夢を見た
私が小狐だった頃の夢──
当時ニンゲンたちが住む世界──うつし世のある森に棲んでいた
小狐
好奇心が抑えられず森を飛び出した
外の世界は刺激的で、森の中しか知らなかった私にとってとても新鮮だった
そして近道をしようと、少しひらけた広野(こうや)に出た
ひゅっ
小狐
私の手前で矢が地面に刺さった
一瞬固まってしまったが、慌ててその場から走り去る
ひゅっ
次の矢が私にめがけ飛んできた
すんでのところで躱し、入り組んだ草木を利用して必死に逃げる
あとから知ったがあの広野はニンゲンたちの狩猟場だということがわかった
どん
小狐
逃げた先で何かにぶつかった
?
?
真っ赤な髪のニンゲンが視線を向けてくる
?
小狐
もうダメだと思った
後ろから足音が近づいてくる
恐怖で体が震えた
?
真っ赤な髪のニンゲンは優しく私を抱きかかえ、草むらの中に隠した
?
数名の小姓がやってきた
小姓
小姓
?
小姓
きょろきょろ
小姓
?
?
小姓
?
?
小姓
小姓
小姓
小姓
喧嘩腰に突っかかる小姓をほかの小姓たちが止めに入る
小姓
殺気立っていた
?
?
小姓
小姓
ひとりの美丈夫が現れた
小姓
顔が真っ青になる
?
碧
吐息をした
碧
碧
小姓
碧
冷たい視線を向けられ押し黙る
そして小姓たちはその場から下がっていく
ふたりっきりになると──
碧
?
碧
腕を回し抱擁をする
?
碧
緋沙
緋沙
碧
緋沙
緋沙
碧
碧
碧
緋沙
碧
唇を耳元に寄せ囁く
碧
緋沙
ふたりは狩猟場を後にした
ニンゲンたちがいなくなるとようやく出てこれた
どこもケガはなく、ほっとする
小狐
あの真っ赤な髪のニンゲン──緋沙といったっけ──はもういない……
小狐
忘れないよう胸に刻んだ
タキ(妖狐)
ゆっくりと上半身を起こす
タキ(妖狐)
お礼を言わなきゃと思い、あちこち探したが会うことはなかった
あれから数十年以上は経っている
タキ(妖狐)
生きてるのか死んでいるのかさえ、わからない──
花びらがひらひらと舞っていた
タキ(妖狐)
思わず手のひらで受け取り三日月の光に照らされる
タキ(妖狐)
季節はすでに秋だ
桜が咲いているはずはない
それでも花びらはひらひら舞う
タキ(妖狐)
タキは立ち上がり導かれるように花びらの方へ向かっていく
そこには──
満開の桜と彼岸花が咲いていた
タキ(妖狐)
驚きのあまり呆然となる
そして、桜の下に“真っ赤な髪のニンゲン“がたたずんでいた