mrpk

距離が遠いからはっきりとは聞こえないけれど、多分告白だ。

しかし、あの女もよくやるな。

告白されてるあの人って、今まで告白にOK出したことないんだろ？

玉砕するのは分かっているはずなのに、そんな勇気はどこから出てくるんだろうか…

最悪だ。

まともに学校来てないし授業受けてないから、今日補習があることは分かっていたけど。

まさかこの人も一緒だなんて…

勉強できるわけじゃないのか？ スポーツが大得意とか？

でも体育祭とかでも活躍してるわけではなかったはず。

まぁ1年の時の1回きり体育祭は行ってないから分かんないけど…

…言っちゃ悪いけど、見た目もカワイイ系で好み分かれそうなのに、なんであんなモテるんだろうか。

別に嫉妬とかではない。ただの純粋な疑問だ。

なにかに驚いた様に声を上げる。

なんかわたわたしてるけど。 僕はここで声をかけるほどお人好しじゃないから、黙って自分の課題に集中する。

自分で言うのもなんだが頭はいい方なので、特に勉強しなくてもテストは点数取れてたし、授業受けなくても教科書1回読めば大体理解出来る。

遂に声をかけてきたか。 声はあまり聞いたことがなかったから記憶になかったけど、こんな高い声してたのか。

変におどおどしている。 そんなに怯えなくても、何もしないし。

でも、こういうタイプはここで優しくすると調子乗って距離を詰めてくる。 だからあえて冷たく返事する。

目をキラキラさせて答えてくる。 まるで子供。

冷たくするとは言ったが、自分の疑問を解消するためには話してもいいだろう。

なんでこんなびっくりしてんだろ。

…あまり触れてはいけなかったか？

まぁそんなこと知ったこっちゃないので、とりあえず視線を送ってみる。

在り来りな回答。

学校一のモテ男くん、らしいから、こういう質問でもさらっと躱すことができるのか。 それとも、本当に作る気がないだけなのか。

ま、どっちでもいいけど。

あはは、と悲しそうに笑う。 ただ無邪気で、考え無しの頭お花畑だろうなーとか思ってた。 だけど違った。誤解していた。 見た目からして子供っぽいが、相手のことを考えられるちゃんとした子じゃないか。

羨ましい。

人にそう言われたのは別に初めてじゃなかった。

元々勉強は出来て、中学では澄まして生活していた。 そのせいで、嫉妬からの…嫌がらせが始まった。 人に関わるとろくなことがない。そう感じた。

だから高校に出るかどうかも正直悩んでいた。

蓋を開けてみれば、僕に興味がある人なんていないわけで。

思ったより気が楽だった。

…その分、誰にも期待されなかった。愛されなかった。

｢あいつはこっちが何もしなくても出来る｣

周りの奴らは放任主義ばかり。それが当たり前になっていて、いつしか愛されるということすら忘れていた。

僕に勝てていないくせに人に愛される。

僕はそんな君が羨ましい。

…妬ましい。

余計なことを考えたせいで集中が途切れたので、手でペンを回し始める。

話すだけ無駄だった。

ただ無性に腹が立った。

そう感じるのに、未だにこの子が気になっているのはなんでだろうか。

…この子には、人を惹きつける才能があるんだろうな。

なんで僕が他人に合わせなきゃいけないんだ。

さっきまでの僕ならきっとそう言っていた。

だけど、今は。

この子に諭された僕は。

久しぶりに、他人の前で笑えた。

あぁ、ほんとに、どこまでも一途で純粋だな。

僕とは大違い。

能天気に喜んでいる。

…今なら、あの告白していた女の子の気持ちが分かる。

僕、こいつ好きかも。

今まで人に愛されず愛さなかった僕にとっては、まだ曖昧で漠然とした気持ちだけど

この気持ちを確かめるくらいには

この子に関わってみてもいいなって思った。

僕に気に入られたからには、覚悟しててね。

学校1のモテ男くん。