コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
本作は フィクションです
実在する学校や団体名、 個人名とは一切関係ありません。
あらかじめご理解の上 次のページにお進みください。
ずっと思っていた。
羨ましい 妬ましい 恨めしい
何かを投稿すれば、それだけで閲覧数は何百、何千件。
写真やイラスト、小説なんて投稿したら、いいねも爆発的につく。
そんな、あんたが。
クリエイター『望岡(もちおか)きなこ』は、今やネットの世界を席巻していた。
写真撮影の技術もあり、文才にも優れ、 出来ないことといえば、刺繍などのハンドクラフトくらいなもの。
何をしても注目される彼女が、特に才能を有していたのは、大迫力のイラストだった。
持ち味である、厚塗りで描かれたキャラクター達は、どんなものでもバズりにバズったのである。
少年漫画の敵役、少女漫画のヒロイン、オリジナルのイラスト……いいねは全て100を超えている、強者だ。
だが、彼女を有名人たらしめている要因は、他にもあった。
望岡きなこ
望岡きなこ
望岡きなこ
望岡きなこ
望岡きなこは受験生――高校受験に臨む、中学生であったのだ。
そんな若き天才へと注がれる視線は、多くが期待と尊敬、憧れのもの。
だがしかし、彼女は好意的にばかり見られてはいなかった。
あおい
『望岡きなこ』のSNSアカウントを、立花あおいは、ぼうっと眺めていた。
彼女は望岡きなこを好意的に『見ていない』人の1人。 だと言うのに、今日ばかりは目をランランと輝かせていた。
というのも、あおいの最推しと呼べるキャラクターのイラストを、つい数分前に望岡きなこが投稿したのである。
好きなキャラの出ている作品なら、何がなんでも見たい。 キャラ名の書かれた作品に、あおいは飛びつかずにはいられなかった。
望岡きなこ
望岡きなこ
望岡きなこ
あおい
厚塗りの持ち味とも言える、立体感のある陰影は、キャラクターの頼りない笑顔をより印象的に描いている。 そればかりか、雪の降る空を見上げる彼の、黒い瞳に映る牡丹雪の一欠片すらも丁寧に描かれていた。
絵に触れた指が、ほんの一瞬だけ寒さを感じたくらい、このイラストはあおいの心を掴んで離さない。
あおい
思わず願望が口から出てきてしまうくらいには。
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
ギリッと歯軋りをしては、ずるいと恨めしそうに画面を睨みつける。
それ程までに、あおいは『望岡きなこ』の人気ぶりが気に入らなかった。
絵の投稿を始めたのだって、あたしよりも後なのに。 小説だって、夢小説ではあるが、あたしの方が何作品も多く書いているのに。
あっという間に望岡きなこはあおいの評価を追い越して、有名人の仲間入りを果たしてしまった。
自分と同じ中学生なのに、こんなにも差が出るなんておかしい。あおいは心底そう思っていた。
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
鼻息を荒くして、苛立ちを抑えようともせず、あおいはスマホをベッドの上に投げ捨てる。
今だけは壁にかけられた最推しのカレンダーすら、自分の惨めさを思い知らせる道具になっていた。
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
クリエイターとしてだけではなくて、『立花あおい』として人気者なりたい。
それが、あおいの夢であった。
ご覧の通りだが、あおいは望岡きなこが気に入らない。嫉妬を通り越して、憎くて仕方がない。
その一方、心のどこかで、あおいは望岡きなこに憧れていた。
クリエイターとして活動して、人気者になった彼女に、ほんの一欠片だけ憧れを抱いていた。
じゃあ望岡きなこを追い越すような存在になるよう頑張ろう、とは簡単にいかない。
自分には、才能がないから。
努力で補えるほど、 器用ではないから。
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
あおい
ああ、なんて単純な事だったんだろう!
あおいの笑いは止まらない。
この悪巧みは、きっと望岡きなこのアカウントの所有者を、深く傷付けることになる。それはあおいだって分かっていた。
だからこそ、やるのだ。
あおい
あおい
ベッドから勢いよく起き上がった、その時だった……
自分の部屋の扉が、勢いよく開かれたのは。
あおい母
あおい
あおい
あおい母
あおい
あおい
あおい母
あおい
あおい
あおい
あおい母
あおい母
そう言って、母親は強引に扉を閉めると、自室へと戻っていってしまった。
あおい
あおい
先程とは違う熱に支配された体を、再度ベッドに沈める。
声をはりあげたから、疲れていたのだろう。あおいの瞼(まぶた)は重々しく閉じたのであった。
あおい
あおい
美紅
翌日、あおいが通う中学校。
朝日がさんさんと差し込む教室では、あおいが友人に愚痴(ぐち)をこぼしていた。
友人の名は美紅。あおいのイラスト作りを応援している、幼稚園の頃からの幼なじみだ。
あおい
あおい
美紅
あおい
あおい
美紅
美紅
あおい
美紅
あおい
いつもよりちょっとだけ早い時間に集まって、各々愚痴を吐き出す。それがあおいなりの『スッキリする』事のうち、1つ目であった。
そして、もう1つはというと……
黄実花
あおい
黄実花
黄実花
美紅
あおい
黄実花
あおい
そのもう1つが同級生、黄実花への嫌がらせ。
そう。あおいは今、黄実花の椅子……ではなく机に、堂々と座っていたのである。 しかも、わざと。
美紅
あおい
黄実花
黄実花
黄実花の顔色がみるみる悪くなっていく。
居場所を求めて周囲を見回す彼女に、同情の目を向けるクラスメイトもいたが、それだけ。どうしよう、どうしようと、黄実花が助けを求めても、誰も助けようとしない。
あおいの楽しみとは、悪趣味なことに、こうして黄実花が困ってるのを見て楽しむこと。
あおい
あおい
男子A
男子A
あおい
美紅
美紅
自分の席に戻ってすぐ、あおいは早速自分が望岡きなこに取って代わるための計画を立て始める。
この時点で、止めておけば良かったのだ。
だが、膨らんだ自己顕示欲は止まらない。
担任のしゃがれた声をスルーして、あおいはこっそりとスマホを開いた。