの赤目の子供を…

りほ

…………黙れ。

祓い屋

…………?

りほ

お前は…お前のことは、絶対に許さない……!

りほ

なんでそうまでして妖を嫌うの?なぜ、私達を傷つけるの?!

りほ

私達は…私達は、何も…っ!

祓い屋

………………

祓い屋

…"何もしていない"だなんて、よく言えたもんだよ。

祓い屋

ねぇ、君は覚えていないのかい?何百年も前のあのとき、何があったか。

りほ

なにって…お前達が、私達を襲ってきて…お前が、あの子を殺して…

祓い屋

うん、それで?

りほ

……それで………

りほ

………………

祓い屋

…あれ、もう記憶にないのかい?

祓い屋

そっか…それじゃあ、僕が教えてあげるよ。

祓い屋

人間の子を殺された君は、俺達に逆上した。

祓い屋

そして…君はその"地を操る能力"で、俺達の家に大きな地震を起こしたんだ。

祓い屋

その地震のせいで、俺達は死んだ。俺の親族、従者…みんな、亡くなった。

祓い屋

…そう、殺されたんだよ!俺も、俺の大切な人達も、全部!全部お前に殺された!!

祓い屋

それにだ!今の僕の両親だって、二人とも妖に殺された!二人ともだ!!

祓い屋

僕はいつも…いつも妖に壊される!僕の周りにある幸せを、いつも妖が壊してくる!!

祓い屋

それなのに…大抵の妖は、お前みたいに殺したことをなんとも思わないんだ。

祓い屋

自分の大切な人間が殺されたときは、俺を心底憎んでたはずなのにな?

りほ

……………っ

祓い屋

…僕はそんな、人間のことをまるでおもちゃみたいに弄んで、何食わぬ顔で殺していく…

祓い屋

そんなお前達が、心底嫌いだ!大嫌いだ!!

祓い屋

…逆にだ、お前達が人間を嫌った理由はなんだ?

祓い屋

どうせ、聖地を汚されただとか、存在をバカにされただとか、そんなちっぽけな理由なんだろう?

祓い屋

そんな理由で人間を襲い殺すから、お前らは人間に憎まれる!嫌われる!!

祓い屋

そして…その人間の憎しみや憎悪を晴らすため、妖を滅すため!僕ら祓い屋は存在するんだ!

祓い屋

僕らがいる限り、お前ら妖が許されることはない…絶対に、許されていいわけが無い…!

祓い屋

特にお前は!俺の親族を殺した、お前だけは!!

祓い屋

めちゃくちゃに痛めつけて、地獄のような苦しみを与えてやる…!

りほ

………………

祓い屋

…っはは。なんだ、どうした?

祓い屋

まさか、今更反省して戦うことを躊躇しているのか?

りほ

………………

祓い屋

……………そうか。

祓い屋

でも、俺はお前をゆるさない。

祓い屋

だから、僕はお前を……

祓い屋

殺す。

絵魔

ちょぉぉぉぉぉぉっとまったぁぁぁあ!

りほ

……………!

祓い屋

…邪魔が入ったか……

しほらよぬら

りほ、大丈夫?!なづは…

なづ

………………

りほ

だ、大丈夫…倒れてるだけ…

了解、とりあえず札を…

無夜

………………

りほ

…………っ、無夜!?

りほ

ダメ、今来たら…!

祓い屋

…赤目の子、はっけーん。

祓い屋

やあ、昨日ぶりだね。元気にしてたかい?

無夜

………………

祓い屋

…だんまりか、つまらないの。

祓い屋

それじゃあ…君のこと、葬らせて貰ってもいいかな?

祓い屋

君がこの先二度と、生まれ変わることができないように。

祓い屋

念入りに、丁寧に…そして、大切に。君を天に送ってあげるよ。

祓い屋

さあ、早速儀式を初め──

ガタンッ

祓い屋

………………

祓い屋

…ねぇ、人が喋ってるときに邪魔しないでくれる?

祓い屋

この土壁、邪魔なんだけど。

りほ

………………

祓い屋

…僕は今、あの可哀想な赤目の子の魂を解放してあげようとしているんだ。

祓い屋

これじゃあ、あの子に近づけない。ほら、早くこの壁をどかして…

りほ

……………っ

りほ

これ以上…これ以上、私の仲間を奪わないで!!

りほ

もう、その子を殺さないで…やめて、お願いだから…!

祓い屋

…………………

祓い屋

…今更かよ……

祓い屋

今更人間庇ってんじゃねぇよ!!

祓い屋

先に俺から奪ったのはそっちだろうが!!乞うたら許されるとでも思ってんのか?!

無夜?

