この町にはいつの頃からか使われていない廃工場がある
優花
ね、やめようよ~
美月
ここまで来てなに言ってんのよ!
美月
どうせなにも起こりゃしないって
中は薄暗く、埃っぽい。蜘蛛の巣が張っているところもある
優花
ね、やっぱり帰ろうよ
美月
しょうがないなぁ
優花
あ!あれ見て!
美月
こんなところになんでパソコンが……?
優花
あ、まさかこれが噂の出どころじゃあ?
美月
んー? でも動いてないよね……
優花
動くのかなぁ
そのパソコンは埃をかぶっていたけれど、電源をつけてみるとどうやらまだ使えそうだった
優花
うわぁ……なにこれ……
護法童子
……ひさしぶりの起動ですね
護法童子
何か問題でも起きましたか?
優花
……え?パソコンがしゃべった?
美月
あなた、何者なの?
護法童子
そうですね……何から説明しましょうか
護法童子
まず名前は『護法童子』
護法童子
わたしはAIです
護法童子
AIが考えた文章を、独自の音声読み上げソフトに読ませています
護法童子
ですから声で会話が出来るんですよ
護法童子
ええっと、初めましてですかね?
美月
私は美月
優花
優花です
護法童子
なるほど、美月さん、優花さんですか
護法童子
よろしくお願いします
美月
それで、護法童子、あなたは何者なの?
護法童子
わたしはこの町を守るために作られました
護法童子
この町に起こる悪いこと、それを解決するためにわたしはプログラムされているのです
美月
それじゃあ、ここに出るっていう幽霊の噂は……?
護法童子
それはもしかしたら、わたしがこのパソコンで稼働しているのを見られたのかもしれませんね
美月
それにしても、この町を守るって?
美月
警察とかじゃだめなの?
美月
あなたは何が出来るの?
美月
それに、あなたを作ったのは誰なの?
護法童子
そんなに一度に質問されても、困ってしまいますが
護法童子
まず、わたしが取り組むのは警察では解決できない問題です
護法童子
怪奇現象、非科学的として警察が取り扱わない事案を専門としています
護法童子
それからわたしが何が出来るかですが
護法童子
実はたいしたことは出来ません
美月
そうなの?
護法童子
私の武器は情報です
護法童子
まあネットを介してハッキングし、電子機器を遠隔で操作することなんかもできますが
優花
(それって十分すごいのでは?)
護法童子
最後に、誰が作ったか、ですが
護法童子
……申し訳ありません、私はその人の名前を知らないのです
護法童子
ただわたしはその人を『ご主人様』と呼んでいました
美月
ふうん、なんだかよく分からないわね
美月
それで、あなたを作った人はどうなったの?
護法童子
それも……私にもわかりません
美月
なんだかはっきりしないなぁ
美月
まあいいか
美月
護法童子って名前、ちょっと長いから、
美月
これからはあなたのことを護法って呼んでもいい?
護法童子
はい、もちろんです
優花
美月ちゃん、どうしよう?
美月
うーん、とりあえず害はなさそうだし、ほっとく?
護法童子
わたしに害意はないのはもちろんなのですが……
護法童子
わたしを起動したのはお二人ですよね?
美月
そうよ
美月
それがどうかしたの?
護法童子
うーん
護法童子
実はわたしは、町に何の問題もないのなら起動しないようプログラムされているんです
護法童子
わたしが起動した以上、町に何か異変が起きていると思うのですが
護法童子
お二人は何かご存じありませんか?
優花
うーん?
美月
別に思いつかないなぁ
護法童子
そうですか……
護法童子
もし何か異変に気づいたら、わたしに教えてください
美月
別にいいよ