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君の中で僕は叫ぶ。

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君の中で僕は叫ぶ。

1 - 君の中で僕は叫ぶ。

♥

500

2019年08月22日

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雲がない青空の下

君を

見つけてしまった。

授業中いつも手に顎をのせて

窓を一日中見ている

隣の席の君の名前。

月島 伊織〈つきしま いおり〉

私はいつも月島くんを 見つめてしまう。

友達

…芽ちゃん!

友達

絢芽ちゃん!!

河合 絢芽

わっ、何!?

友達

何!?
じゃないでしょ?笑

友達

早く!!
次、移動教室だよ!!

河合 絢芽

あ、うん!!

私の名前は 河合 絢芽〈かわい あやめ〉 高校1年生。

友達

絢芽は本当に天然で可愛いなぁ!

河合 絢芽

そ、そんなことないよー。

クラスメイト

今日も絢芽ちゃん、可愛いねー!

河合 絢芽

あ、ありがとう。

クラスメイト

可愛いわぁ、まじホレる。

クラスメイト

な!
伊織も可愛いと思わねぇ?

月島 伊織

…。

月島くんは私をジロッと見て、 すぐに視線をはずした。

河合 絢芽

…。

河合 絢芽

(な、なんなの。)

河合 絢芽

(本当に月島くんは何考えてるか分からない。)

河合 絢芽

…疲れた。

河合 絢芽

私、今日、
ちゃんと笑えてたかな?

河合 絢芽

おかしくなかったかな?

河合 絢芽

(そう、皆がいつも見ている私は)

偽物だ。

私はいつも、仮面を被っている。

河合 絢芽

(無理をしていつも笑っている。)

河合 絢芽

(本当はこんな顔じゃない。)

河合 絢芽

(高校生デビューって頑張って見たけど、)

河合 絢芽

(やっぱり、私には合わないな…。)

いつも帰る道。 ふと横を見ると、 細い道がひとつあった。

なんでそっちに足が向いたのか 分からなかった。

河合 絢芽

(細いな、この道…。)

細い道をぬけると、海が綺麗に見える広場になっていた。

河合 絢芽

うわぁ!

河合 絢芽

すごい!!

河合 絢芽

ここにずっと住んでたけど

河合 絢芽

こんな場所があったなんて…。

河合 絢芽

ここ、
私の秘密場所にしちゃおうかな。

河合 絢芽

(なんか、学校の私を忘れられて
気持ちいい。)

広場の横を見ると、小さな建物があってがあって、

一人の男の子が海を眺めながら その建物の上に座っていた。

男の子の髪の毛は太陽でキラキラと茶色にうつっていた。

河合 絢芽

(あれ、なんか見たことある?)

河合 絢芽

…月島くん?

男の子は私の声が聞こえたのか 私の方にゆっくり向いた。

河合 絢芽

(顔が整ってて、綺麗。)

月島 伊織

…えっと、

月島 伊織

……、あ

月島 伊織

…絢芽ちゃん、だっけ?

顔が赤くなった気がした。

河合 絢芽

(…下の名前?)

河合 絢芽

(なんか、嬉しいな。)

河合 絢芽

あ、はい!

月島 伊織

…急に馴れ馴れしくてごめん。

月島 伊織

皆が絢芽ちゃんって言うから
ごめん、上の名前、知らなくて。

河合 絢芽

(な、なんだ…
皆が呼んでたからか。)

河合 絢芽

河合だよ!

月島 伊織

河合か!

月島くんは ニッと歯を見せて笑った。

河合 絢芽

(顔があつい…。)

河合 絢芽

(何これ?)

河合 絢芽

あ、
でも下の名前で呼んでほしいな。

河合 絢芽

自分の苗字、
あんまり好きじゃないから。

河合 絢芽

(あ、あれ、)

河合 絢芽

(なんで、こんなこと言っちゃったんだろ。)

河合 絢芽

(こんなこと、友達すらにも話したことなかったのに。)

河合 絢芽

(つい、口が滑った。)

月島 伊織

そっか、じゃあ

月島 伊織

俺も伊織って呼んでよ。

河合 絢芽

(あれ、気にしてない?)

