借金を押し付けられまして。【NIZISANNZI】

不破　sid.

空桜が起きてから 2日

あの日の叶くんの

『おかえり』と『愛してる』

が伝わる事は無かった

みんなが意気消沈して 仕事に打ち込み

現実逃避をしている

現に俺もそう

その時俺の携帯から

呼び出し音が鳴った

相手はかなかな

嫌な予感がして

電話に応答した

頭の中が真っ白になって

慌てて電話を切った

夜の道を走って

空桜を探す

何処に行った？

まだ空桜は

何も思い出せて いないのに。

事故に遭ってたら？

死んじゃってたら？

嫌な事ばかりが

頭によぎって

俺はがむしゃらに走って

名前を呼んで

探した

ふと目についたのは

海

俺は立ち入り禁止の 踏切を超えて

自然と海に向かっていた

月夜の海岸沿い

確か今日はピンクムーン

空にくっきり 浮かぶ桜色の月に

手を重ねる

掴めないのは 分かってたけど

掴もうとして

くうをきって

たまたまだろうが

ある物を掴んだ

冬と春の狭間の季節

春にしても冬にしても

桜が咲くには早すぎる

俺は遠くに影として見える

桜の木に 吸い寄せられるように

歩みが自然と 其方に向かっていた

これが『夜桜』か

崖淵にポツンと

一本で佇む桜の木

周りには花びらと

溶けきれていない 少量の雪

ぼんやり

桜と月と海とを

重ねて眺めていると

崖淵から見下ろした 丁度の所の砂浜に

空桜が居た

慌てて降りて

名前を呼ぶ

此方を振り向いて

静かにと言うように 自分の唇に指を当て

俺に背を向けた

そのまま空桜は 海に歩み寄り

下半身が水に浸っている

そう叫ぶと同時に

空桜は

潮に呑まれた

俺は迷わず海に飛び込んだ

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