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奔放主は今日も気まぐれ

第6話 - 第6話

537

2024年07月22日

#司類

#冬類

#彰類

#類愛され

#瑞類

あかまる🍓🐾໊

街の外れに、恐らくは大半の人々から忘れられてしまったであろう社がある。

だけど、そこは俺にとっては特別な場所だった。

司

……はぁ、またか。

類

あれ、もう見付かっちゃったのか。

司

いい加減、勝手に抜け出すのをやめたらどうだ？

類

だってこうでもしないと自由に歩き回れないんだもん。

司

それにはちゃんと理由があると分かっているだろう？

類

……

類

それとこれとは別さ。

類

理解は出来ても、納得出来るわけじゃないからね。

司

…

司

そうか。

類

おや…今日は「早く帰るぞ！」って言わないのかい？

司

言ってもどうせ聞かんだろ。

類

フフ…どうだろうね。

俺は類の隣に静かに座った。

類

おや、珍しい。

司

気分だ、気分。

類

ふふ、そっか。

類

あ〜あ、君が僕を探すのに苦労してた時期が懐かしいな〜

類

今はもう一瞬で見付かっちゃうもんね。

司

まぁ、お前の行動と思考が段々読めてきたからな。

類

優秀なストーカーだな〜

司

だれがストーカーだ‪💢

類

フフ…

類

…こういう、夕方になるとさ。なんていうか…感傷に浸るって言うのかな？不思議な気持ちになるよね。

司

…分からんな。

類

おや、そうかい？

類

僕は色々考えちゃうなぁ……

司

…

司

…冬弥が心配するぞ。

類

ふふ、それは良くないね。

類

彼にも…彰人くんや他の家臣達にも、心配はかけたくないなぁ…

司

…俺にはいいのか？

類

フフ、僕なりに甘えてるんだよ。

類

だって君は…良く言うと忠実だし、口も硬い。甘える相手としては最適だと思うんだよね。

司

……

司

信用されていると受け取っていいのか？

類

あぁ、そうしてくれて構わないよ。

司

…そうか。

類

あ〜あ、まだここにいたいなぁ…

橙に照らされた横顔が、昔の記憶を彷彿とさせた。

俺が類に仕えたのは今から6年前のこと。

類の父

君の役割は、俺の息子の護衛だよ。

類の父

ちょっと自由奔放なところもあるけど…まぁ、よろしく頼むね。

司

承知致しました。

類の父君…神代家元当主に、俺は類の護衛として雇われた。

初めはただの子守り程度に思っていた。

当時、類は17歳で俺は19歳。

俺は里でも優秀な忍だったし、1人の護衛くらい何ともないと思っていた。

…そう、思っていたんだ。

俺が少し目を離してしまった時だった。

バタバタ

司

(…？騒がしい、？)

家臣

類様？！類様はおられぬか？！

冬弥

ダメです、あっちにもいませんでした…

司

何っ？！

冬弥

わっ？！え、あ、えっと…司様？

司

さっきまで主殿はここにいたはず……

しかし、見渡してもいないどころか気配すら無かった。

司

あの一瞬で？！

冬弥

えっと…類様は、よく屋敷を抜け出すんです。

冬弥

あれだけ目立つはずなのに、いつも全く見つからなくて…

司

な……

顔が青ざめていくのが自分でも分かった。

折角雇われたのに、きちんと仕事をこなせなければ解雇になるだろう。

司

(何としてでも見つけださねば…！！)

街

司

(…見当たらんな、)

司

(一体どこへ行ったんだ…！？)

司

(落ち着け、冷静に…見付けることだけを考えるんだ。)

司

(もし…誘拐でもされていたら…)

司

(…向こうも探そう)

しかし、アイツを見つけ出すのは至難の技だった。

司

(いない、)

司

(いない、)

司

(ここにもいない、)

司

(もう日暮れだ…)

司

(本当にどこへ行ってしまったんだ…まさか、本当に誘拐…！？)

司

(となると、俺は……)

