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小豆洗いの平八

お祭り♪お祭り♪

春太

機嫌が良いにゃ

小豆洗いの平八

お、春太遅かったな

小豆洗いの平八

また白凌を探してたのか?

春太

白凌は二日酔いで死んでるにゃ

小豆洗いの平八

相変わらずだな

春太

相変わらずだにゃ

小豆洗いの平八

ってことは

小豆洗いの平八

祭りの準備の手伝いは春太だけか

春太

昼過ぎには叩き起こしに行くから心配無いにゃ

小豆洗いの平八

りょーかい

平八は笑って言った。

春太

それで…

春太

今年は何を売るのかにゃ?

小豆洗いの平八

今年も”おはぎ”だな

持って来た鍋の蓋を開けると、

中にはたっぷりの餡子が。

春太

うにゃぁ…

春太

美味しそうだにゃぁ

春太は目をキラキラと輝かせる。

小豆洗いの平八

今年も良い出来だ

小豆洗いの平八

んで

小豆洗いの平八

これからもち米を炊く

小豆洗いの平八

それを手伝ってくれ

春太

わかったにゃ

春太は蒸篭(セイロ)にもち米を入れ、

平八は火を熾す(おこす)。

春太

それにしても

春太

みんな凄い気合が入ってるにゃ

小豆洗いの平八

そりゃそうさ

小豆洗いの平八

隠(いん)の神様に感謝する特別な祭りだし

小豆洗いの平八

酒も肴も大盤振る舞い

小豆洗いの平八

日頃仲が悪い奴とも

小豆洗いの平八

今日だけは酒を交わせる

小豆洗いの平八

実に良い祭りだよ

春太

確かにそうにゃ

春太が大きく頷いた瞬間、

ドンッ

と下から突き上げるような衝撃が走った。

春太

にゃ、にゃんにゃ!?

咄嗟に蒸篭を抑えるが、

衝撃はその一回だけだった。

小豆洗いの平八

大丈夫か?

春太

大丈夫にゃ

春太

一体…なんにゃ?

小豆洗いの平八

さぁ…な

周りにいる妖怪たちもざわめく。

小豆洗いの平八

とりあえず

小豆洗いの平八

大丈夫そうなら準備の続きをしようか

春太

わかったにゃ

噂話が好きな妖怪

おいおい聞いたか?

暇な妖怪

何をだ?

噂話が好きな妖怪

さっきの衝撃

噂話が好きな妖怪

雨女と雪女の喧嘩が原因らしいぞ

暇な妖怪

またか

暇な妖怪

今回は何が原因で喧嘩になったんだ?

噂話が好きな妖怪

大福餅の餡子は

噂話が好きな妖怪

こし餡かつぶ餡か…

暇な妖怪

くだらねぇ

噂話が好きな妖怪

まったくだ

噂話が好きな妖怪

すぐに清姫(きよひめ)が仲裁に入ったから

噂話が好きな妖怪

あれだけの衝撃で済んだらしいが…

暇な妖怪

祭りの前にこれだ

暇な妖怪

先が思いやられる

噂話が好きな妖怪

確かにな

仕切りたがりの妖怪

おーい!

仕切りたがりの妖怪

お前ら!ちょっとこっち手伝ってくれ

噂話が好きな妖怪

あいよー

小豆洗いの平八

今の話し聞いたか?

春太

聞いたにゃ

春太

オイラはどっちの餡子でも好きだにゃ

小豆洗いの平八

そこじゃない

春太

んにゃ?

小豆洗いの平八

雨女と雪女の話しだよ

春太

んにゃ!?

