春太
春太
春太
しかし、
長屋の扉を開けた先はもぬけの殻だった。
春太
春太
春太は深いため息をこぼして
《麓桜堂(ろくおうどう)》へ向かった。
・
・
《麓桜堂》
店主の希世花(きよか)
店主の希世花(きよか)
春太
店主の希世花(きよか)
店主の希世花(きよか)
店主の希世花(きよか)
春太
店主の希世花(きよか)
店主の希世花(きよか)
店主の希世花(きよか)
春太
春太は《麓桜堂》の裏に回る。
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・
そこには川幅こそ狭いものの、
それなりの深さがある川が流れている。
河童の吉兵衛
河童の吉兵衛
春太
春太
河童の吉兵衛
河童の吉兵衛
春太
春太
春太の悲痛な叫びを聞いて
河童の吉兵衛(きちべえ)は楽しそうに笑う。
河童の吉兵衛
河童の吉兵衛
春太
春太は眉間に皺を寄せて
足取り重く川沿いを歩ていく───。
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・
綺麗な朝焼けが生える海を見つめ、
白凌は首を傾げる。
白凌
白凌
白凌
まだ水を吸って重い着物の裾を絞り、
ゆっくりと立ち上がった。
春太
振り返るとそこには良く知った猫又が一匹。
白凌
白凌
春太
白凌
白凌
白凌
春太
白凌
春太
白凌
白凌
白凌
春太
白凌
春太
春太
春太
白凌
春太
白凌
白凌は楽しそう笑い、
春太はため息をこぼす。
二人は並んで浜辺をのんびりと歩く。
春太
春太
春太
白凌
白凌
春太
白凌
白凌
白凌
春太
白凌
白凌は頭を抱える。
春太
春太
白凌
春太
春太が何かに気が付き
歩みを早める。
白凌
春太は砂浜に埋もれた何かを拾い上げた。
白凌
白凌は大股で近づいて
春太の手元を覗き込む。
春太
透明なガラス瓶の中には
筒状に丸めた紙が入っていた。
春太
白凌
春太
白凌
白凌
白凌の言葉を無視して春太は瓶の蓋を開け、
中に入っている紙を取り出した。
そして、
紙を広げたところで
二人の顔が一気に強張った。
春太
春太
紙には赤茶色の文字で、
びっしりと誰かに対する恨み言が書かれていた。
春太
春太が慌ててその紙を捨てようとしたのを、
白凌がその手を掴んで止めた。
春太
春太
春太は涙目で白凌に訴えかける。
白凌
ゆったりとした口調で言うと
春太の膨らんだ二本の尾がゆっくりと萎む。
春太
春太
白凌
白凌
白凌
白凌
白凌
春太
春太
ピンと立っていた髭も耳も
シュンッと下がる。
白凌
白凌
春太
春太
白凌
白凌
言われるがまま春太は再び紙を筒状に丸め、
瓶の中に押し込み、蓋をした。
その瓶に白凌は懐から取り出した二枚の
少し湿った札(フダ)のうち
一枚を瓶に貼り付け、
もう一枚を春太に手渡した。
白凌
春太
ギュッと大事そうに札を握りしめた春太の姿を見て、
白凌は可笑しそうに笑い、
白凌
と言って歩き出した。
・
・
自宅の土間にて……
白凌
白凌
白凌
言いながら白凌は
真っ赤に燃えている小さな炭を
鉄製の箸で動かし、
竈(かまど)の火を調節する。
白凌
とぽんっ
とガラス瓶を鍋に入れる。
春太
春太は一枚の札を握りしめたまま鍋を覗き込む。
すると、
瓶に貼り付けていた札がお湯に溶け、
次いで瓶からじわじわと
黒い靄がお湯に溶けだした。
白凌
春太
白凌
春太
春太
春太
春太
白凌
春太
春太
白凌
白凌
白凌
白凌
白凌
火傷しないように細心の注意をはらいながら
瓶を取り出し、蓋を開け、
鉄製の箸で器用に中の紙を取り出す。
今度はその紙だけお湯に沈めた。
すると、
ぶわっ
と黒い靄が出てきて、
それから
紙に書かれた文字が一つ一つ紙から取れて
お湯の中をクルクルと舞い踊りながら溶ける。
白凌
白凌は苦笑いを浮べて、
さらに塩を一つまみ入れる。
春太
白凌
白凌
白凌
春太
春太
白凌
白凌
白凌
春太
春太
どこか感動したような眼差しを向けると
白凌
と白凌は笑みをこぼす。
お湯の中を踊っていた文字が
完全に消えたのを確認して、
春太が持っている札もお湯に入れるように言った。
恐る恐る札を入れると、
わずかに黒い靄が出て
すぐにお湯に溶けて
札ごと消えた。
白凌
白凌
白凌は鍋を竈から下ろし、
土間に直置きすると、
お湯の中に唯一残った白紙を鉄製の箸で掴み上げ、
ひょいっ
と竈の火の中に放り込むと
あっという間に燃えて無くなった。
白凌
白凌
春太
春太
白凌
白凌
白凌
白凌
聞かれて春太は
物凄い勢いで首を横に振った。
白凌
白凌
白凌
白凌
春太
春太
白凌
白凌
春太
春太
白凌
春太
白凌
白凌
春太
白凌
春太
白凌
白凌
春太
春太
白凌
そんなことを話しながら
二人は家を後にした───。
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『流れ着いた手紙』 ─了─
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