俺の後ろに隠れる桜君を 気にしながら、 桜君が大好きな 食べ物を食べに、 ポトスの扉を開けた。
周りをキョロキョロ見回す 君が、本当に可愛くて仕方がなかった。 俺の背後にいる当たり、 少しは心を開いてくれたんじゃないかと 少し浮足がたった。
ことは
久しぶりじゃない!
怪我大丈夫!?
ことは
偉いじゃない~!
ことは
中に入ると陽気な 声が聞こえてきて、 急に自分の名前を 呼ばれた桜君は ビクリと身体を震わせた。 年齢が少し低いからか、 俺たちが出会った当初より 威勢はなく、 少しあどけない。
蘇枋
簡潔にまとめますが、
色々あって今桜君の記憶が
無いんです。
ことは
ことは
私らが知ってる桜じゃないって事ね
蘇枋
詳しい事情は聞かず、 全て飲み込んで ことはさんは桜君に話しかけていた。 人を怖がる目をした桜君は 自分のペースをかき乱す様な 明るい声をしたことはさんに 少し困惑をしていた。
ことは
今何歳?
桜
素っ気なく返した言葉。 その顔は少し赤く火照っていた。 病室で初めて俺にあった時とは すごい違いだ。 敵意をむき出しにしていた目は、 今では照れくさそうに下を見ていた。
これも色んな人と関わった お陰なのだろうか。 幼い君の記憶に、 少しでも楽しい思い出が残ればいいな。 その願いはきっと君には 届かないだろう。 俺は顔を赤くした君を 優しい顔で見つめた。
ことは
桜
よく分からないと言う顔を しながらも 小さい声で頷いていた。 身長等は 元の桜君のままなのに、 少し幼いその性格の所為か、 少し低い身長が さらに低く見えた。
ことは
桜
ことは
蘇枋
蘇枋
ジュースでも頼もうか
桜
そのこーひー?とかいうの
飲んでたのか?
ことは
毎回って言うほど飲んでたわよ
桜
蘇枋
今の桜君には
少し厳しいんじゃ…
年齢も下がっているから、 舌の感覚も子供っぽいのでは? と思ったので辞めた方が 良いと思ったのだが、 彼の何かを刺激してしまったのか、 ヤケになって 絶てぇ飲むっ!!! と言い出した。 言い方は少し幼いが、 こういうことを言われると 意地でも飲むという姿勢は、 君のままだった。
ことは
ことは
そこの保護者にでも
飲んで貰いなさ~い笑
俺達が付き合っていたのを 知ってるからか、 保護者というワードを使い、 関節キスを促してきた。 付き合ってしばらく経つが、 俺の恋人は極度の恥ずかしがり屋だ。 まだ関節キスすらしたことが無いのになと、俺の思考にでてきた。
桜
蘇枋
落ち着いて
桜
いつも甘そうな茶しか飲んでねぇ
じゃん。
蘇枋
水しか飲まないくせに~
彼が水しか飲まないのは、 きっと透明な飲み物に 安心感か何かを覚えて いるからだろうか。 昔、飲み物に何か 盛られたのだろうか、 彼は頑なに水ばかり 飲んでいた。 そんな彼が急に珈琲を 飲みたいと言い出したのは もちろん驚いた。
ことは
突っ立ってんの!
さっさとカウンター席座りなさいっ!
蘇枋
桜君。座ろうか
お互い深いことは干渉しない 様にしているが、 彼の行動やこぼれ落ちた言葉には、 彼の心の闇が垣間見え、 俺の心を抉った。 苦しくてつい胸を抑えるが、 彼にはすぐ気づかれてしまい どこかしんどいのかと、 心配までさせてしまった。
ことは
目の前に出された オムライスに顔が 一気にパッと明るくなった桜君に 微笑ましさを感じた。 慣れない手つきで、 スプーンを持つ所も、 本当に愛らしい。 こと言葉がつい漏れてしまわないかと 考えながら言葉を口にした。
蘇枋
桜
急に話しかけられびっくりしていたが、 顔は明るいまま、 大きく頷いていた。 幼い頃の君を見られた感じをして、 少しの嬉しさを感じた。 そして、こんなに可愛い君を、 周りの人間がどう非難したのかを 考えると、 多少の怒りも湧いてきた。
桜
ことは
できねーよ
桜
桜君が質問をしたが、 ことはさんが答える合間に 少しの間があったのを 俺は見逃さなかった。 一瞬ことはさんが 驚いた顔をしていたのは、 きっとこの会話に、 なにか思いれでもあったのだろうか。
ことは
これがコーヒー
目の前に出されたコーヒーに 少し戸惑いながらも 口をつけた桜君。 飲んだあと、 下をべっと出して 顔をきゅっと顰めていた。 案の定苦すぎた様だ。
蘇枋
桜
桜
蘇枋
桜
これちゃんと自分ので飲む
蘇枋
俺が飲むよ?
桜君は水飲む?
桜
桜
ものすごく考えた顔をし、 自分では飲みきれないと 判断したのだろう。 桜君の飲み残したコーヒーは 俺へと回ってきた。
初めての間接キスが、 こうなるとは思わなかったが、 今の俺は、君の可愛さに 絆されているだろう。 そんなことあまり気に留めなかった。
再びキラキラした顔をし、 オムライスを頬張る君をみながら、 俺はひっそり下をべっと だしたのだった。