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蓮
亮平
早朝。寒さに鼻を赤くさせた阿部さんと挨拶をする。
阿部さんが引っ越してきて1ヶ月。
話す回数は段々と増えてきて、世間話は軽々と出来る仲になっていた。
まぁ、それに従って俺の恋心も膨らんでいくわけで。
ニコッと俺に向けられる笑顔に胸が苦しくなってしまう。
蓮
亮平
蓮
『え、うそ!?』と驚く阿部さんに笑いつつも「もう取れましたよ」と言えば、『ありがとうございます』と恥ずかしそうに頭を掻いた。
恥ずかしいなぁ、と呟いた口からは白い息が吐かれて。
それが空中に消えていくのを見て綺麗だなんて思う。
亮平
ポツリと呟かれた言葉に顔を向ければ、その大きな瞳でゆっくりと落ちていく雪を見つめていた。
蓮
興味本位で聞いてみれば『うーん、笑』と困ったように首を傾げて、小さく息を吐いて空気を白く染めた。
亮平
蓮
蓮
亮平
サラッと耳に髪をかけて。
『そうだったらいいんだけどなぁ』
と、消え入りそうな声で呟いた。
「何かあったんですか?」そう聞きたかったけど、それを聞けるほどに勇気も備わってなければ、それを聞いていいほど距離も縮まってない。
亮平
蓮
スマホを見ればもう8時になろうとしていて。
阿部さんと話せなくなる名残惜しさを感じながらも、会社に遅れて叱られるのも嫌だから仕方なく「じゃあまた」と挨拶をして古びた階段を降りる。
亮平
亮平
2階からヒラヒラと手を振られて。
ぺこりと会釈をすれば、ニコッと笑顔を向けられてまた胸が苦しくなってしまう。
自転車小屋に行って阿部さんが見てないのを確認してからポケットに手を突っ込む。
チャリ、と中で音がしたのを確認して、ニヤッと緩んだ口元を必死に手で隠す。
蓮
ボソッと呟く。
ゴミだなんて付いてなかったのに。
確かに俺は取った。
…というか、正しくは”盗った”なんだけど
不用心だよね。
あんなに分かりやすくダウンジャケットに鍵が突っ込んであるんだから。
しかもキーホルダーなんて付けちゃって。
あんなにあからさまにポケットから鍵が出てれば誰でも盗るよ。
…まぁ、実際盗る人少ないだろうけど。
阿部さん、困っちゃうだろうけど許してくれ。
なんて最悪な事を思ったりして。
雪の降りそうな水曜日。
いつもより軽い気がするペダルを漕ぎながら会社へと向かった。
コメント
1件
おい、めめぇお前Sやな?