雪華(13)
お邪魔します

叶奏(13)
おー、雪華。いらっしゃい

雪華(13)
ごめんなさい、突然押しかけてしまって。

叶奏(13)
いーよ、全然。

叶奏(13)
なんかあったんでしょ?

雪華(13)
ええ、妹のことで。

叶奏(13)
妹ちゃん?

雪華(13)
妹には、彼氏がいますの。

叶奏(13)
へぇ〜、ませてんね

叶奏(13)
まさか、雪華もその妹の彼氏が好きだったりした?

雪華(13)
え?

叶奏(13)
あ、ごめんごめん。冗談だよ

雪華(13)
なんで分かりましたの?

叶奏(13)
え、マジで言ってる?

叶奏(13)
マジかぁー、まさかリアルでそれに出会うとは思わなかった

雪華(13)
まぁ、別に最初から譲るつもりでしたから、それはいいの。

雪華(13)
話戻しますけど、妹と彼は、5年生の頃から両思いでしたのよ。

叶奏(13)
なかなかだなぁ

雪華(13)
でも、6年生に上がる頃に、彼の方が遠くに引っ越すことになって

叶奏(13)
遠距離恋愛ってことか。

雪華(13)
そうですわね。ですが、今年の春から、こちらの方に戻ってくるんですって。

叶奏(13)
へえ〜、良かったじゃん。

雪華(13)
ですわよね?でも、雪ちゃんはあまり気が進まないんですって。

雪華(13)
理由を聞いてみたら、会っていた頃と今で雰囲気がガラッと変わってしまって、『前の方が良かった』って思われるのが嫌だって言い出しましたの

叶奏(13)
あ〜ね?

叶奏(13)
ちなみに、その彼ってどんな子?

雪華(13)
大人しくて、誰にでも優しい感じで、かわいい系ですわ。

叶奏(13)
刺さる人には刺さるやつだ

雪華(13)
実際私は刺さりましたもの

叶奏(13)
やっぱ双子だね

雪華(13)
そこまで似るとは思いませんでしたわ

叶奏(13)
でもカワイイ系でも、実は腹黒系は地雷だわ。カワイイを貫いて欲しい派。

叶奏(13)
ほら、アレだよ。悪役が出てきて、倒した後に少し悪役のグロ重過去が出てきて、お涙頂戴するやつ

叶奏(13)
アレほんとに嫌い、重い過去があっても悪いことしたことに変わりないし、中途半端に同情を欲すんなよ。悪ならずっと悪を貫けってんだ

雪華(13)
それはよく分かりませんけど、彼は腹黒ではありませんわよ。ピュアの塊ですわ

叶奏(13)
何その絶滅危惧種

雪華(13)
それで、彼なら大丈夫だって言っているのに、『お姉ちゃんは恋愛した事ないから分かんないんだよ』って言われちゃいましたの

叶奏(13)
うわ、だっる

叶奏(13)
喧嘩売ってるでしょ雪華の妹

雪華(13)
ま、まぁ私が彼を好きだったのは貴方以外誰も知りませんし、仕方ありませんわ

叶奏(13)
そうかもだけど、言っていいことと悪いことあるじゃん

叶奏(13)
雪華は仕方ないって口では言ってるけどさ、実際はどうなの?

叶奏(13)
今はアタシしか居ないんだし、気にしないでよ。

雪華(13)
叶奏……

雪華(13)
そうね、せっかくここにお邪魔させて頂いてるんだもの。

叶奏(13)
無理だったら全然いいけどね。話したくなったらそれで

雪華(13)
いえ、貴方になら話します

叶奏(13)
そっか、じゃあ聞く

雪華(13)
正直、私の何が分かるのって思いましたわ。

雪華(13)
あの子だって、私が彼のことを好きだってこと知らなかった

雪華(13)
だから、あの子には1番言われたくありませんでしたわ

叶奏(13)
そりゃそうだよ。

雪華(13)
あの子が彼に会う気がなくて、もしくは、会ってあの子が彼に嫌われた時。私が今度は彼の隣に入れたらなんて考えちゃったのよ

雪華(13)
私が雪ちゃんに譲るって決めていたのに、雪ちゃんが今悩んでる時に、チャンスだと心のどこかで思っている私が本当に気持ち悪いの

話しているうちに、自分が嫌な人だと自覚させられて、心の中が荷造りが住んだ部屋みたいに虚しく、寂しく感じた。
叶奏が私にティッシュを差し出して『遠慮なく使ってくれていいから』と言ってくれたことから、私は初めて自分が泣いていることに気が付いた。
泣いていると気付いてから、私は泣く資格なんてないのにと必死に自分に言い聞かす。しかし、涙が止まらなかった。
ティッシュを使わず、手で必死に顔を擦る私の手を取って、叶奏は口を開いた
叶奏(13)
雪華、今あんま良くないこと考えてんでしょ

雪華(13)
えっ……?

叶奏(13)
アタシの勘だけど、『今の私に泣く資格はない』とか、『なんで私が泣くの』とか思ってない?

雪華(13)
……叶奏には、隠し事は出来ませんわね

叶奏(13)
ほら、そんなに顔擦ったら、あんたの綺麗な顔に傷がついちゃうから、ティッシュにしといて。

叶奏(13)
雪華が気にしなくても、アタシがヤなの

雪華(13)
……ごめんなさい

叶奏(13)
ごめんじゃなくて、ありがとうの方がもっといいかも

雪華(13)
あ、ありがとう

叶奏(13)
よく出来ました

叶奏(13)
……まぁ、アタシはまだ彼氏とか出来たことないから、役に立つことは言えないと思うけど、別に無理に応援しなくてもいいんじゃない?

叶奏(13)
そりゃ応援することは、すごい事だと思うけど。それで雪華が辛い思いするなんてアタシはヤダなって。

叶奏(13)
まぁ、アタシが自信もって言えるのは、どんな結果になろうと、アタシは雪華の味方だかんね。それだけ忘れてないでよ?

雪華(13)
叶奏の事を忘れるなんて有り得ませんわよ

叶奏(13)
それもそっか

雪華(13)
叶奏

叶奏(13)
うん?

雪華(13)
ありがとう、あなたのおかげで楽になりましたわ。

雪華(13)
貴女に話して良かったわ。もし、またこういう事があったら、話を聞いて下さらない?

叶奏(13)
アタシが美人の頼みに弱いって雪華知ってるでしょ?

雪華(13)
叶奏ったらまたそんなこと言って

叶奏(13)
いやホントホント

叶奏(13)
それに、雪華の話ならいくらでも聞くに決まってんじゃん

雪華(13)
それもそうですわね、ありがとう。

雪華(13)
そろそろ夕食なので帰りますわ。

叶奏(13)
うん、気をつけて帰るんだよ

雪華(13)
ええ、ごきげんよう

叶奏(13)
ごきげんよう