小豆洗いの平八

あの二人

小豆洗いの平八

仲が良い時と悪い時の温度差が凄いからなぁ

春太

最近は喧嘩してなかったのに

春太

些細な事で喧嘩しちゃったにゃ…

小豆洗いの平八

結界に影響が出ないといいんだがな

春太

今は強化されてるから大丈夫だと思うにゃ

春太

(でも、ちょっと嫌な予感がするにゃ…)

そして、

その予感はだいたい当たるモノである。

お祭りに来ていた。

父と母と姉と。

「走ったら危ないよ」

「迷子になるよ」

その言葉を無視して

幼い姉妹は初めて見るお祭りに光景に興奮し

駆け出した。

手をしっかりと繋いでいたはずなのに、

気が付けば姉の姿は無く

両親もいない。

泣くのをぐっと我慢して

探し回っていると

突然強い風が吹いて、

声が聞こえた。

女の人の声だった。

母か

姉か

そのどちらかだと思い、

駆け出した先にあったのは

見知らぬ町だった───。

春太

は、白凌……

昼過ぎ。

二日酔いで寝ているはずの白凌を起こすため

彼の長屋に訪れた春太は

鼻の頭を真っ白にさせた。

春太

い、いくらお金がにゃいからって…

春太

人身売買に手を出すにゃんて!!

白凌

出してないってば

白凌は呆れたように言う。

春太

じゃ、じゃあ

春太

その子は一体…

春太

どういうことにゃ!?

春太が指差した先には

白凌の隣で大福餅を頬張る女の子がいた。

春太

お、おまけに

春太

その大福餅はオイラのにゃ!!

白凌

あ、あ~…

白凌

それはすまない

白凌

あとで弁償するよ

”のあ”

……ねこちゃん…

春太

ねこちゃんじゃないにゃ

春太

オイラには春太っていう

春太

とびきり良い名前があるにゃ

”のあ”

はる、た?

春太

そうにゃ

春太

名前はなんて言うにゃ?

”のあ”

…のあ

春太

”のあ”はどこから来たにゃ?

”のあ”

……

”のあ”は食べかけの大福餅に視線を落としただけで、

答えなかった。

春太

白凌…

春太

これはどういうことにゃ?

春太

人身売買じゃないにゃら

春太

どこで彼女を拾ってきたにゃ

白凌

うーん…

白凌

護神木(ごしんぼく)の辺り…としか

春太

護神木?

春太

そもそも白凌は二日酔いで寝ていたはずにゃ

春太

どうしてそんなところに?

白凌

うん、そうなんだよ

白凌

寝ていたはずなんだけどね

白凌

妙な夢を見ていて

白凌

起きたら護神木の近くにいたんだ

春太

どんな夢を見たらそうなるにゃ

白凌

この世で一番旨い酒が振る舞われるっていう夢

春太

…相変わらずにゃ

白凌

あははっ

白凌

で、結局お酒はなかったけど

白凌

彼女が居たってわけ

白凌

護神木の近くって

白凌

あっちとこっちの境目があったっけ?

春太

あるにゃ

春太

境目じゃなくて”護門(ごもん)”って呼ばれてる

春太

正式な出入り口にゃ

白凌

ということは

白凌

彼女はその”護門”を潜ってきたのかな?

白凌

彼女、人の子でしょ?

春太

そうにゃ

”のあ”は春太と白凌のやり取りを

大福餅を頬張りながら見ていた。

白凌

でも

白凌

門と言えども

白凌

境目には変わりがないはず

白凌

あちらとこちらが交わらないように

白凌

結界が張ってあるはずだよね?

春太

そうにゃ

白凌

簡単に通れるものなの?

春太

そんなわけないにゃ

春太は”のあ”の隣に腰を下ろし、

大福餅に手を伸ばす。

春太

護神木の周りにある結界は

春太

護神木の力だけで維持してるにゃ

春太

その力は強靭で

春太

ちょっとやそっとじゃ歪まないはずにゃ

春太

おまけに”護門”の管理者は

春太

月世見(つきよみ)神社の宮司さんにゃ

春太

簡単には開けないはずにゃ

白凌

……ふむ

春太

でも

春太

歪まないけど

春太

結界は絶対じゃないにゃ

白凌

ん?

春太

器用な妖怪なら結界を少し開けて

春太

あちら側に行くこともできるんだにゃ

白凌

へぇ

白凌

そうなのか

白凌

私はてっきり

白凌

春太みたいに許可を得た妖怪しか

白凌

出入りできないものだと思っていたよ

春太

実はそうでもないんだにゃ

春太

白凌だってその気になれば結界を抜けて

春太

あちら側に行けるってことにゃ

白凌

へぇ…

春太

興味ないのかにゃ?