河合 絢芽

あ、うん!

河合 絢芽

伊織!!

私はニコッと笑った。

月島 伊織

うん。そっちの方がいいよ。

河合 絢芽

え?

月島 伊織

顔だよ

月島 伊織

月島 伊織

月島 伊織

!!

伊織は自分の顔をつついた。

河合 絢芽

え、嘘。

月島 伊織

自然のままの方が可愛い

月島 伊織

いつも仮面を被ってるように見える

月島 伊織

そうだろ?

河合 絢芽

(なんだ、ばれてたんだ)

河合 絢芽

嘘…、

河合 絢芽

いや、嫌だ。

河合 絢芽

私はこんな顔、好きじゃ…ない

河合 絢芽

仮面を被ってる方が

河合 絢芽

…まし、だもん。

月島 伊織

月島 伊織

ふーん

月島 伊織

じゃあ、ずっとそーしてれば?

伊織の顔つきが変わった。

河合 絢芽

(なに…これ。)

河合 絢芽

(さっきとは違う)

もう1人の黒い伊織。

月島 伊織

仮面なんて被ってたってさ、

月島 伊織

バレるからさ。

月島 伊織

俺にはもうバレたけどね。

河合 絢芽

(なんなの、私がどれだけ)

月島 伊織

そろそろ皆も気づくんじゃない?

河合 絢芽

(頑張ったと思ってんの?)

月島 伊織

絢芽の笑顔は

月島 伊織

“嘘”

月島 伊織

ってね。

河合 絢芽

…っさい!!

月島 伊織

なんて?

河合 絢芽

…うるさい!!!

あぁ、もうめちゃくちゃだ。

顔がぐちゃぐちゃ。

河合 絢芽

伊織には、私の努力なんて!!

もう、 仮面なんてとれている。

これが素の私だ!!!

河合 絢芽

知らないくせに!!

涙、止まんない。

こんなのただの八つ当たりだってわかってる。

河合 絢芽

伊織はいいよね!!

河合 絢芽

…自由そうで、

河合 絢芽

幸せそうでなによりだよ!!!

月島 伊織

…、!

月島 伊織

あぁ、そうなんだ。

月島 伊織

絢芽も俺の事、何も分かってねぇわ

伊織は私の横を通って 背を向けて歩いていった。

そして一言、 今にも消えそうな声で私に言った。

月島 伊織

人の幸せを

月島 伊織

勝手に決めないでくれ。

…私は

何も分かっていなかった。

私が伊織の事を勝手に 決めつけたんだって。

伊織にも私のように 何かあるのだろうか。

私はその場所をしばらく動くことが出来なかった。

河合 絢芽

(あぁ、昨日泣いたから目がちょっと赤いなぁ。)

河合 絢芽

(伊織に謝りたい。)

河合 絢芽

(私、間違ってた。)

河合 絢芽

(…けど、さすがに学校では…)

河合 絢芽

(…話しづらい。)

クラスメイト

あ、!

クラスメイト

おはよー!
絢芽ちゃん♡♡

河合 絢芽

河合 絢芽

あっ!おはよ!!

また仮面を被った。

クラスメイト

あー、可愛いわぁ、まじで。

私はもう席に座っている伊織の隣の席にいつも通り座った。

河合 絢芽

(…そーいえば、)

河合 絢芽

(学校で話したことなかった。)

ちらっと伊織の方を見ると、 相変わらず

手に顎をのせてつまらなさそうに 窓の外を見ていた。

河合 絢芽

(…はやく、放課後にならないかな。)

河合 絢芽

(このままだと、やっぱり気まずい。)

河合 絢芽

よし、急いであそこに行こう。

私は走って昨日行った道と 同じ道を辿った。

私は確かに、 仮面を被っている。

でも、 簡単に伊織にはバレてしまった。

クラスの皆にもバレちゃうのかな。

なんで、伊織は分かったの?