類

あれ

司

は？

類

君は…えっと、新しい護衛くんだっけ？

司

な、は、は？！？！

司

おまｯ、じゃなくて、主殿！！こんな所で何をなさっていたんですか？！

類

ん〜？散歩だよ。

司

は？？？

類

ほら、ふらっと外に出たくなることってあるだろう？

司

いや、はぁ…！？！？

司

(本当に自由奔放というか…あまりにも自由過ぎではないか？！)

司

(というか、どうやって俺を撒いた…！？)

司

(全く音がしなかったどころか、気配すらしなかったぞ…？！)

類

…君、忍なんだっけ？たしか、甲賀の。

司

…は、はい。

類

ふぅん…父さん、とうとう忍まで雇ったんだね。

司

…？

類

あぁ、いや…

類

君は…いつ辞めちゃうかなって思ってさ。

司

…どういう意味ですか？

類

そのままの意味だよ。僕の護衛として雇われたのは、君が7人目なんだ。

司

はぁ…

司

その…6人は全員辞めたと言うことですか？

類

ああ。みんな、1週間足らずでね。

司

…何故？

類

さぁ？僕の奔放具合にうんざりしたんじゃないかな？

類

ん〜…君も、辞めるなら早めにね。

気丈そうに言い放ったが、その顔はどこか寂しげだった。

司

辞める予定はありません。俺の主は貴方です。

司

そろそろ帰りましょう。

類

ふぅん……

類

まぁ、そうだね。見つかっちゃったし帰ろうかな。

自意識過剰かもしれないが、その時の類は少し嬉しそうだったと思う。

それからもしばらくは大変だった。

司

主殿！！またこんな所に…！！

類

おや、今回は2時間程度で見付かっちゃったね。

類

ふふ、前回よりも30分縮まったよ。

類はことごとく俺の目を盗んで屋敷を抜け出した。

司

呑気なこと言ってないで、帰りますよ‪💢

類

え〜

司

冬弥殿も心配していましたよ！全く…

類

ふふっ、は〜い。

司

おまｯ…主殿！！風邪引きますよ！

類

おや、護衛くん。

類

だってほら、雪がこんなに積もってるんだよ？遊びたくなるだろう？

司

なりません‪💢

類

ふ〜ん？

司

ほら、早く帰りますよ…

突如視界に白いものが迫ってきた

ボスッ!!

司

？！

飛んできたのはどうやら雪玉のようだ。

司

なｯ、おま…！？

類

ふふっ、隙ありだよ。

司

…‪💢

類

やり返さなくていいのかい？

司

あ…主にそんな無礼は働きません。

類

へぇ？かなり殺気立ってたけど？

司

…気のせいです。

類

ふぅん、つまらないの。

本当に…色々大変だった。

司

おま…主殿、こんな所にまで…

類

おや…今回は見付からないと思ったのだけれど、

司

屋敷からどれだけ離れてると思ってるんですか？

司

自力じゃ帰れないクセに、そんな遠くまで行かないでください…

類

…

類

ごめんね。

司

ほら、帰りましょう。

類

ん…そうだね。

そんな事ばかりが続いたある日。

とうとう、耐えれなくなった。

司

貴方は本当に…っ！！何度言ったら分かるんですか！？

類

知らないよ。どこに行こうが僕の勝手だろう？

司

仕事が増えるこっちの身にもなって下さい！！

類

そんなの僕の知ったことじゃないよ。嫌なら辞めればいいじゃないか。

司

はぁ？！？！

今思えば、どちらも幼稚だったと思う。

しかし、その時はどうも冷静にはいられなかった。

司

……なら、もう勝手にして下さい！！

司

そんなに俺に辞めて欲しいのなら、お望み通り辞表を出しに行きましょう！

類

…

類

そうか。

それは失望したような、安心したような、どちらとも言えないような声だった。

司

…っ

俺は苛立ちのまま、主を置いて辞表を出すつもりで、屋敷へ帰った。

司

(何なんだ、あの態度…‪💢)

司

(こっちの気も知らないで、あんな…)