白凌

今のところはね

春太

びっくりにゃ

白凌

なんで?

春太

あっちにもたくさんお酒があるから

春太

行きたいと思ってるものだと思ってたにゃ

白凌

うーん…

白凌

それは実に魅力的な話しだけど

白凌

今はいいかな

白凌

こっちのお酒でも十分満足してるし

春太

にゃるほど

白凌

…こっちからあっちには入れるけど

白凌

あっちからこっちには入れない、よね?

春太

そうにゃ

春太

人間は妖術が使えにゃいから

春太

結界によって普通は弾かれるにゃ

白凌がおもむろ大福餅に手を伸ばしたが、

その手を春太は尻尾で”はたいた”。

白凌

むっ……

春太

だけど

春太

さっきも言った通り絶対的な結界じゃないにゃ

春太

不測の事態が起こると

春太

結界が歪んで

春太

強度が落ちるにゃ

春太

強度が落ちると人間が迷い込むことがあるにゃ

白凌

それってよくあることなのかい?

春太

不測の事態はそうそう起こることじゃないにゃ

白凌

確かに…

白凌

ということは

白凌

誰かが結界を開けた可能性が高いってことか

ふと、春太は思い出す。

春太

あの衝撃…

白凌

衝撃?

春太

そうにゃ

春太

平八のところで出店の準備をしているときに

春太

下から突き上げるような衝撃があったにゃ

春太

雨女と雪女が喧嘩したから起こった衝撃だって

春太

他の妖怪が話しているのを聞いたにゃ

春太

もし、その喧嘩が護神木の近くで起こったことだったら

白凌

結界に何らかの異常が発生した可能性が?

春太

あると思うにゃ

春太

白凌は何か覚えてないかにゃ?

白凌

うーん……

白凌

女性の声を聞いたような気はするけど

白凌

記憶が曖昧だね

”のあ”

声…

白凌

ん?

”のあ”

わたしも声を聞いたの

”のあ”

お母さんかお姉ちゃんの声だと思って走ったら

”のあ”

ここに……

白凌

なるほど

白凌

彼女は意図せずこちらに迷い込んでしまったようだね

白凌

春太

白凌

彼女をあちらに送り届けてあげなよ

白凌

許可証を持つ君なら

白凌

さして難しいことじゃないだろ?

春太

そうしたいのは山々にゃんだけど

春太

それが今は無理なんだにゃ

白凌

え…

白凌

まさか…

白凌

許可証を

白凌

剥奪されたのかい?

春太

違うにゃ!

春太

オイラは優秀な猫又にゃんだから

春太

剥奪なんてされないにゃ!!

白凌

じゃあなんで?

春太

お祭りの最中は結界が強化されちゃうから

春太

許可証があっても無理なんだにゃ

白凌

なんと…

白凌

つまりお祭りが終わらないと帰れない、と

春太

そういうことにゃ

白凌

だって

白凌

もう少しここで良い子にしていられるかい?

”のあ”は円らな瞳で白凌を見て

それから春太を見た。

”のあ”

お姉ちゃん…

春太

お姉ちゃん?

”のあ”

お姉ちゃん…

”のあ”

いないの…

春太

お姉ちゃんも一緒だったのかにゃ?

”のあ”は小さく頷く。

白凌

うーん…

白凌

あの場所には君しかいなかったけどなぁ

春太

先に迷い込んじゃったのかにゃ?

白凌

……

春太

……

春太が立ち上がる。

春太

だったら早く見つけない大変にゃ

白凌

妖怪に食べられる前に

”のあ”

食べられる…

春太

物騒なこと言わないにゃ!

白凌

あ、ごめんごめん

春太

白凌

白凌

わかってるよ

白凌

彼女のお姉さんを探すんだろ?

春太

そうにゃ

白凌

その前に

白凌

準備しないとね

”のあ”

準備?

春太と”のあ”は同時に首を傾げた。

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