どうして、私のこと すぐに気づいたの?

私がただ、伊織をずっと見てた。

伊織は私のことなんて何も見てなかったのに。

どうしよう。

私、伊織のこと、ずっと見てたから

いつの間にか好きになってたのかもしれない。

だから、隣の君をずっと見つめてしまっていたの?

河合 絢芽

はぁ、はぁ…。

広場について、辺りを見回した。

河合 絢芽

…いない。

河合 絢芽

(…、どこにいるの?)

 

…何してんの?

河合 絢芽

(その声は…)

私は後ろを振り向いた。

河合 絢芽

…伊織!!

月島 伊織

…、何?

河合 絢芽

(なんで?)

河合 絢芽

(普通の顔。怒ってない。)

河合 絢芽

あの…、

河合 絢芽

昨日は本当にごめんなさい。

私は頭を下げた。

河合 絢芽

私、伊織のこと、何もわかってなかったのに

河合 絢芽

分かってるみたいに言っちゃって…

河合 絢芽

でも、伊織に言われたことがなんか、ムカついて…

月島 伊織

…そうだね。

伊織は私の頭を くしゃくしゃにした。

月島 伊織

顔をあげて。

月島 伊織

俺も悪かった。

月島 伊織

何か、嫌だったんだ。

河合 絢芽

…本当にごめんね。

月島 伊織

良いって。

伊織はニカッと笑った。

河合 絢芽

(その顔、私だけのものしたい。)

河合 絢芽

(でも、伊織は私のことなんて…)

月島 伊織

絢芽。

月島 伊織

あの建物の上、座ろう?

月島 伊織

あそこの眺めは最高なんだ。

伊織は私の手を掴んで ずんずん前に進んでいった。

河合 絢芽

(…嬉しい。)

河合 絢芽

(私と伊織だけの時間。)

河合 絢芽

どうやって、建物の上に座れるの?

月島 伊織

建物の中に階段がある。

伊織は建物のドアを開け、 私の手を離した。

河合 絢芽

(手、もうちょっと
繋ぎたかったな…。)

建物に入ると、目の前に10段ほどの階段があった。

伊織は階段をのぼっていったから 私もそのあとについていった。

河合 絢芽

(…あれ。)

河合 絢芽

(…何か、伊織の左足、階段をのぼるとき、ぎこちない。)

河合 絢芽

(…怪我でもしてんのかな?)

ガチャ。

月島 伊織

どう?

月島 伊織

綺麗じゃない?

目の前には海が果てしなく広がっていて、空は深い青色。

河合 絢芽

…綺麗。

月島 伊織

ここ、俺のお気に入りの場所。

月島 伊織

何かあったらすぐここに来るんだ。

河合 絢芽

…そうなんだ。

なんか、君といるときは 仮面が自然に剥がれた。

それがなんでか分からなかった。

河合 絢芽

日、すっかり暮れたね。

月島 伊織

うん。

月島 伊織

帰らなくていいのか、絢芽。

河合 絢芽

いいの。まだ、ここにいたい。

スマホの時計を見ると もう18時だった。

河合 絢芽

…ねぇ。

月島 伊織

ん?

河合 絢芽

伊織は好きな人いる?

月島 伊織

ははっ。急だな。

月島 伊織

なんだそれ。
俺はいないよ。

河合 絢芽

(い、いないんだ。
じゃあ、私にもまだチャンスはあるかな?)

月島 伊織

俺は彼女作る気ないよ。

河合 絢芽

え…

河合 絢芽

なんで?