そんな時だった。

冬弥

あ…あの、司…様？

司

あ"？

冬弥

ﾋﾞｸｯ

司

あ…申し訳ない。どうされた？

冬弥

い、いえ…その、類様は…と思って、

司

あ……

司

…申し訳ない。置いてきました。

司

それと、勝手ながら、今日を以て辞表を出そうと思います。

冬弥

えっ

冬弥

辞めてしまうんですか…？

司

…はい。

冬弥

言いたいことは…分かります。今まで、恐らく司様と同じような気持ちになり、辞めていかれた方も沢山います。

冬弥

でも……

司

…今なら、辞めていった者の気持ちが分かります。

司

あの方は自由奔放過ぎる。あまりにも酷い。

冬弥

…

司

けど、俺が…1番気に食わないのは、

司

ああやって抜け出して、逃げて、こちらを試すような事をいつまでも続けていることです。

冬弥

…！

そう、俺は気づいていたんだ。

類がああやって抜け出すのは、こちらの気を引くためでもあり、俺を試しているからだと。

司

別に、信用されたいとは思っていません。

司

実際、まだ仕えて日も浅いですし、それは仕方ない事だと思っています。

司

けど、あの方はあまりにも幼稚過ぎる。こっちの気も知らないで、いつまでもあんな試すような態度を取られたら、誰だっていい気はしません。

冬弥

それは…

冬弥

そうですか…貴方は、そこまで気付いて…

冬弥はそこまで言って、言葉を詰まらせた。

言っていいかどうか、迷っているようだ。

司

…どうせ辞める身です。言いたいことがあればお好きにどうぞ。

冬弥

…分かりました。

冬弥

司様は…類様の気持ちを考えた事はありますか？

司

…は？

司

主殿の気持ち…？だから、俺を試しているんでしょう？

冬弥

そういう事じゃありません。

冬弥

…嬉しかったんだと思いますよ。類様、貴方が見付けてくれて。

冬弥

貴方が類様にお仕えになって、初めて抜け出した日…「僕のことを見付けてくれたんだ」と、嬉しそうにしてらっしゃいました。

司

…

冬弥

それだけじゃないですよ。貴方といて、類様はとても楽しそうでした。

冬弥

類様は…護衛が辞める日、いつも何事も無かったかのように振舞っていますが…本当は、とても悲しんでおられる事を、ここにいる全員知っています。

気が付くと、屋敷の家臣達が集まっていた。

家臣

類様は昔から寂しがり屋で、それでいてとても不器用でして…

家臣

素直じゃない時は本当に素直じゃないんですよねぇ

家臣

そうそう。意地っ張りというか、負けず嫌いというか。

家臣達は懐かしむように、愛しそうにそう語っていた。

司

…それで、冬弥殿は俺に何が言いたいんですか？

司

辞めるなと説得したいんですか？それとも、主殿を悲しませるなとの説教ですか？

冬弥

どちらでもありません。

冬弥

私はただ、「類様」のことを知って欲しいだけです。

司

…なら、主殿の事をよく分かっている、あなた方が護衛をすれば良いのでは？

司

わざわざ人を雇うのは何故です？

冬弥

それは…当主様の意向ですので、我々は何とも…

当主様とは、類の父君の事だ。

家臣

護衛には、昔冬弥様が名乗り出たのですが…何故か、当主様が反対なさりまして、

家臣

類様の護衛には、必ず外から雇った者を仕わせるんです。

家臣

我々が出来れば、護衛をしたいのですが…

家臣

当主様のお心に逆らう訳にもいかず…

司

…なるほどな。

司

事情は理解しました。

冬弥

…

司

少し、出掛けてきます。

冬弥

？

司

…やっぱり、直接文句を言ってやらんと気が済まないので。

冬弥

！

司

すぐ戻ります。

冬弥

司様！

冬弥

…ありがとうございます、！

司

…辞表の意が消えたわけではありませんよ。

類

……

司

やはりここだったか。

類

！

類

護衛くん…

司

言っておくが、迎えに来たんじゃない。文句を言いに来たんだ。

類

文句？

司

…お前は幼稚すぎる。

類

へ？

司

俺を試しているのかは知らんが、いつまでもそんな態度を取られると普通に腹が立つ。

類

え

司

それと、ちょっとは素直になったらどうだ？言わなきゃ伝わらないことだってあるだろう。

類

う、

司

