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キーンコーン…
朝の予鈴が、乾いた教室に音を落とした
結局、誰とも言葉を交わさないまま 時間だけが過ぎていった
視線も
声も
互いを避けるように、沈黙に沈む
しん……、と
────ただ、静かな空気が 教室に積もっていくだけだった…
……
「もう少しすれば、“あの人”が来る」
そう思うだけで ほんの少しだけ、息ができる気がした
「“あの人”なら この重たい空気を変えてくれる」
────そんな期待に… 縋っていたんだと思う
────でもその時、 あの悪夢が、脳裏をよぎった
胸の奥が、じんわり冷たくなる
今この瞬間の空気と…
どこかで重なってるような…… そんな気がして、ならなかった
Mr.銀さん
予鈴はとうに鳴ったのに “あの人”は来なかった
背中に、ひやりと 冷たいものが張り付く
つきり、と心臓が痛む
Mr.銀さん
そう自分に言い聞かせたが 不安はどうしても拭えない
夢のせい、かも知れない
でも……それだけじゃない、
そんな気がしていた
その時だった
教室の風が、ふと変わった
どこか遠くから“何か”が押し寄せる様な…
目に見えない“ソレ”が 教室に忍び込んで来た様な感覚────
息が詰まる
心臓の音が、やけに大きく聞こえた
誰かが、小さく咳払いをした
誰かが、そっと立ち上がりかけて 直ぐに座り直す
誰も口にしてないが、全員が気づいてる
「何かがおかしい」って────
────その違和感は……
“あの人”────…… “すまない先生”が来ない事と
どこかで静かに繋がっている様な気がした
息を詰めたまま、俺は無意識に 席から立ち上がりかけていた
確かめなきゃいけない気がして……、
「このままじゃ 何か、取り返しのつかない事になる」
根拠なんて無い
けど、そう感じた
バゴォーンッ
突然、扉が粉々に砕けた
パラパラ、と 大量の破片が周囲に飛び散る
すまない先生
その声と共に、眩しい朝陽を背に すまない先生は立っていた
少し乱れた髪に 急いで駆けつけて来たのが分かる、息遣い
エリトラも付けっぱなしで 右手には花火を持ったまま
ネクタイも、少し曲がっていた
途中、木にでも突っ込んだんだろか 髪の毛に葉っぱが数枚、絡まっていた
だけど、それ以上に────
その笑顔が、余りにも明るくて、まっすぐで
さっきまでの空気なんて 存在しなかったかのように────
悪夢なんて 最初から見て無かったかの様に────
俺は、その場に立ち尽くした
安心と、僅かな戸惑いを抱えながら…