そう言うと、伊織は 悲しい顔をして笑った。

河合 絢芽

(…作る気はない…)

河合 絢芽

(じゃあ、私の気持ちはどうなるの?)

月島 伊織

絢芽は、好きな奴いんの?

河合 絢芽

…いるよ。

月島 伊織

へぇ?笑

月島 伊織

クラスの奴か?

河合 絢芽

…そーだよ。

月島 伊織

誰?

月島 伊織

協力してやろっか?笑

河合 絢芽

協力なんていらない。

河合 絢芽

というか、出来ないよ。

月島 伊織

いらんの?笑
じゃあ、誰?

河合 絢芽

…お前だよ、アホ。

あ、素の自分が…。

河合 絢芽

(勢いで言っちゃった。)

伊織はまた悲しい顔をした。

月島 伊織

気持ちは嬉しい。

月島 伊織

俺も絢芽なら、付き合いたい。

河合 絢芽

じゃあ!

月島 伊織

でも、無理だ。

月島 伊織

やめといた方がいい。

河合 絢芽

…なんでっ?

月島 伊織

俺と付き合わない方がいい。

月島 伊織

きっと後悔するから。

河合 絢芽

(…後悔?)

河合 絢芽

(前、伊織が言ってたこと言い直してやろうか?)

河合 絢芽

私には私の気持ちがある。

河合 絢芽

人それぞれ、気持ちは違う。

河合 絢芽

私は違う。

河合 絢芽

勝手に決めないでっ!

河合 絢芽

…私は後悔なんてしないっ!!!

伊織は一瞬、目を見開いて お腹を抱えて笑いだした。

月島 伊織

はははっ!!

月島 伊織

絢芽は本当に面白いな。

月島 伊織

確かに、勝手に決めつけるのは良くないよな。

月島 伊織

でも、本当にいいの?

伊織は座っていたところから立ったから、私もその場を立った。

河合 絢芽

…いいよ。

月島 伊織

後悔、しないでね?

河合 絢芽

…うん。

そう言うと、伊織は 左足の制服のズボンの裾を持った。

そしてゆっくりと持ち上げた。

河合 絢芽

…え。

そこに伊織の本物の足首はなく、 義足がはめられていた。

月島 伊織

…な?

月島 伊織

だから、言っただろ?

月島 伊織

やめといた方がいいって。

一瞬、足を見て固まったけど

私の気持ちは 変わるはずがなかった。

河合 絢芽

…それが何?

河合 絢芽

私は気にしない。

河合 絢芽

私は伊織が好きなの。

月島 伊織

でもさ、俺

月島 伊織

障がい者なんだよ?

月島 伊織

これでもまだ好きって言える?

河合 絢芽

障がい者だからって何?

河合 絢芽

他の人と何が違うわけ?

河合 絢芽

皆、一緒でしょ?

河合 絢芽

私の気持ちは1ミリも変わらない!!

伊織が瞳から涙を溢した。

それはまるで滝のように。

止まることなく、 流れ続けた。

河合 絢芽

…え?

河合 絢芽

い、伊織?どうしたの?

月島 伊織

…そんなこと、言われたの初めてで。

月島 伊織

…俺は、邪魔者扱いされるだけだった。

月島 伊織

…障がい者だからって。

月島 伊織

それなのに、絢芽が。

月島 伊織

今まで、俺が抱えていた、…
…悩みを

月島 伊織

消し、去るように、

月島 伊織

皆、一緒でしょ?って。

月島 伊織

…嬉しかった。

月島 伊織

俺を普通の人と見てくれてっ!!

言葉は何げない一言でも 相手を傷つけることがある。

それは自分が良くても 相手には 傷つく言葉かもしれない。

河合 絢芽

…。

河合 絢芽

(…そうだったんだ。)

河合 絢芽

私、それでも伊織の事が好き。

月島 伊織

…頑固だな

月島 伊織

絢芽は。

河合 絢芽

私、ずっと見てたの。

河合 絢芽

隣の席から。

河合 絢芽

隣の席になってから

河合 絢芽

伊織のことばっか見てた。

月島 伊織

ははっ!