不器用で意地っ張りなのは分かる。正直俺も似たようなものだからな。だが、あんまり甘えるな。

司

お前の家臣達のように、俺はお前の事をよく知っているわけではない。

司

だから、「何も言わなくても分かってもらえる」とか、「自分はこういう性格だから」だとか、こっちの知ったことじゃないんだ。

司

いつまでも甘えてるんじゃない。そんなだから、護衛も辞めていくんだろう。

類

う…

司

はっきり言う。お前は面倒くさい。

類

うっ…

司

それと…

類

ち、ちょっと待って！

司

む、

類

思ったより心にクるから勘弁して欲しいな…

司

…

類

…悪かったよ。

類

君の言う通りだ。正直、自分でも幼稚だったと思うよ。

類

…嬉しかったんだ。君が、見付けてくれるのが。

司

…

類

どこまで許してくれるかなって…ここにいても、見付けてくれるかなって、思ってる内にさ、

類

みんな…いつも辞めてっちゃうんだ。

類

君は…護衛の中でも、長く続けてくれた方だったし、かならず諦めずに見付けてくれた。

類

だから…今回はって、思ったんだけど、

類

…すまない。勝手に期待して、迷惑をかけてしまった。

類

どうぞ、辞めるなら好きにしてくれ。まだ文句があるのなら、受け入れよう。

司

だからお前、そういう所が面倒くさいって言ってるんだぞ。

類

え、

司

お前のその…なんて言うんだ、なんと言うか…とにかく面倒くさい！

類

…

類

…ふふっ、何だい？それ、

類

ここまでハッキリ言われたのは初めてだよ。何だか清々しいね。

司

お前はもう少しハッキリ言え。分かりづらい。

類

ふふっ、そうかい。そうだねぇ、そうするよ。

司

(…やけに聞き分けが良くなったな、)

類

ねぇ、護衛くん。名前なんて言ったっけ？

司

…司だ。

類

そうかい。僕は類だよ。

司

知っとるが…？

類

ふふっ、ねぇ司くん。

類

…すまなかった。僕は自分が思っている以上に、甘えてしまっていたみたいだ。

類

さっき、素直になれって言ったよね？

司

…ああ、言ったな。

類

じゃあ…

類

…辞めないで欲しいな。

司

…それは命令か？

類

いいや、素直な僕の気持ちだよ。

類

…君に、辞めて欲しくないな。

司

…

司

帰るぞ。

類

！

司

冬弥殿が心配するぞ、類。

類

うん！

あれから色々あって、もうかれこれ6年。

ここは、「類」を初めて知った場所。

だから、俺にとっては特別な場所なんだ。

類

おーい、司くん？

司

ん？

類

ずっと声掛けてたのに、君ってば気付かないんだから。

司

すまんすまん。

類

考え事かい？

司

ああ、少し昔を思い出してた。

司

あの頃のお前は本当に幼稚だったなと。

類

なっ、そ、それは…もう6年も前の話だよ？！

類

それに、君だってまぁまぁ幼稚だったし…

司

それは…否定せん。

類

ふふ、でもここだったよね。君が僕に文句言いに来たの。

司

まぁな。

類

あれは衝撃だったなぁ…あんな風に言われたの、初めてだったから。

司

…正直、あの時俺は辞める覚悟で言った。

司

でなきゃ、主にあんな風に言えん。

類

ふふ、そうだね。それが普通だ。

類

ふわぁ〜…だいぶ日も落ちてきたね。お腹も空いたし、そろそろ帰ろうか。

司

あぁ、そうだな。

俺にとって特別な場所。

これからもきっと、その先も変わらないんだろう。

この作品はいかがでしたか？

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6件

そんなに長く続けられるの凄いな､､､家臣たちもいい人だし主もいい人なんだろなって思う。今回もめっちゃ面白かったです！！続き楽しみです！

ゆ、指が勝手に大量の♡を…😚 最初の方は類への名前の呼び方が「お前」って言いかけてすぐ「主」への言葉になってたけど今は「類」になってるの細かくてめちゃくちゃ好き！！！！良い主には良い家臣が集まるんだなぁ…🥰 いつも通り長文失礼、今回もめちゃくちゃ面白かった！！✨最高！！🥰🥰🥰😍😘

あかまる🍓🐾໊

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