………………やめて。

祓い屋

僕だってお前に奪われた、何もかも!だから僕も、お前から全て…!

無夜?

黙って!!!

祓い屋

……………っ!

りほ

…無夜………?

祓い屋

…っあぁ…なんだよ、お前!なんなんだよお前!!

祓い屋

お前まで僕の邪魔をするのか?!お前は人間のくせして、妖の味方をするのか?!

無夜?

あなただって、妖を殺してる。

祓い屋

あぁ、殺すさ!だってこいつらは、人間を殺───

無夜?

やめようよ、そんなの。

無夜?

相手を憎んで、相手を殺して、それでまた相手に殺される…

無夜?

そんなの、お互いに不幸にしかならない。

祓い屋

………………っ

無夜?

確かに…大切な人を殺されてしまったら、その相手を憎んでしまうかもしれない。

無夜?

でもその憎しみのせいで、ここにいる全員が…あなたまでもが、不幸になってしまう。

祓い屋

…うるさい……

無夜?

"私"はね、あなたに妖にも人間を襲う理由があることを知ってほしい。

無夜?

妖のみんなにも、人間が妖を嫌う理由を知ってほしい。

りほ

………………

無夜?

そしてお互いに、相手にしてしまったダメなことを謝りあって、仲直りする…

無夜?

そうすればきっと、みんな幸せになと思うんだ。

祓い屋

…っるさい!!

祓い屋

何が"仲直り"だ!そんな子供じみたことで、僕の憎悪が消え去るとでも思っているのか?!

祓い屋

僕は妖を祓う!妖という災厄を全て祓って、人間が安心して暮らせる世界を実現するんだ!!

りほ

……………祓い屋。

祓い屋

…っ、黙れ九尾!僕は今この女と話しをしているんだ、邪魔をするなら…!!

りほ

ごめんなさい!!

祓い屋

………………

祓い屋

……………は?

祓い屋

お前…今、なんて言った?

りほ

…ごめんなさい。

りほ

私は、あなたに…あなたたちに、とても酷いことをした。

りほ

謝って許してもらえるとは思ってない。

りほ

私は大切な人を殺された憎しみを、何も分かっていなかった。

りほ

自分の勝手で、たくさんの人間を殺してしまった…

りほ

…昔…あの子が殺されたとき、初めて私は大切な人が殺された憎しみを知った。

りほ

その憎しみで、私はあなたを殺した。

祓い屋

…………………

りほ

私があなたを、殺すほど憎んだのと同じくらい…

りほ

いや、きっとあなたはそれよりも、もっと重い憎しみを妖にもってる。

りほ

あなたに少しでも償うことができるのなら、私は殺されたっていい。

りほ

ほんとうに…本当に、ごめんなさい。

祓い屋

……………っ

祓い屋

いっ…今更!今更土下座して謝ったって、僕はお前を…!

りほ

…許さなくていい。

りほ

私が、謝っておかないと気が済まないだけだから。

絵魔

…僕も、ごめんなさい。

祓い屋

……………?!

絵魔

祓い屋のこと、ずっと恨んでた…でも僕も、人間にたくさん迷惑かけちゃってた…

しほらよぬら

…私も、人間のことを何も知らないで襲ったりして…ごめんなさい。

りほ

……みんな………

祓い屋

…っ、なんで…お前らは、なんで……!

なづ

おい、祓い屋。

祓い屋

っ、猫又?!お前、もう治って───!

なづ

よぬ姉の治療のおかげでね。

なづ

それよりも祓い屋、私もお前に謝る。

なづ

ただお前だって、私達の仲間何体も祓ってきただろうが。

なづ

私はそのこと、謝って欲しいんだけど。

祓い屋

……………っ!

祓い屋

あぁ、それだよ…なぜ、なぜお前たちは謝るんだ?!

祓い屋

僕は猫又の言う通り、お前たちの仲間をたくさん祓ってきた!!

祓い屋

お互いに憎んでいるから、僕らは殺し合うんだろう?!

無夜?

…そう、お互い様なんだよ。

無夜?

妖も、人間も、お互いに悪いことをして、お互いに憎みあってる…

無夜?

…でもそれだと、きっとみんな不幸になる。

無夜?

妖のみんなみたいに、悪いことをしてしまったのなら謝ればいい。

無夜?

なづみたいに、嫌なことがあったらそれを伝えればいい。

無夜?

そうすればきっと、妖と人間も分かり合うことができる。

無夜?

互いの憎しみは…特に、大切な人を殺された憎しみなんて、そう簡単には消えないかもしれない。

無夜?

でも…みんなで仲直りした方が、争うよりも幸せでしょ?