月島 伊織

俺の方が少し先輩だな。

月島 伊織

俺は入学式でお前を見つけた。

月島 伊織

こんな俺でいいなら

月島 伊織

付き合って

河合 絢芽

うん、こちらこそ。

星空の下、 伊織は私にキスをおとした。

それから私たちは ずっと一緒にいた。

河合 絢芽

ねぇ、伊織!

河合 絢芽

今日帰りに行きたい店があるの!

月島 伊織

ああ、行こっか。

河合 絢芽

(…いつもは明るかった伊織が)

最近、 あまり元気がなくなった。

河合 絢芽

(どうしたんだろ。)

河合 絢芽

あ、美味しい。

私が行きたかった店。 パンケーキ屋さん

河合 絢芽

(1度は行ってみたかったんだよね~)

河合 絢芽

(電車で30分乗って
来たかいがあった。)

河合 絢芽

美味しい~!

河合 絢芽

(口に入れた瞬間、溶けてなくなる。)

河合 絢芽

(甘い。)

月島 伊織

…う、見ただけで胸やけしそう。

月島 伊織

女子はよくそんなのペロリと食べるよね。

伊織はアイスミルクティーを 口に含んだ。

河合 絢芽

スイーツは別腹なの!

河合 絢芽

伊織もパンケーキ食べればよかったのに。

河合 絢芽

美味しいよ?甘くて。

私はパンケーキを口にしようとしたとき

伊織がパクッと食べてしまった。

月島 伊織

おっ、うまい!

河合 絢芽

え、えええええ!!!

河合 絢芽

そ、それ!!

河合 絢芽

最後の一口だったのに…

月島 伊織

悪いな、絢芽。笑

河合 絢芽

悪いと思ってないでしょ!?

河合 絢芽

…ひどい!!

月島 伊織

今度、何かおごってやるよ

河合 絢芽

え!?

河合 絢芽

ほんと!!?

月島 伊織

ふっ

月島 伊織

可愛いな、絢芽は。

河合 絢芽

…え。

カッと顔があつくなった。

月島 伊織

そうやって、コロコロ表情が変わるのが好き。

月島 伊織

やっぱり、仮面を被ってない、
素の君が好き。

河合 絢芽

…そう、かな。

月島 伊織

…帰ろっか。

河合 絢芽

うん!!

楽しかったその日も

あっという間に終わって

1つの思い出になった。

楽しかった。

この日はきっと忘れないだろう。

しかし、次の日から

終わりを告げた。

おごってもらう約束は果たされず

塵になった。

伊織が姿を現さなくなった。

学校にも来なくなって、

連絡も返事が返ってこない。

私の目の前から消えてしまった。

河合 絢芽

…はぁ。

友達

伊織くん、今日も来てないね。

友達

何かあったのかな

友達

連絡もないんだよね?

河合 絢芽

…うん。

伊織がいなくなって 1ヶ月がたった。

友達

彼女をほっておいて何してんだよ、伊織の奴。

河合 絢芽

何かきっと訳があるんだよ。

河合 絢芽

だって、急にいなくなるなんて何かあったんだ。

友達

…絢芽は優しいね

友達

私ならぶちギレてるよ笑笑

友達

というか、
最近の絢芽、何かいいな。

河合 絢芽

え?

友達

…なんか、明るくなった!!

河合 絢芽

そ、そうかな?

いつの間にか

仮面なんて 剥がれてしまっていた。

伊織と毎日、過ごしてたから

…仮面のつけ方忘れちゃったんだ。

全部、全部。

伊織のおかげだ。

河合 絢芽

私、伊織、探してくる!!

友達

え!?
どうやって!!?

河合 絢芽

何とかする!!

