凪流
『もしもし』
洸
『なっちゃん…』
先輩の声が弱々しく聞こえるのは
気のせいなのかな
凪流
『どったの?』
洸
『話したい事あって』
洸
『外で話そっか』
凪流
『分かった』
凪流
『どこへ行っt…』
洸
『なるちゃんの家の前』
凪流
『え、ちょっ』
洸先輩の話したい事って
なんだろう
言わなきゃ…
彼女を傷つける事になる
凪流
あ、洸先輩っ!
洸
なっちゃん…
凪流
話って?
洸
なっちゃんの事大好きだよ
言うんだ
傷つく前に
凪流
う、うん…
洸
ごめん
凪流
えっ?
洸
別れよ
凪流
な、んで…
ごめん
幸せになって欲しいから
俺といれば…
一緒にいたら君が傷つく
洸
最後に
彼女のふわっとした唇に
優しくキスをした
顔が赤く染っていく
そんな君が愛おしい
洸
幸せになって…
◇
◇
◇
洸
本当は別れたくなかった
洸
でもこうするしか…
洸
俺があと少しで
洸
死ぬなんて君には
洸
絶対に言えないから
こんな形でしか
愛情表現できなくて
ごめん
大好きだよ
俺に幸せな時間をくれて
ありがとう。なっちゃん
洸先輩と別れてから
ー3日後ー
洸 母
川崎 凪流さん?
凪流
はい。
洸 母
洸の母です
凪流
あの、洸先輩は?
洸 母
………。
険しい表情になっている
不味いこと聞いちゃったかな
洸 母
昨日亡くなりました
凪流
っ!!!
えっ?
洸 母
私は洸の願いを
洸 母
叶える為にここに来ました
先輩の願い…
洸 母
洸が死ぬ間際にこんな事を
洸 母
言っていました
洸 母
『俺はこんな形でしか』
洸 母
『愛情表現ができない』
洸 母
『こんな先輩でごめんな』
洸 母
この言葉を遺して
洸 母
逝きました
凪流
洸先輩は
凪流
病気だったんですか?
洸 母
その様子だとあの子は
洸 母
何も伝えていないのね
凪流
………。
洸 母
15の時に余命宣告をされた時
洸 母
あの子はどん底に落ちてた
洸 母
最近、病室で
洸 母
貴方の事しか喋らないから
洸 母
聞いているこっちが
洸 母
楽しかったわ
先輩…そんな風に
思ってくれてたんだ
洸 母
私が伝えたかったのは
洸 母
洸は貴方を嫌いじゃなかった
洸 母
寧ろ本当の事を話すと
洸 母
心配するからって
洸 母
言えなかったらしいの
私が心配性だから…
私を心配させないように
わざとあんな嘘を……
洸 母
洸は貴方の事が大好きだった
洸 母
洸がいた事を忘れないでね
凪流
あ、ありがとうございますっ!
洸 母
いいえ。こちらこそ
洸 母
あの子に大切な人が出来て
洸 母
良かった。じゃあまた。
凪流
洸先輩っ
凪流
あの日優しいキスをしたのは
凪流
別れの挨拶だったんだね
凪流
洸先輩の事は忘れない
凪流
洸先輩はいつだって
凪流
私を助けてくれるって
凪流
信じてるから
洸
『なっちゃんの傍にいるから』
End.
変な終わり方になりましたが、
この話は完結です