祓い屋

っ………………

祓い屋

(なんだ、こいつ…)

祓い屋

(昨日会ったときと、全く雰囲気が違う…まるで、別の誰かが話しているようだ…)

祓い屋

(…それに、あの赤は…あいつの妖術か?妙に惹き付けられる、あの瞳は…)

祓い屋

(…いや、違う…あれは妖術なんかじゃない…!)

祓い屋

(ただ単純に、純粋で、無垢で、綺麗で…だから、惹き付けられる…)

りほ

…………祓い屋。

りほ

私は…もう、いいんだ。

りほ

あの子と会って、無夜に会って…分かったんだ。

りほ

大切なのは、どう復讐しようかじゃない。

りほ

相手を理解して、相手とどう分かり合えばいいのか…それを考えることが、大切だったんだって。

りほ

昔の私達は、互いを理解しようとしなかった。あなたの過去だって、私は一切知らなかった…

りほ

だから私は今度こそ、あなた達のこと…人間のことを、ちゃんと知りたい。

りほ

だから…改めて、謝罪させてほしい。

りほ

本当に…本当に、ごめんなさい。

祓い屋

…………………

祓い屋

……………

祓い屋

………………僕も。

祓い屋

僕も…恨んでいたとはいえ、君たちの仲間を…妖を、何体も葬り去ってしまった…

祓い屋

…僕の方こそ、詫びさせて欲しい…本当に、申し訳ない…!

りほ

…これで、お互い様だね。

りほ

話を聞いてくれてありがとう、祓い屋。

祓い屋

…あぁ、こちらこそ。

無夜?

………………

無夜?

………………ふふっ

無夜?

よかった…仲直り、ちゃんとできた。

りほ

…………無夜……

りほ

…いや、今は無夜じゃないか。

少女

あはは、やっぱバレた?

少女

…久しぶりだね、りほ。

りほ

うん、久しぶり。数百年ぶりかな?

少女

…うん、そうだね。

少女

…私ね、ずっと心残りだったんだ。妖と祓い屋が、ずっと争っていたことが。

少女

でも…祓い屋も、妖も、話し合って、分かり合うことができた。

少女

だから私、今すっごく嬉しいんだ。

少女

…りほ、私の祓い屋と仲直りしたいって我儘、叶えてくれてありがとう。

りほ

…ううん、お礼を言うのはこっちだよ。

りほ

私達を幸せに導いてくれて…本当に、ありがとう。

少女

………うん!

少女

私も、これで成仏できそうだ。

少女

じゃあね、みんな。

りほ

…あ、ちょっと待って!

少女

………なぁに?

りほ

あなたの…あなたの、名前は?

少女

…あぁ、そういえば教えてなかったね。

少女

私の名前は─────

無夜

……ん………

絵魔

…あ、無夜!起きた!!

しほらよぬら

え、ほんと?!

なづ

おはよ無夜、よく寝れた?

無夜

………………

無夜

…え、どういう状況?

なづ

あ、記憶ない感じ?

絵魔

そらそうだよ、だってあの子が乗り移ってんだし。

無夜

乗り移ってた…?

無夜

…ってあれ、りほは…

りほ

ここにいるよ。

しほらよぬら

あ、りほおかえりー。

絵魔

どうだった?ちゃんと祓い屋と話せた?

りほ

うん。今までのことも、ちゃんと謝ってきた。

りほ

まあ、「全てを許す事はできない」って言われちゃったけど…

なづ

だろうね、私ら結構酷いことやらかしてたし。

絵魔

僕達だって、今までのこと全部許すつもりは無いしね!

しほらよぬら

まあまあ、仲直りできたのなら一旦おっけーっしょ。

無夜

…えなに、自分が寝てる間に祓い屋と色々あった感じ…?

りほ

…うん、色々あった。

りほ

色々あった上で、無夜に言いたいことがある。

りほ

私達ね、祓い屋と話し合って、謝り合って…もう争わないって、約束することができた。

りほ

今から他の妖にも、人間を襲わないでって話に行くつもり。

りほ

…それでね、本題はここから。

りほ

私達が仲直りできたのは、無夜のおかげだよ。

りほ

もし無夜がいなかったら、きっと今頃の私達は、祓い屋と殺し合いをしているところだった。

りほ

無夜が「争いじゃなくて話し合い」って言ってくれたから、私達も祓い屋も、誰も傷つかずに済んだ。

りほ

だから…改めて、ありがとう、無夜。

無夜

は、はぁ…どういたしまして……?

りほ

…あ、あとこの人も、お礼が言いたいってさ。

祓い屋

やあ、さっきぶりだね。

無夜

…あ、祓い屋の人!

祓い屋

…おや、もう先程の少女はいないのかい?

