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もしも、叶うなら。

5 - 雨が降る

♥

861

2021年12月23日

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りいぬは遅れて学校に 来るらしく僕は珍しく1人で登校した

教室に入ると数人のクラスメイトが既にいて、僕を見てすぐに近づいてきた

今まで僕を無視していたのに 唐突に話しかけられ、 反射的に1歩下がった

生徒

今までのこと本当にごめんなさい

僕の前で頭を下げた

生徒

許して欲しいなんておこがましいこと言えないけど、許してもらえるまでるぅとくんの言うこと何でも聞くしちゃんと償います

泣きそうな顔で僕を見つめてくる

あの時睨んできた人が こんな顔を僕に向けるなんて 誰も想像していなかっただろう

ななもり先生に どんな叱りを受けたのだろうか

ここまで反省させるなんて 本当に恐るべき人だ

るくん

僕は、ただ...

るくん

罪を償ってほしいなんて思ってないし、君みたいに誰かこき使う気もさらさらない

るくん

でも強いて願いを聞いてくれるなら

ひとつだけ約束して欲しいことがあった

生徒

なんでも聞きます!!

るくん

もうりいぬのことを傷つけるような真似はしないで欲しい

生徒

そんなのは当たり前です。

生徒

本当にごめんなさい

彼女は頭を下げ続けた

困りかねた僕は もういいからと一言告げ 自席に戻った

人が変わったように みんなが優しくなった

今日一日誰かに睨まれることも悪口を言われることもなかった

逆に慣れず、 夢の中なのではないかと ほっぺたをつねるが 痛くて赤く腫れている

るくん

...夢じゃない

確かにこれは現実で 夢みたいに幸せだ

みんなにとっての当たり前が こんなに幸せだなんて知らなかった

りくん

るぅちゃん...俺居残りくらった

るくん

今日遅刻しちゃったもんね...笑

りくん

ななもり先生許してくれないかなぁ

そんな僕の横で りいぬは不幸に見舞われていた

りくん

じゃ、行ってくる!!
待たせてほんとごめんね!!
すぐ終わらせてくる!!

るくん

ゆっくりでいいよ笑

りくん

申し訳ないっ

りいぬは反省文を片手に 職員室に走って行った

少なくとも15分は戻って来ないと思い、僕は無意識に音楽室に向かっていた

るくん

え、なんでいるんですか!?

音楽室のドアを開けると 待ってましたと言わんばかりに ピアノの椅子にころん先生が座っていた

こ先生

るぅとくん!!

嬉しそうに近づいてきて ハグをする

るくん

ちょ、先生...
誰か入ってきたら大変ですよ

こ先生

だって...

ころん先生は頬を膨らまして 上目遣いで僕を見つめる

こ先生

今日僕のこと避けてたでしょ

るくん

えっ...

こ先生

お昼だって音楽室で待ってたのに来なかったし、廊下で見かけたのに走ってどっか行っちゃうし...

涙目で肩を落とし 明らかに落ち込んでいた

るくん

それは...

確かにころん先生の 言っていることは正しかった

昨日流れでキスしたことが すごく恥ずかしく思えてきて 今日は避けていた

るくん

昨日のこと...恥ずかしくなっちゃって

言葉にするのも恥ずかしい

きっと僕は今 顔を真っ赤にしているだろう

余計先生の顔が見れない

こ先生

え...
なんで学校でそういうこというの

るくん

どういう意味ですか??

こ先生

そんなん言われたら
イタズラしたくなっちゃうじゃん

ころん先生はさっきの涙目が嘘だったかのようにイタズラな笑みを浮かべている

いきなり腕を捕まれ、 壁に追いやられる

るくん

せ、先生...

こ先生

ん??

こ先生

どしたの

るくん

ち、近いです...

くちびるが今にも触れてしまいそうなほど近くて僕の体温はどんどん上がっていく

こ先生

ほら、ちゃんと目みて

ころん先生はいたずらっぽく笑って意地悪なことを言ってくる

るくん

もぅ、ばか!!

僕なりの反発をする

こ先生

先生に向かってバカは
だめじゃない??

ころん先生は僕の顔を 手で包む

るくん

...ご、ごめんな...さい

僕は抵抗できなくなる

どんどん顔が近づいてきて 僕は目を瞑った

こ先生

ふふっなんてね〜!!

ころん先生は手を離し、 満面の笑顔を見せてくる

るくん

え、

僕は状況が掴めず困惑する

こ先生

僕、仕事戻るね!!

まるで何も無かったかのように 荷物を持ってドアに手をかけた

僕は放心状態で 突っ立っていた

すると、ころん先生は 僕を見て耳打ちをした

こ先生

学校でキスなんかしないよ((コソ

こ先生

もしかして期待した??笑

るくん

してません!!

