それから 私と谷口さんは
宮地先輩のバッグを リビングに運んだ
この時点で 午後四時
外が雨だからか 室内も薄暗く感じる
そして…
谷口瞳
お話しがあります…
村山美久
Wi-Fiの件を 皆に話す事にした
中田萌香
これで助かる?
藤島あかり
宮地 辰巳
おかしいだろ
中田萌香
宮地 辰巳
圏外で繋がらない
中田萌香
なら、あの…
大きい箱みたいなやつ?
あれがあるって事?
宮地 辰巳
知識ねーのに喋んな!
中田萌香
イライラしないでよ!
藤島あかり
いい加減にして下さい!
宮地 辰巳
誰に向かって
口聞いてんだよ!
藤島あかり
村山美久
大丈夫か皆…
なんだか さっきよりギスギスしてる
宮地 辰巳
俺はまた山を下る
谷口瞳
宮地 辰巳
完了したら、
すぐに行く
中田萌香
Wi-Fi探した方が早い
宮地 辰巳
分からないだろ!
谷口瞳
藤島あかり
探しませんか?
谷口瞳
中田萌香
二階を探すわ
宮地 辰巳
村山美久
どこまでも 空気が重い…
それから 私と谷口さんと中田先輩で 二階を探し始めた
谷口瞳
大丈夫かな?
中田萌香
一階で宮地と二人きり…
心配だわ
村山美久
中田先輩 心配してなさそう
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
あった?
村山美久
気になるって言うか 宮地先輩って…
村山美久
途中から部長に?
谷口瞳
ですよね?中田先輩
中田萌香
去年の夏から部長に…
馴染みが無くて、
部長って呼ばれないけど
谷口瞳
皆に合わせてました
村山美久
馴染みが無くて…? 呼びたくないって事か?
それって
村山美久
谷口瞳
なになに!?
村山美久
谷口さんは圧が強い!
村山美久
出井部長…
谷口瞳
同学年の…
亡くなった方ですよね?
中田萌香
部長になる前から、
リーダー気質だった
村山美久
もしかしたら 出井部長は皆から 好かれていた
宮地先輩とは逆の…
村山美久
中田萌香
出井君は優しかったよ
村山美久
中田萌香
完璧な人間だった
村山美久
中田萌香
部長はいない…
だから私は、
宮地を部長とは呼ばない
谷口瞳
すごい人ですね
中田萌香
優しくて、冷静で、
包容力があって、
常に前向きで…
村山美久
自殺してしまった
中田萌香
あの事が…
許せなかったのかも
谷口瞳
中田萌香
あの時も合宿中で、
同級生が事故で…
村山美久
演劇部の スケットの人だよね
谷口瞳
何があったんですか?
村山美久
そう! それが聞きたかったの! ナイス谷口さん!
中田萌香
谷口瞳
中田萌香
落ちたのよ
村山美久
中田萌香
階段から、
落ちるシーンがあって
谷口瞳
中田萌香
言ったら…
中田萌香
中田萌香
落ちるシーンだけ、
スタントになるって…
村山美久
中田萌香
そのまま…
谷口瞳
中田萌香
監督もやっていたし…
責任を感じて…きっと…
村山美久
なんか腑に落ちないなぁ
そもそも 今回の合宿って
村山美久
谷口瞳
内緒で来たの
村山美久
中田萌香
反対されるでしょ?
村山美久
やばくないか?
中田萌香
結局、去年は撮影中止
谷口瞳
今年は絶対に
撮影がしたいって、
言ってましたよね
中田萌香
何でも良いから
撮りたいだけよ
谷口瞳
中田萌香
映像の専門学校だし…
「撮った」って実績が、
欲しいみたいよ
谷口瞳
中田萌香
こだわっているけど、
本当は中身なんて
何でも良いのよ
谷口瞳
映像部の事は、
何も考えてない
村山美久
谷口さんは 純粋に 映画が好きな人だから
許せないだろうな…
中田萌香
谷口瞳
中田萌香
入りたくないなぁ
谷口瞳
北原先輩の部屋は、
私と村山さんで
探します
村山美久
まぁ… 仕方ないか
中田萌香
空き部屋を調べるわ
谷口瞳
村山美久
またこの部屋か…
北原先輩の ご遺体には
白いシーツをかけたけれど…
そんなの 気休めに過ぎない
この異様な空間に 慣れるはずがない
谷口瞳
村山美久
谷口さんって 思っていたより 男らしい…
村山美久
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
まだ四ヶ月だよ
村山美久
谷口瞳
よく知らないって事
村山美久
まぁ それはそうだが
谷口瞳
悲しい気持ちはあるし、
殺害された遺体は
見たくないとも思う
谷口瞳
見つけるのが先!
村山美久
そうだ… 確かに本当…その通り
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
尊敬しているの
村山美久
私を? ソンケイ? そんけい? 尊敬?
谷口瞳
谷口瞳
谷口瞳
小説を読んだの
村山美久
ぎゃああああ!!
それ黒歴史ぃいいい!
谷口瞳
クラスで回し読みしてた
村山美久
知ってるけど 改めて聞かされるとキツい
谷口瞳
その小説を読んで私…
谷口瞳
谷口瞳
村山美久
いや ミステリー小説だよ?
感動する描写とか 無かったような
谷口瞳
この小説を
映画にしたいって!
村山美久
谷口瞳
村山美久
マジで?
谷口瞳
子供の頃からの夢が
谷口瞳
谷口瞳
映画監督になりたい!
そう確信したの!
村山美久
谷口さん…
ずっと言いかけてた事は これだったのか…
素直に嬉しい
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
友達になりたいの
村山美久
え!?
谷口瞳
村山美久
村山美久
谷口瞳
村山美久
え すごい
高校生になったら
初恋も経験して 友達まで出来た
やばい
高校生やばい
谷口瞳
谷口瞳
クールだから
迷惑かと思って
村山美久
そんな事ない
谷口瞳
村山美久
私の方が嬉しい
谷口瞳
村山美久
ガタガタガタ!
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
大丈夫かな?
村山美久
谷口瞳
パチン!
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
村山美久
こんな時に 勘弁してくれ
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
隣の部屋に行こう
村山美久
空き部屋を覗き込み
薄暗い中を確認する
谷口瞳
中田先輩?
村山美久
谷口瞳
村山美久
谷口瞳
シャッ!!
思い切りカーテンを開けて 部屋を見渡した
自分達の部屋と同じ内装… 綺麗に整ったベッドシーツ… そして
そのベッドの上には…
谷口瞳
村山美久
虚な目でこちらを見る
中田先輩の死体があった
つづく







