その一言に時が止まった。
ふと、隅っこまで追いやられていた教員達からも声が上がる。
キョウトウ
イガラシ先生が――【革命軍】の黒幕?
イシカワ、そしてヤナギから向けられる視線も、なんだか少し痛かった。
イシカワ
イガラシ、お前まさか――。
ヤナギ
なるほど、だったらさっきの対応も理解できる。
ヤナギ
イガラシ先生が黒幕ならば、さっきの第一ゲームの仕掛けもあらかじめ知ってるわけだし、校長先生を助ける振りをすることもできる。
イガラシ
(まずい。みんなからの印象が悪くなる)
イガラシ
(まさか、これが狙いなのか?)
イガラシは整理する。
このゲームで生き残る手段は、全員が正直に本当のことを投票するか、もしくは誰かが正直に答える裏で嘘をつくかだ。
もし仮に、これでイガラシが生き残ったらどうなるか。
イガラシ
(重要なのは、全ての結果が分かった際、誰が嘘をついたのか分からないということ)
イガラシ
(でも、それって逆を言えば――)
投票を待つ【革命軍】に向かって、イガラシはある事柄を問う。
イガラシ
結果が明らかになった際、誰が本当のことを言ったと証明できる?
革命軍
――と言うと?
このゲーム、公平性があるように見えて、実は印象操作が目的である。
イガラシ
例えば、ゲームが終了した時、俺、イシカワ、ヤナギ先生の全員が助かったとする。
イガラシ
この場合、3人が素直に本当のことを答えたことになるが――その裏付けはどうする?
イガラシ
俺が【革命軍】の黒幕ではない――と答えたとして、それが【真実】なのか【嘘】なのかは明らかにされない。
革命軍
イガラシ先生、もう少し噛み砕いてもらっていいだろうか?
革命軍
話を聞いているのは――小難しいことが分からない子どもが大半だ。
イガラシ
俺が【革命軍】の黒幕だとして、それに対して【真実】の投票をしたとする。
イガラシ
この場合、俺は正直に答えたことになるよな?
イガラシ
また、逆のパターン。
イガラシ
俺が【革命軍】の黒幕ではないとして、投票では【嘘】を投票するとしよう。
イガラシ
これも本当のことを答えたことになる。
革命軍
――それが、何か問題でも?
イガラシ
あえて複雑なルールにすることで、お前達は俺達の印象を操作しようとしているだけなんだよ。
イガラシ
人間ってのは、複雑な問題を目の前にした時、安直な答えに飛びつこうとするもんだ。
イガラシ
つまり、俺は【革命軍】の黒幕、イシカワは過去に生徒を死なせた教師、そしてヤナギ先生は生徒と関係を持ったことのある教師――。
イガラシ
そんな印象を持たれてしまう。
イシカワ
つまりどういうことなんだ?
イガラシ
――こいつらのやってることは信頼できないってことさ。
このゲームはゲームとして成立しない。
根幹的な部分で、どうとでもできてしまう。
そのようなニュアンスを含んだつもりだったが――。
革命軍
だったらどうなんだ?
革命軍
罪人は赦されるべき存在ではない。
革命軍
むろん、多少の理不尽な扱いも、甘んじて受けるべきだ。
革命軍
さぁ、投票を――。
イガラシ
(くそ、それとなくあっちの目的まで指摘したつもりだけど、聞く耳持たずだ)
イガラシ
(このゲームは、多分成立させちゃいけないゲームなんだ)
イガラシ
(どっちに転んでも、悪い印象は絶対について回ることになるから)
イガラシ
(だとしたら、やっぱりリスクを承知で、あれをするべきか)
イガラシは小さく吐息を落とすと、教員室の隅っこに追いやられた教員――誰に言うでもなく漏らした。
イガラシ
誰か、イシカワ先生とヤナギ先生の過去を調べてください。調べられる範囲で構いません。