ジェーン・ドウの偽言

皆が兵に注目を向ける中、 マガツキのため息と静かな声が響く。

部屋の全員が身構える。 兵は荒い息のまま、 絞り出すような声で言った。

強風が運ぶ火の熱気に顔をしかめる。

運悪く強風の日だとは言っても、一軒二軒のボヤから広がった火災の規模ではない。

"複数箇所への意図的な放火"による火災であることは間違いなかった。

加えて、ルストはそれを先の襲撃と繋げられないような馬鹿の集まりではない。

燃え盛る炎を前に、 オミズから呟きが溢れた。

オミズは頷き、切り替えるように 長く息を吐くと、 メンバーのほうへ向き直る。

【陰陽:使役(ﾊﾟﾍﾟｯﾄ)】 紙でできた形代を意のままに操る。 シンプルだが非常に使い勝手が良い。 一度損傷してしまうと、 形代は使用できなくなる。 (損傷とは、形代が破れる、燃えるなどで欠損することを指す。)

【陰陽:五行(ﾙｰｽﾄﾞﾘｰﾑ)】 火、水、木、金、土の五行を操る。 一度に操れる上限は二つだが、 普段は一つにセーブしている。

【技師：改造(ｶｽﾀﾑ)】 触れた素材の形を自由に変化させる。 イメージが固まっていないと、 曖昧な部分が生成されず不良品ができる。

火に包まれた家を壁で 完全に囲ったのを確認すると、 2人のハイタッチの音がこだました。

その頃、拠点内では…。

「何か自分にもできることはないか」 そう尋ねると、怪我で療養中のアミさんの穴を埋めるために厨房に案内された。

普段からアミさんが担っている作業は桁違いの量なようで、厨房は大忙しだった。

それでもなんとか、 お昼に間に合わせたものの、 私含め調理員たちは息も絶え絶えである。

誰もいないのに、何かに担がれている。

姿の見えない何者かに、 とにかくできるだけの抵抗をする。 しかし、せいぜい怯む程度で 降ろしてもらえそうにない。 しかも…。

To be continued—