桜島の灰が雪のように降り積もる中、二人の咆哮が夜の空を震わせる。 鹿児島の放つ「チェストぉぉぉッ!」という叫びと共に、古太刀の鋭い一閃が福岡の硬質な肉に食い込んだ。
鹿児島
福岡の肩を穿とうと、鹿児島は古太刀を振り下ろす。
固い皮膚を突き破られ、赤黒い血と真っ赤な火花が噴き出す。だが、福岡は痛みに怯むどころか、その返り血を舐めとり、爛々と輝く瞳で鹿児島を見据えた。
福岡
福岡の背中から、山笠の縄を思わせる筋肉繊維がギチギチと音を立てて膨れ上がる。 異常な可動域で振り下ろされる福岡の爪。鹿児島はそれを太刀の腹で受け流すが、重い衝撃に足元の岩が砕ける。
鹿児島
鹿児島
泥臭い拳と、誇り高き太刀。 満身創痍の鹿児島は、もはや気力だけでその場に踏みとどまっていた。
しかし、その時。 福岡の動きが、ぴたりと止まった。
鹿児島
獲物を仕留める絶好の機会。なのに、福岡の意識は目の前の鹿児島から逸れ、鼻先をヒクつかせながら、風の吹く方向 そして、遠く離れた「生存者の街」の匂いを嗅ぎ取った。
福岡
先ほどまでの狂気的な戦意が、一瞬で「ただの飢え」に塗りつぶされる。 福岡にとって、鹿児島との戦いは「遊び」に過ぎなかった。
福岡
両手の血管を浮き上がらせ、地面を強く踏みしめる。次の瞬間、鹿児島とは真逆の方向へ、彼の体が弾のように勢いよく飛ぶ。
鹿児島
鹿児島が制止する間もなく、福岡は常軌を異した速さで、夜の闇へと消えていく。その背中は、もはや武人のそれではなく、ただの「飢えた獣」そのものだった。
鹿児島
鹿児島
立場は逆転した。逃げる獣を、孤高の武士が地獄の果てまで追い詰める。
先ほどの戦い、そして体力の消耗により、ズキズキと痛む全身を必死に動かし、泥と血にまみれた手で、福岡の足首を必死に掴み取った。
体が激痛で震え、呼吸をするたびに肺が焼けるように痛む。それでも、鹿児島は離さない。
福岡
俺の飯が逃げるやろうが!!!!
鹿児島
福岡が苛立ち、鹿児島を引き剥がそうとする。しかし、鹿児島は福岡の体にしがみつき、彼の動きを封じる。福岡が絶叫した刹那、彼が背中に隠していた太い棘を、鹿児島の腹部に思い切り突き刺した。 地面に鹿児島の真っ赤な血が棘を伝って滴り落ちる。
鹿児島
それでも鹿児島は、呻き声を上げながらも、その重い体を福岡にのしかけるようにして、必死に動きを封じ込める。
鹿児島
鹿児島
福岡っ…!!
震える拳を地面に突き立て、鹿児島は「自分自身の肉体」を楔にして、化け物をその場に繋ぎ止める。
犠牲を一人も出さない。その覚悟だけが、死に体の鹿児島を動かしていた。