絵魔

あー…うん。多分もう、成仏したと思う。

祓い屋

そうか…彼女にも礼を言いたかったが、仕方がないな。

祓い屋

…さて、君は…無夜君でよかったかな?

無夜

あ、えっと…はい、無夜です。

祓い屋

無夜君。君が、僕達の話し合いを提案してくれたらしいね。

祓い屋

僕達の争いを止めてくれたこと、本当に感謝しているよ。

祓い屋

そして…昨日といい今日といい、君のことを殺めようとして…本当に、すまなかった。

無夜

………………

無夜

…え、自分のこと殺そうとしてたんすか?!

しほらよぬら

気づいてなかったの?!

無夜

いや、祓い屋って妖をやっつけるもんじゃないの…?

無夜

…って、妖を祓うのも自分を殺すのもやめて欲しいけど!!

祓い屋

す、すまない…

無夜

…………まぁ、

無夜

別に殺されたわけじゃないですし、今その気が無いならいいっすよ。

無夜

ただ、もう殺そうとか考えんといてくださいよ?!怖いっすから!!

祓い屋

………………

祓い屋

…許して、くれるのか?

無夜

え?いや……

無夜

…確かに、殺そうとしたことは許したくないっすけど…

無夜

みんな争い無くなって嬉しそうだし…みんなが幸せなら、それでいいかなって…

祓い屋

……………!

祓い屋

……………

祓い屋

…っ、ははは!いやぁ、凄いな…

祓い屋

生まれ変わった別人のはずなのに、まるであの少女とそっくりだ。

なづ

あなたも相当そっくりだけどね。

祓い屋

おや、そうかい?

祓い屋

…まぁ、兎にも角にも…

祓い屋

僕を認めてくれたこと、心から感謝するよ。

祓い屋

しかし…君に迷惑をかけてしまったことに変わりは無い。

祓い屋

だからせめて、何か一つだけでも償いをさせて欲しい。

祓い屋

何か僕に、できることはないかい?

無夜

えぇ?えっと……

無夜

…それじゃあ……

それから、数週間が経った

その頃にはもう 祓い屋と妖は完全に和解し 互いに助け合いながら過ごしていた

そして祓い屋は、赤目の娘への 償い…もとい娘からの頼み事を 今でも遂行しているそうな

しほらよぬら

ねね、今日は鬼ごっこしようよ!

なづ

また鬼ごっこ?飽きないの?

無夜

まあ、ここWiFiないしそれくらいしか遊ぶ方法ないからね…

絵魔

じゃあさじゃあさ!あっちにお人形さんあるし、それで遊ぼうよ!

無夜

あれで遊ぶの?!あの超怖い日本人形で?!

絵魔

…そんな怖い?

無夜

あ、いや…うん、いいよ!遊ぼう!!

絵魔

やったー!!

りほ

………………

祓い屋

随分と賑やかだね。

りほ

あ、祓い屋。今日も遊びに来たの?

祓い屋

あぁ、償いだからね。

祓い屋

しかし…償いの内容が、「毎週最低一日は神社に訪れて、妖達と戯れること」だとは…

りほ

あはは…まぁ、無夜なりに考えた妖との和解方法なんだろうね。

りほ

…いや、それにしても…

りほ

祓い屋、随分と妖に好かれるようになったんだね…

祓い屋

あぁ、この妖達のことかい?

りほ

うん、その…祓い屋に抱きついてる、子どもの妖達。

祓い屋

実はここに来る途中に、見える人間が珍しかったのか妙に懐かれてしまってね…

祓い屋

連れてきてはいけなかったかい?

りほ

いや、それは全然いいんだけど…

祓い屋

…確かに、僕は元々妖を祓い回っていたからね。

祓い屋

僕自身も、まさか妖から好かれるとは思ってもみなかったよ。

祓い屋

…でも、別に悪い気分ではないかな。逆に仲良くできて、とても嬉しいよ。

りほ

…それはよかった。

…あれ、お兄さん来てたの?

ほんとだ!ねえねえ、一緒に遊ぼ!!

祓い屋

おっと…あぁ、もちろんいいよ。

もちろん、りほも遊ぶよね?

りほ

…うん、一緒に遊ぼ!

少女

……………ふふっ。

少女

みんな、元気そうでよかった。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

5

ユーザー

遅れててもこれすごいから例え半年だったとしても全然許してた() あそこだけの話で前後作れるとかまじで発想力が凄いしうちの作品のところも少し入れてくれたりしてて本当に良い。人間と妖の仲を取り持つ存在を無夜(少女)にして話のつなげ方がめっちゃ上手。うち続編作ってもこれを超えられる気がしない…とりあえずほんとにありがと!!!長文ごめん

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