今、会いたい人がいる。

どうしようもなく

君に会いたい。

会って 話したいことがあるの。

言いたいことがあるの。

河合 絢芽

(…どこにいるの!?)

河合 絢芽

ねぇ!!!

河合 絢芽

伊織!!!

私はただひたすら走った。

行くあてもなく、 ただただ道をさまよう。

河合 絢芽

あ、もう夜だ。

もう、伊織が行きそうなとこ 探したし

もう、行くとこない。

足もガクガクする。

河合 絢芽

(…お腹すいた。)

河合 絢芽

(疲れた。)

河合 絢芽

(もう、帰って寝たい。)

ふと横を見ると、 細い道があった。

河合 絢芽

あ!!

河合 絢芽

ここ、行ってなかった。

初めて、伊織と話した場所。

喧嘩した場所。

私は細い道を走った。

最後の力を振り絞って。

河合 絢芽

…はぁ、はぁ。

小さな建物の上に君がいた。

河合 絢芽

…やっと見つけた。

小さな建物のすれすれに 君が立っていた。

河合 絢芽

(何、してるの?)

下には深い海があって、 落ちたら…死ぬ。

河合 絢芽

(まさか、死ぬつもり?)

伊織は右足を一歩前に踏み出そうとしていた。

河合 絢芽

…待って!!!!

河合 絢芽

伊織!!!

私は大声で叫んで、 小さな建物の上まで走った。

河合 絢芽

(…待って。)

河合 絢芽

(私を置いて行かないで。)

河合 絢芽

(私は君に)

話したいことが いっぱいあるんだから!

ガチャ!

河合 絢芽

…伊織!!!

月島 伊織

え…

伊織は私に気づいたのか右足を縁に戻して、振り返った。

河合 絢芽

伊織…。

振り返った君は 涙でぐちゃぐちゃだった。

月島 伊織

…、あ、やめ。

月島 伊織

…何、してんの。

君の声はかすれていて 今にも消えそうだった。

河合 絢芽

伊織こそ、何してんのよ!!

私は伊織を縁から遠ざけて 押し倒した。

ドンッ!!

伊織が床に寝転がって 私が伊織を覆うように伊織の上に。

月島 伊織

…。

河合 絢芽

…今まで何してたの!!?

河合 絢芽

連絡も何もくれないでさ!!

河合 絢芽

学校にも来なくてさっ…

私は伊織の顔に 涙を落としていった。

河合 絢芽

…私、ずっと探してたのよ!?

月島 伊織

…ごめん。

河合 絢芽

なんで?

河合 絢芽

どうしてっ!?

涙が止まらなかった。

河合 絢芽

会いたかった。

私から伊織にキスをおとした。

月島 伊織

月島 伊織

急にいなくなったりして

月島 伊織

悪かった。

河合 絢芽

どうして、いなくなったの?

月島 伊織

もう、必要ないと思ったから。

月島 伊織

やっぱり、

月島 伊織

怖くなった。

月島 伊織

いつか、お前から手を離されるんじゃないかと思った。

河合 絢芽

…私はそんなことしない!!

月島 伊織

前の奴も同じことを言ったよ。

河合 絢芽

前の奴?

月島 伊織

絢芽と付き合う前、

月島 伊織

中学生の時に付き合ってた女がいたんだ。

月島 伊織

けど、手を離された。

月島 伊織

…やっぱり、

月島 伊織

障がい者無理だって。

河合 絢芽

…。

月島 伊織

だから、今度は俺から手を離そうと思った。

月島 伊織

…思ったのに。

月島 伊織

俺は絢芽といれて幸せだった。

月島 伊織

だから、何の悔いもなかった。

月島 伊織

この世界に俺は
必要とされてないし、

月島 伊織

だから、死のうと思った。

パァン!!

河合 絢芽

馬鹿!!!

私は伊織の頬を 思いっきり叩いた。

月島 伊織

…痛。

河合 絢芽

なんで?