僕は恥ずかしい気持ちを隠すためにピアノの方に向かった

こ先生

もぅ、可愛いなぁ

頭を2回ほどぽんぽんと 撫でて音楽室を出ていった

るくん

先生...ずるい

僕の気持ち弄んで 本当に意地悪な人だ

教室に戻ると りいぬとさとみ先輩がいた

やけに緊張した空気が 伝わって僕はすぐドアに隠れた

りくん

さ、さとみ先輩...

さ先輩

ん??

りくん

俺、言いたいことがあって...

りいぬはドアに背を向けて立っているので後ろ姿しか見えないが震えていた

きっとこれから 気持ちを伝えるんだ

すぐに察した

さ先輩

俺もある

りくん

えっ

さ先輩

この前、りいぬが言ってた映画まじで面白かった!!

りくん

はぁ...

りいぬはため息をついた

きっと呆れた顔をしているだろう

さ先輩

ははっ笑笑
そんな呆れた顔すんなって笑笑

りくん

俺が話したいことは真剣なんです!!

さ先輩

分かってるよ、付き合って

りくん

え...今、なんて??

さ先輩

俺、りいぬのことが好き
だから、付き合ってほしい

りいぬはさとみ先輩にとびついて 泣いて喜んでいた

さ先輩

ははっ可愛い笑

さ先輩

で...返事は??

りくん

俺も好き!!付き合う!!

良かった、りいぬが幸せになって

今日は2人で帰りたいだろうと思い、 りいぬにLINEを送った

りくん

あ、るぅちゃんからLINE!!

さ先輩

なんだって??

りくん

...先生と話すことあるから先帰っててって

さ先輩

そうか...じゃ、帰ろーぜ

りくん

うん!!

楽しそうな2人を見届けて その場を去った

僕は屋上に向かった

るくん

うわぁ、きもちー

景色を眺めながら 伸びをした

風がふわっと吹き 前髪を揺らす

るくん

あ、2人だ

下を見ると2人が歩いているのが見えた

しっかりと手を繋いで 楽しそうなのが離れていても分かる

るくん

告白なんて初めて見たなぁ…

あの緊張感や空気感は 体験したことがなかった

るくん

僕にはあんな勇気ないや

そういえば

キスもハグもしたのに 告白はしてないしされてない

ころん先生ってやっぱり 遊び人なのかな

生徒から人気があることで最近はあまり良くない噂を耳にするようになった

女好きや遊び人、たらしなど

るくん

そんなはずないっ

そう信じていたけど 心のどこかで疑う自分がいる

さっきの音楽室でのこともあり、不安は大きくなっていった

るくん

あ、雨だ

急に雨が降り出す

僕の心のようで 少しだけ濡れたままでいた

荷物を教室から取り、 靴箱で靴を履き替えた

るくん

はくしゅんっ

雨に濡れたせいで 寒気が増した

るくん

傘、忘れちゃったな

少し待っていれば やみそうなきがしたので 玄関で待つことにした

な先生

あれ、こんなところで寒くない??

偶然通りかかった ななもり先生が話しかけてきた

な先生

え、濡れちゃってる!!
風邪ひいちゃうよ

先生は羽織っていた ジャケットを僕にかけた

るくん

大丈夫ですよ!!
先生が風邪ひいちゃいます

すぐに返そうとすると いいのいいのと言って 頭を撫でてきた

な先生

あ、ちょっとまっててね

ななもり先生は走って どこかへ行ってしまった

るくん

ふふーん、ふーん♪

僕は好きな曲を口ずさんで 雨が止むのを待っていた

こ先生

あれ、帰ってなかったの??

るくん

あ、ころん先生

こ先生

傘、ないの??

るくん

はい...

こ先生

僕の貸すよ、ちょっと持ってくる

るくん

あ、大丈夫ですよ

るくん

もうすぐやみそうだし

るくん

もしやまなそうなら
学校の借りるんで

こ先生

そっか!!

こ先生

じゃあやむまで僕もここにいよっかな

るくん

え、お仕事ないんですか

こ先生

そんな心配しなくて大丈夫だよ笑

本当はこんなことが聞きたいわけじゃない

僕の心のモヤモヤ晴らしてほしい

るくん

ころん先生って

るくん

僕のこと...

たった一言なのに どうしてこんなに言葉が詰まるのだろう

こ先生

るぅとくんのこと??

な先生

あれ、ころん先生もいる!!

るくん

あ、ななもり先生!!

ななもり先生は暖かい ココアを僕に渡してくれた

そして大きなバスタオルで 僕の髪を拭いて 体を包んだ

な先生

体冷やしちゃだめだよ

な先生

あ、でもあんまり生徒にプレゼントするのって良くないからこのココアはみんなには内緒だよ

るくん

ありがとうございます☺️

ななもり先生のココアは いつも飲むココアよりも 暖かくて体がじんわりする

るくん

...おいしい

な先生

良かった!!

