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ユーリ

では、学校帰りに向かいます

ユーリ

学校の名前と、何時に終わるか、教えてくれますか?

小紅姫

わかったよ……!

ユーリの救い出す、という言葉に夢を見て、つばきは言われるがままに全てを話した。

今いる所と通い始めた学校の名前、放課後が始まる時間、全てを。

小紅姫

知っている人にしか、こういう話はしちゃいけないって、お母さんは言ってたけど

小紅姫

ユーリさんは私の味方で、私の知ってる人だし、信じられる人だから!大丈夫だよね!!

小紅姫

小紅姫

これで、来てくれるの?

小紅姫

ひと通り話したけど、まだ何か話した方がいい?

ユーリ

いえ、これで充分です!

ユーリ

ありがとうございます、小紅姫さん!

ユーリ

なるべく早く向かいますから、耐えてくださいね

小紅姫

良かったあ!

小紅姫

待ってるから、助けに来てね!

小紅姫

もうこんな所にいたら、私までダサい子になっちゃいそうだよぉ!

ユーリ

それは嫌ですね……お互いに……

ユーリ

そうなる前に、必ずやお迎えに行きますので、ご安心を!

ユーリ

お迎えに行ける日が決まったら、また連絡します!

小紅姫

はーい!

小紅姫

よろしくお願いします!

こうして、ユーリからの連絡を待って、何日経っただろうか。

つばき

もう少しで、月が変わっちゃうよ?

つばき

まだ?ねえ、まだなの?

今のつばきは、薄情なことに、母親の手の温かさをすっかり忘れていた。

そればかりか、自業自得であるにもかかわらず、こんな田舎に連れて来られた事に対して、両親を恨んですらいた。

つばき

まったく、もっとしっかりしてよね!

つばき

私 の !

つばき

お父さんとお母さんなんだからさ!!

つばき

つばき

お迎え、来て欲しいなあ……

つばき

こんなところにずっと居たら、心が死んじゃうよ

つばき

楽しいことなんて何も無い

つばき

今のクラスじゃ、私が1番可愛いのは確かだから、そこはまあ、嫌じゃないけど

つばき

あんなダサい子達に褒められると、なーんか嫌味に聞こえるんだよなあ、不思議!

つばき

つばき

ね?私、可哀想でしょ?

つばき

早く来て、私を助けてよ、ユーリさん

つばき

それとも、来ないつもりなのかな……

つばき

まさか、見捨てられた?

自分の嫌な想像で、目頭が熱くなった時である。

つばき

あ……!

つばき

来てくれた、本当に!

つばきは小躍りしたい気分を抑え、メッセージへと視線を落とす。

つばき

つばき

よし、最終確認!

つばき

学校が終わったら、デカオン……

つばき

あそこの、やたら大っきいショッピングモールに集合!

つばき

そしてゲーセンに着いたら、ダイレクトメッセージに連絡を入れる!

つばき

持ち物は、大事なもの全部!

つばき

スマホとか、着替えとか、お財布もぜーんぶだね!

つばき

おっけーおっけー!

つばき

明日にはここを離れるんだから、今日のうちに準備しておかないとね

つばき

お母さんに見つからないように、頑張るぞー!

つばき

つばき

お母さん……

つばき

お父さんも、いきなり私がいなくなったら、心配するよね……

つばき

どうしよう

つばき

そうだ!今のうちに、明日は友達の所に遊びに行くって言っておこう!

つばき

だってこれは家出じゃないもん

つばき

変な人が落ち着くまでの間、ユーリさんに助けてもらうだけだもん!

つばき

むしろ、負担が少なくなって、お母さん達も助かるはず!

つばき

心配するどころか、喜んで送り出してくれるよね?

つばき

つばき

なら、今からでも連絡しちゃおう!

つばきは家族用のグループチャットを開くと、意気揚々と文字を打ち込み始めた。

つばき

お母さん、お父さん

つばき

明日、お友達の所に遊びに行きたいんだけど、いい?

お母さん

いいけど、誰のところ?

つばき

えっとね、ユーリちゃん

お母さん

ユーリちゃん?

つばき

そうだよ!新しいお友達!

つばき

つばき

お母さんが心配するような子じゃないから、安心して!

お母さん

もちろん、つばきちゃんのお友達だものね

お母さん

明日、お友達のお母さんやお父さんに、迷惑かけちゃダメよ?

つばき

うん!もちろんだよ!

お母さん

そうだ、お土産を持っていくといいわ

お母さん

美味しいおやつがあれば、もっと仲良くなれるはずよ!

つばき

そうだね!

