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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

管制塔内部

小春

まさかあんな建物の地下にこんな場所があったとはな...

普段は私だけしか入れないんですけど今回は特別です

管制塔内部は大きなモニターが たくさんあり、まるで監視部屋 のような空間だった。

小春

で、ここで何が分かるんだァ?

あなたがこの場所にやって来た理由ですよ

小春

だからそれはテメェが

はい、これ読んでください

すると柊はアタシに 遠足のしおりみたいな 冊子を渡してきた。

小春

何だコレ?

この島の大まかな仕組みをまとめた手作りブックです

小春

凄いな...

時間は腐るほどありますから

その間に私は下界でのあなたの様子をモニターに映し出します

小春

はあ?それってどういう...

小春

まあ、取り敢えず読んでみなきゃ始まらねーか...

その柊お手製の案内ブックには この島の全貌について 詳しく書かれていた。

小春

無辜(むこ)...咎人(とがびと)...

小春

何だよコレ、歴史書読んでるみてーだなァ...

読み始めて2〜3分経った頃、 柊が正面のモニターを 見るように言ってきた。

小春

何だ...こりゃ...

夜笑

《ねぇ、小春っち‼︎起きてよぉッ‼︎》

夜笑

《舞...お願いだから早く...》

《姉さん‼︎AED...持ってき...た...》

夜笑

《早く舞‼︎早くしないと小春っちが》

《落ち着いて‼︎ひとまず姉さんは...心臓マッサージを...続けて...》

《その間に...準備...するから...》

これが下界のあなたの様子です

小春

下界...ってことはアタシは幽体離脱でもしてんのかァ?

幽体離脱...というより現状のあなたは死に際の状態

つまり生死の狭間にいるんですよ

小春

なっ...

小春

おい...何でこんなものを見せるんだ...

通常はここに来る間際の出来事を覚えている人は少ない

しかし、あなたはそれをハッキリ覚えていたのでここへの立ち入り許可と下界の様子を見せました

でもここに辿り着いたということは、まだ希望が残っています

小春

希望って...

あなたが生きたければ救済を、死にたければ安らかなる眠りを与えます

小春

テメェがアタシの生殺与奪の権利を握ってる訳か...

随分と言い方が悪いですね

私はあなたに選択肢を与えたんですよ?

小春

そんなモン生きたいに決まって...ッ‼︎

小春

....

どうしました?

小春

あ...れ...?

...少しお待ちください

すると柊は慣れた手つきで 画面を操作し、長い文字の羅列 を映し出した。

これは“絵鳩 小春さんの人生年表”です

幼少期に父親が消え、男遊びをしていた母親を殺した...

“人に愛されたことがない”可哀想な人生ですね

小春

黙れ...

あなたが生きたいとハッキリ言えないのはこれが原因なんじゃないですか?

小春

黙れ...黙れ...

あなたは生きたとしても、“誰にも愛されない”んじゃ意味がない...って思ってませんか?

小春

黙れって言ってんだろッ‼︎テメェにアタシの何が分かるってんだよッ‼︎

分かりませんよ、あなたの人生なんて

小春

だろうなァ‼︎だってテメェはさぞかし愛されて

愛されてませんよ

小春

っ⁉︎そ、そんな訳...

...あなたは人体実験をされたことがありますか?

小春

はあ?何を言って...

感情を消されて笑えなくなったことがありますか?

“私達”の存在意義が、戦争の生物兵器だと聞いて絶望したことはありますか?

私は...生まれた時から愛されたことがなかった

あなたはそんな悲しさを知っていますか?

小春

....

でも不思議と死にたいと思ったことはないんです

なぜならば、私には仲間がいたから

仲間のおかげで友情を知り、それがやがて愛情に変わっていった

付き合うことや結婚をすることだけが愛ではありません

どんな状況でもあなたを必要としてくれる、あなたを信じてくれる...それも愛と呼ぶことができるんです

小春

もう...やめてくれ

小春

そんな愛、愛言ったってよく分かんねーよ...

小春

でも...本当に分かんねーけど頭冷えたわ

小春

あんな映像見せられちゃ、アタシはまだ死なねーしなァ

考え直してくださって良かったです

小春

てかそんなこと考えるなんて、よっぽど暇なんだな

暇じゃないです、悠久なだけです

では時間も惜しいですし、帰還の手続きをしますね

小春

ん?でもこのガイドブックにはそんなこと書いてねーぞ

以前は不可能でしたが、私の代から変えたんです

小春

へぇー...てか、テメェはまさか...

アタシが柊に問いかけよう とした時、突如体が 光に包まれた。

小春

なっ⁉︎こ、これは?

下界に送り届けてくれるエレベーター的なものです

ちなみに、ここで起こった出来事は下界に引き継ぐことはできません

小春

それなら、柊...テメェに一つ聞きたいことがある

何でしょうか?

小春

“ルナ”は...どんなヤツだった?

っ‼︎...彼女は“私達”の問題に真剣に向き合ってくれた素晴らしい方でした

彼女がいたから皆さんが幸せに暮らせるようになった

彼女がいたから“私達”の生き様を世界に伝えることができた

小春

なるほど...ありがとな

小春

これで心置きなく元に戻れる

...あのっ‼︎戻る前に1つだけ‼︎

ここでのことを忘れても、あなたが今“感じているもの”は恐らく残るでしょう

でも、その“感じているもの”を忘れないでください

小春

ケヒヒ...この会話さえ思い出せねーのに何言ってんだァ?

...いえ、何となくです

小春

あ、そろそろ限界だわ

そして消えかける視界の端に 柊の儚げな笑顔が見えたような 気がした。

絵鳩 小春の終末論

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