河合 絢芽

私の気持ちは?

河合 絢芽

誰も必要としてないって?

河合 絢芽

私が伊織を
必要としてんだよっ!!

河合 絢芽

私には悔いが残ってる!!

河合 絢芽

前の女なんて知らない。
私は私。

河合 絢芽

人それぞれ違うって言ってんじゃん!!

河合 絢芽

馬鹿、馬鹿、馬鹿。

私は伊織の胸をポカポカ叩きながら、涙を溢した。

河合 絢芽

私は伊織にいいたいことがあって探した。

河合 絢芽

…聞いて。

河合 絢芽

私が仮面を被ってた理由。

河合 絢芽

それは、前の私が嫌いだったから。

河合 絢芽

私は中学生の時、一回

河合 絢芽

道をはずれたんだ。

河合 絢芽

不良だったのよ。

河合 絢芽

ピアスもいっぱいあけてた。

私は下ろしてる髪の毛をかきあげて ピアスの穴を見せた。

河合 絢芽

5、6個はあいてるかな。

河合 絢芽

今は見られたくないから

河合 絢芽

髪を伸ばして、隠してるけどね。

河合 絢芽

見えないでしょ?

河合 絢芽

不良だっただなんて

河合 絢芽

親にも心配かけまくって

河合 絢芽

ほんと、馬鹿みたい…

私は顔を手で隠した。

河合 絢芽

でも、伊織のおかげよ。

河合 絢芽

私の仮面を剥がしてくれたことで

河合 絢芽

皆がよろこんでくれたの。

私はもう一度、伊織の顔を見た。

伊織も同じように泣いていた。

河合 絢芽

私を救ってくれて

河合 絢芽

ありがとう。

河合 絢芽

私は伊織が必要なの

河合 絢芽

必要としてるの

河合 絢芽

だから、死ぬな

河合 絢芽

伊織!!

河合 絢芽

障がい者のことでも

河合 絢芽

なんでも。

河合 絢芽

辛いことがあるなら

河合 絢芽

私にぶつけろ!!

河合 絢芽

全部、受け取ってやるから。

月島 伊織

…。

月島 伊織

絢芽、絢芽…

月島 伊織

…絢芽!!!

月島 伊織

俺、辛かったっ!

月島 伊織

死にたかった

月島 伊織

皆、冷たい目で見てきて

月島 伊織

辛かった。

月島 伊織

もううんざりだった。

河合 絢芽

…そっか。

河合 絢芽

そうだったんだね。

私は伊織を優しく包んだ。

月島 伊織

俺、生きててもいいのかな

月島 伊織

絢芽。

河合 絢芽

うん。

河合 絢芽

生きて。

河合 絢芽

私が辛いことがあったら

河合 絢芽

すぐに助けに行くよ。

月島 伊織

ははっ。

月島 伊織

絢芽は俺のヒーローみたい。

河合 絢芽

…ただの不良よ笑

私たちは星空の下、 大きく見つめ合って笑った。

月島 伊織

俺、絢芽の中で何度も叫ぶかもしれない。

河合 絢芽

うん。

月島 伊織

また逃げるかもしれない。

河合 絢芽

うん。

月島 伊織

それでも、俺の事

月島 伊織

好き?

河合 絢芽

うん。

河合 絢芽

大好きに決まってんでしょ?

私が笑ったから 伊織もニカッと笑った。

月島 伊織

うん、俺も大好き。

月島 伊織

あぁ、良かった。

月島 伊織

絢芽に会えてほんとに良かった。

河合 絢芽

私も。

月島 伊織

何度も何度も俺は

月島 伊織

君の中で僕は叫ぶよ。

月島 伊織

愛してるって。

俺は絢芽にキスをおとした。

こんなに空が綺麗だから

この日もきっと

良い思い出になるだろう。

ーENDー

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ユーザー

天才…💕

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