セノ
空、起きるんだ空。
空
……
セノ
こんな訳の分からない場所で油断してるとタヒぬぞ!!
空
…!!!タヒぬ!?
セノ
ウソだ。いや、冗談だ
セノ
安心してくれ、見た限りここは完全に安全だからタヒにはしない
空
……
セノ
面白くなかったのか?
空
面白くないに決まってるでしょ!!!
空
このバカマハマトラ!!!
空
冗談にも限度ってものがあるでしょ!!
セノ
す、すまない…
セノ
悪気はなかったんだ…本当に
空
(くぅ…可愛い…)
セノ
それよりも一体ここはどこなんだ?
空
さぁ…俺には全く見覚えがない場所だ
空
セノは見覚えがあったりするか?
セノ
全く
空
じゃあ一体なんなんだ?
はぁ、と空がため息をついた時扉が現れたと思ったら扉の上に看板がある
セノ
空、出口が現れたようだ
空
これで出られるね!!
空
はぁ…はぁ…一体どうなってんの…?
セノ
!!上の看板を見ろ!文字が浮かび上がってきてるぞ!
空
え?!
そこには○○しないと出られない部屋と書いてあった
そして、ポツンと1つの刃物が置かれていた
空
○○しないと出られない部屋…
セノ
稲妻のとある小説で聞いたことのある題材だな
空
うん、俺もチラッとだけど聞いたことあるよ
空
でも一体○○って…
空がそう呟いた途端○○のところの文字が浮かび上がり、2人は絶句する
セノ
……
空
…
空
………
セノ
どっちかがタヒなないと出られない部屋…
空
セノ…
セノ
……
空
……
空
セノ、大丈夫。俺がタヒぬよ
セノ
何を言ってるんだ!!
空
いッ…
セノ
あ…すまない…つい力が
空
このくらい平気だから
セノ
…
セノ
いいか空。俺は空のことを絶対タヒなせない
セノ
お前にはまだ本来の目標を達成してもらわないと困るんだ
セノ
それに今まで出会ってきた数多くの仲間も悲しむはずだ
空
……
セノ
なら俺がお前のために…
空
そんなこと言っちゃダメだよ。
空
セノには帰る場所があるじゃん
空
俺は帰る場所はないけど、セノにはちゃんとある
空
だから生きてよ
空
ね?
空は笑顔で少しでもセノを安心させようと手を握るが僅かに握る手が震える
セノ
……
セノ
一緒にタヒなないか…?
空
え…?
セノ
1人でタヒぬのが辛いなら一緒にタヒねば怖くないだろ
空
俺は怖くないよ
空
だから平気!!大丈夫!
セノ
でも!!!
空
いいの!!
空
俺がセノのためにしたいの!
空
セノには感謝してるよ
空
旅では大マハマトラとしての職務もあるのにできるだけ一緒に笑っていてくれて
空
一緒に旅して、一緒にご飯を食べて、一緒に観光してくれて、一緒に寝てくれて。俺、すっごい幸せだった
空
多分俺は今までが幸せすぎたんだよ
セノ
そんなの俺だって…!!
空
ふふっ、セノまでそんなこと言い始めたらキリがないよ
空
俺ね、セノと一緒にいる時間、すっごい楽しかった。嬉しかった、ずっと幸せだった
空
俺には勿体ないぐらいキラキラした時間だったと思う
空
だからかな…
空
もう少し、一緒に居たかったなぁ…
セノ
なんで1人でタヒぬつもりでいるんだ?
セノ
お前を1人にさせるわけないだろ?
セノ
俺がずっと一緒にいる
セノ
だから安心しろ
空
セノってば馬鹿だねぇ…
空
俺さ、1つセノに絶対言っておきたいことがあるんだ
セノ
なんだ?
空
聞いてくれる?
セノ
あぁ
セノ
でも俺からも1つ言いたいことがあるんだ
空
そうなの?じゃあ先に言っていいよ
セノ
あぁ。お言葉に甘えさせてもらう
空
うん
セノ
今更もう、どうにもできないかもしれないけど空
セノ
お前のことがずっと好きだった。愛してたよ
空
……
セノ
すまない。こんな時に…
セノ
お前みたいな英雄がまさか死に際に男からの告白を受けるなんて最悪だよな
セノ
本当にすまない。でもどうしても言いたかったんだ
セノ
心残りがないように…
空
ねぇ、誰が嫌なんて言った?
セノ
え?
空
俺も好きだったよ
セノ
ほ、本当に?
空
本当だよ
空の一言を聞いた途端セノが思いっきり抱きしめたあと頭を撫でた
セノ
良かった…良かった…
セノ
最後の最後でダメになるかと思ってた…
空
そんな馬鹿なことないに決まってるじゃん
空
最初で最期の告白だから俺から言おうとしてたんだけど先越されちゃったな
セノ
空もか!?
空
俺たち気が合うね
セノ
あぁ…こんなに嬉しいことってあるのか…
セノ
現実なのかも信じられないな…
空
ほっぺでもつねってみる?
セノ
そうだな、つねってみてくれ
空
それじゃあ失礼するね
セノ
うぅ…痛いな…うん、痛い
空
夢じゃないからね
空
ちゃんと現実だよ
空
だからね。
空
俺、セノには俺の分までなんて言ったら迷惑だと思うけど、最期の最期まで幸せに生きてて欲しいんだよね。
空
だから、ここでお別れ
セノ
は?
空
俺がタヒぬからセノと俺との間に見えない壁を作って、視覚も遮断する壁を作って
セノ
なんてことを言ってるんだ空!!!
空
大丈夫、俺がタヒんだらすぐに出られるようになるよ
空が怯えたような瞳を見せながらもセノに笑顔で微笑むと同時に二人の間に高く頑丈な壁ができる
空
この部屋凄いね。お願いしたら壁作れちゃった
空
他のお願い事とか叶うのかな
セノ
空!!!ここから出してくれ!!空!!
空
……
空
刃物はこっちにあるからセノは絶対タヒねないから、どう足掻いても無駄だよ
セノ
嫌だ!!!!空!!!
セノ
空!!!!!
空
ねぇセノ
空
ずっと大好きだよ
壁の向こうからはバタンと倒れた音と刃物が床に落ちる音だけが聞こえた
爪が剥け、血が垂れるほど壁を壊そうと引っ掻いた指は先の方がジリジリと傷んだ
しばらくすると壁が消え、首が切れて服には血がべっとりと染み込んでいる空が床に倒れていた。
空が血を垂れ流して倒れているにもかかわらず、ガチャッと恋人の心情も知らず部屋の扉の鍵は開く
空の首を切った刃物は消えて、狭い部屋には冷たくなった最愛の恋人だけが残されていた
抱き寄せ、名前を呼び、愛してると、大好きだと声をかけ、初めてのキスは人工呼吸にかわっても、反応も何も無い。ただ出血がどんどん増え冷たくなっていく恋人をただ眺めることしかできない
どんなに愛していてもこの愛が伝わることはないと悟った時、胃からなにかが込み上げてきた
気持ち悪くて、辛くて苦しくて、泣きたくてどうしようも無い気持ちが襲った
暫くして恋人を純白のベッドの上に寝かせ、自分もその隣に寝転んだ
冷たくなった恋人と恋人繋ぎをしてキスをして抱き乗せて、最期に微笑みながら言った
2人だけの愛の巣で、恋人同士は手を繋ぎ、自身の舌を噛みちぎって恋人たちは狭い部屋の中で幸せな最期を迎えた