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〜哲汰side〜
哲汰
小堺さんちょっといい
哲汰
でもその時俺はなんか嫌な予感がして、 後をついて行くことにした。
着いた先は、使われていない旧校舎の一室。 薄暗く、静かな教室。
気づかれないように扉の前で話を聞いていた。
……昨日、 武道館いたんだって?
俺の女友達が見たって言ってたよ。 関哲汰と付き合ってるって噂、もう回ってるし。あんなライブ見て惚れ直したんだろ?
や、やめて……!
俺はハッとした。
咲ちゃんってさ、 断れないタイプでしょ?
いてもたってもいられなくなって 勢いよく扉を開けた。
教室のドアを開けた瞬間―― 視界に飛び込んできた咲の姿に、 俺の心臓は一瞬で凍りついた。
咲の肩が小さく震えてて、 男がその距離で手を伸ばしてて、
咲の目には……怯えと、涙と、助けを求める色がはっきり浮かんでいた。
頭が真っ白になった。
気づいたときには、 その男を力いっぱい突き飛ばしていた。
哲汰
自分でも驚くくらい、 低くて怒りを抑えた声だった。 けれど、内側は煮えたぎるように熱くて、 手が震えていた。
咲は、その場に崩れ落ちていた。 俺はすぐに駆け寄って、彼女を抱きしめた。
あの小さな体が、俺の腕の中でまだ震えてる。
哲汰
俺が守らなきゃいけなかったのに。 ライブだ、リハだって言って、 咲の寂しさにも不安にもちゃんと 向き合ってなかった。
咲
その一言で、胸の奥がズン、と重く沈んだ。
哲汰
咲を抱きしめる腕に、自然と力がこもった。 俺のせいで、咲にまた“あの時みたいな思い”を させたなんて――悔しくて、情けなくて。 でも。
今こうして、俺の腕の中で震えている咲を、 絶対に守る。 その想いだけは、誰よりも強く胸にあった。
もう、咲を泣かせない。 咲が俺の隣にいてくれる限り―― 俺は、何よりも強くなれる。