な先生

良かったらこれ、ころん先生も

もう一本のココアを ころん先生に差し出す

こ先生

え、いいんですか!?
いただきます☺️

嬉しそうに受け取る

な先生

なんの話ししてたの??

るくん

えっと...

僕のことどう思ってるか ころん先生に聞くところでした なんて言えるはずがない

こ先生

るぅとくん、ピアノ上手いの
羨ましいって話してました

な先生

あ〜、るぅちゃん本当に上手いよね

るくん

いや、そんなことないです...

ポーカーフェイスで 2人は嘘をついた

少し時間が経つと 雨がやんだ

るくん

あ、晴れてきたので
僕は帰ります

な先生

うん!!気をつけてね〜

こ先生

またあしたね!!

るくん

あ、このジャケット

ななもり先生にジャケットを返そうとすると、僕の体が濡れていたせいで少し濡れてしまっていた

るくん

濡れちゃった...

な先生

あ、大丈夫だよ!!笑

るくん

タオルは洗って返します!!

な先生

いいのに〜

な先生

でもまだ濡れちゃってるからくるまって帰りな笑

るくん

はい!!笑

ななもり先生は僕の頭を優しく撫でて手を振った

るくん

さよなら👋🏻

僕も手を振り返して 2人を見ると ころん先生の顔が少し暗かった

るくん

結局...聞けなかった

僕も遊ばれてるのかな

たかが噂にこんなに 振り回されて

バカバカしい

でも、それくらい 好きなんだろう

いつもならこんなに 悩むことないのに

ころん先生のことになると 不安になって 心が苦しい

こ先生

るぅとくん!!
待って!!

後ろから僕の大好きな声が 僕の名前を呼んだ

るくん

ころん先生!!

思わず笑顔になって 振り返る

そこには僕の大好きな人が 息を切らして立っていた

こ先生

さっきの話の続きちゃんと聞きたくて

こ先生

るぅとくんなんか悩んでそうだったから

まっすぐに僕を見て 真剣な顔をする

るくん

それは...

僕のことどう思ってますか

なんて聞いたら重たいかな

ただの僕の勘違いで 生徒としてしか見てないなんて 言われたらどうしよう

考えれば考えるほど 聞くのが怖くなる

こ先生

るぅとくん??

るくん

やっぱり、なんでもないです!!

るくん

大したことじゃないんで

言えない

怖くて仕方ない

関係が気まづくなったら 明日から学校なんか行けない

こ先生

そんなはずないでしょ

ころん先生は僕を抱きしめる

いつもなら嬉しいハグも 今は不安になる種だ

そのせいで抱きしめ返すことは 出来なかった

こ先生

雨晴れたのにさ
僕の心はモヤモヤしてて

こ先生

全然晴れないや

こ先生

ななもり先生と仲良さそうなるぅとくんの笑顔見たら心がチクチクしてさ

こ先生

言っちゃいけないこと
言っちゃいそうになったんだ

るくん

言っちゃいけないこと??

こ先生

るぅとくんが卒業してからじゃなきゃダメなんだ

こ先生

でもこんなハグもキスも
我慢できなかったし...

こ先生

ちゃんと言ってなかったけど
僕、るぅとくんのことが好き

るくん

こ先生

独り占めしたいくらい好き

るくん

それ、僕のセリフですよ

一気に心が軽くなって

幸せが僕を満たしていく

るくん

遊ばれてるかもしれないって

るくん

少し不安になってました

こ先生

やっぱり...

こ先生

なんか変な噂聞いた??

こ先生

この前告白してくれた子がいろんな噂流してるらしくてさ

るくん

ごめんなさい

るくん

根拠もないのに信じちゃったりして...

こ先生

ううん、曖昧な態度してた
僕が悪い

こ先生

でも、これからは信じてほしいな

るくん

もちろんです

こ先生

好き

るくん

僕もです

こ先生

好きだから不安になっちゃうよね…

僕の手を強く握ってくる

るくん

じゃあいっぱい不安になって下さい

僕はその手を握り返す

るくん

もっと好きになってください

こ先生

言われなくてもなってるよ

いつの間にか 僕の心には虹がかかっていて 夢みたいな気分だった

るくん

僕、雨好きになりました

こ先生

なんで??

るくん

雨が降ったらころん先生が迎えに来て、虹をかけてくれるからです

こ先生

今度は内緒でひとつの傘で
一緒に帰ろうね

るくん

はい!!

僕は嬉しくなって 抱きついた

こ先生

僕はるぅとくん専用の晴れ男だから

るくん

ふふっ笑笑

ちゅっ

不意打ちのキスに ころん先生は目を丸くする

こ先生

るぅとくん!?

るくん

僕、音楽室でキスすると
思って期待してました

るくん

弄んだ罰です

いたずらげに笑って 先生に手を振って 僕は家まで走った

ころん先生は気が抜けたように その場に固まっていた

たらしなんて大嘘だと 改めて感じた

もしも、叶うなら。

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