お母さん

ここら辺だとお店が遠いから、お父さんに何か買ってきてもらいましょ

つばき

賛成〜!

つばき

つばき

お父さん、責任大だよ

つばき

早く既読つけてね!

お母さん

そうね、早く見てほしいわね

お母さん

じゃあつばきちゃん、一旦スマホはお終いにして、早く帰っておいで

つばき

はーい!

そして、待ちに待ったその日がやってきた。

つばきはショッピングモール・デカオンのゲームセンターの入口で、柱にもたれかかっていた。

ランドセルと手提げカバンの中に、詰め込めるだけ荷物を詰めたせいか、重みが容赦なく腕と背にのしかかってくる。

つばき

はぁ、ふう

つばき

お、重い……!荷物、重たぁい!!

つばき

夏休み前の、最後の登校日みたいなんだけど!

つばき

なんかめっちゃ疲れた!

つばき

つばき

あっ!そうだ、着いたよって連絡しないと!

つばき

『入口前にいるよ』……これでいいかな?

つばき

これで大丈夫で

スーツの男

小紅姫ちゃん?

つばき

え?

掛けられた声は、自分と同じ子供の声ではない。明らかに低い、成人した男性の声だ。

恐る恐る振り返れば、そこにはどこにでも居そうな、眼鏡のスーツ姿の男が立っていた。

この辺にいそうな格好では無い。つばきは直感的に、この男に危機感を抱く。

事実、この直感は正しかった。

つばき

あ、あのぅ

つばき

どちら様ですか?

スーツの男

あはあ!否定しないってことはそうなんだ!

スーツの男

うわあ、まさかこんなところで会えるなんて!

スーツの男

画像サイトで見かけてから、ずっと会ってみたいなあって思ってたんだ!

スーツの男

夢みたいだ、本当に

スーツの男

スーツの男

やっぱり本物は柔らかそうだなあ

スーツの男

目も丸くて、ほっぺも桃みたいで……

まくし立てる男の前から立ち去ろうにも、つばきの体は、石になってしまったかのように動かない。

つばき

や、やだどうしよう

つばき

逃げなきゃまずいのに、どうして動けないの……!?

つばき

この人、絶対に危ない人だってわかってるのに!

鼓膜を震わせる、自らの心臓の鼓動が恐ろしい。

何よりも動けない現状が、つばきに過剰とも言える緊張をもたらしていた。

スーツの男

スーツの男

さあ、一緒に僕の家においで!?

スーツの男

僕なら君を……幸せにしてあげられるよ!

つばき

や、やだ

つばき

ひぃっ

伸ばされる手に、目をぎゅっと瞑った時である。

デニムシャツに黒いジャケットを着た、20歳前後の若い男が1人、男の伸びた腕をしっかりと掴んでいた。

???

ちょっと、何してるんですか

スーツの男

は?何、あんた

???

何って、この子の親戚ですけど

???

うちの姪が怯えてるんで、その手、引っ込めてもらっていいですかね

スーツの男

は、何言ってんだお前!

スーツの男

警察呼ぶぞ!?

???

別に構いませんよ、呼んでいただいても

スーツの男

はぁ!?

???

でも、いいんですか?このままだと捕まるのは貴方ですよ

???

だって、どこからどう見たって、誘拐犯にしか見えませんし

???

あっ!警備員さーん!ちょっとこっちへ!

スーツの男

なっ!

スーツの男

スーツの男

チッ、覚えてろボケがっ

つばき

い、なくなった……

???

???

いやあ、間に合ってよかった

???

変なことはされていないかい?

つばき

えっと、ありがとうございました、助かりました!

つばき

つばき

そのぅ、ユーリさん?

???

……の、お父さんです

つばき

ああ、そうだったんですね!

ユーリのお父さん

はじめまして

ユーリのお父さん

よくここまで来てくれたね

つばき

はじめまして!今日はよろしくお願いします……って、あれ?

つばき

そうだ、ユーリさんは?

つばき

ユーリさんはどこにいるんですか?

ユーリのお父さん

あの子なら今、この村から少し離れた所の、ホテルにいるよ

つばき

ホテル……?

ユーリのお父さん

どうやら車酔いしてしまったみたいでね、少し休んでいるんだ

つばき

そうだったんですね!

ユーリのお父さん

さ、いつまでもここで話すのは申し訳ない

ユーリのお父さん

荷物、重たいだろう?

ユーリのお父さん

お話は車の中でしよう

つばき

はぁい!

こうして、つばきは荷物とランドセルを持って、デカオンの駐車場へと向かって歩き出した。

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