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君に伝えようと思った。

この好きって気持ち………。

愛弓Side

好きになってはいけなかった16

昨日

悠真

えぇ!!?明日!!?

愛弓

う、うん………

愛弓

どう、かな…?

悠真

いいと思う!!!✨

悠真

ナイスだよ愛弓!!

私は次の日に告白するつもりだと、 悠真に言った。

すると彼女は自分のことでもないのに こんなに喜んでいる……。

彼女はいい人だ…

成功しない恋を… 精一杯応援してくれている。

期待を裏切りたくないけど…

愛弓

いや、でもOKされるわけないしさ……

悠真

そんなことないよ!!

悠真

肝心なのは返事じゃない!

悠真

相手に伝わるかどうかだよ!

愛弓

いや、ま…そうなんだけどさぁ…。

悠真

悠真

愛弓…。

愛弓

え…?

悠真

愛弓はなっつのどこが好きになったの?

悠真

私ちゃんときいてないよ…。

愛弓

それはっ……

誰かをみつめる彼の真剣な瞳に…

恋をしただなんていえない…。

それを遠回しに言えば… その眼差しは私には向かないってことも…。

愛弓

真剣なとこだよ……

愛弓

ほら、あの人…何かと真っ直ぐでしょ?

愛弓

そういうとこ…

悠真

やっぱりね……

愛弓

へ?

悠真

なっつのよさ、ちゃんとわかってるじゃん!

愛弓

ゆ…悠真…?

悠真

ていうことはだよ!?

悠真

なっつは真剣に告白を聞いてくれる人!

悠真

それは愛弓にもわかってるでしょ?

愛弓

う……うん。

悠真

だったら大丈夫!!

悠真

きっとうまくいくから!

愛弓

そっか、…

愛弓

ありがとう。

そして今日がその日だ。

告白をする日。

自分の気持ちをはっきりさせる日。

夏輝は悠真が体育館裏に呼んでくれることになっている。

愛弓

ふぅ…、

心臓の音がうるさかった。

夏の蒸し暑さのせいか、妙に汗がシャツの下に流れこむ。

あとは………待つだけ。

『あなたは存在してはいけないの… 勝手なことをしないで。』

愛弓

え………。

その声は脳裏に流れ込んだ。

夏輝

ふぃーーー

夏輝

部活終わりー!!

俺は体育館倉庫の前にドカッと座る。

真夏の日差しを遮るように タオルを顔にかぶせ一息をつく。

夏輝

つっかれたぁ……

???

榎本くん…水。

夏輝

おお…サンキュ。

俺は水を受け取り、 ペットボトルの蓋を開けた。

そのまま、 一気に喉に流し込んだ後に気づく。

受け取った……?

誰に………?

夏輝

!?

俺は慌てて横をみた。

夏輝

おまえっ…は。

???

ふふ……

???

バィバィ…榎本。

俺の視界はその後真っ暗に染まった。

悠真

あれ………?

悠真

あ、あの………

テニス部部員

はい?

悠真

なっつ…榎本くんは、もう帰ったんですか??

テニス部部員

え、いや…

テニス部部員

さっき水飲みに行ったっきり帰ってきてないですよ…?

テニス部部員

着替えてなかったので帰ってはないかと……

悠真

そう……ですか。

どこ行ったんだろ、なっつ。

夏輝

くぅ………うぅ…っ…

目を覚ますと…そこは暗闇だった。

土臭い匂いと、ホコリの匂い。

ここはそうだ…

夏輝

体育倉庫か……?

俺はここから出ようと扉へと即座に 立ち上がる。

扉の前にきて、扉をひいてみる。

しかし…

ガチャガチャッ

夏輝

!?

夏輝

なっ…なんで開かないんだよ…。

扉はかたく閉ざされていた。

夏輝

鍵かけられてんのかっ…くそっ。

あいにく、ここの扉は 内側から鍵を開けることはできない…。

さて、どうしたものか……。

俺はその場にしゃがみこむと しばし唸った。

俺をこんな状況にした人物…

あれは愛弓だった…

いや、あの雰囲気はもしかしたら…

というより俺は確信した。

あれは愛弓ではなく、麗美の方だと。

夏輝

はぁ…

スマホを手に取ろうとポケットに滑らせた右手が空を切った。

夏輝

しまった!

夏輝

部活中だった…。

スマホもない、鍵もしまってる…

これは……

夏輝

ピンチ💧

身体を乗っ取られた。

今は私が占領していたはずなのに…。

愛弓

私は想いを伝えられないんだ…

その声は心の中に留まった。

声にならない声に…

私はげんなりする。

肝心な時にばかり彼女が邪魔をする…。

愛弓

ねぇ…麗美、

愛弓

お願いだから邪魔しないでよ…。

この声はきっと彼女には届かない。

私はもう彼女に逆らえない。

大好きな彼のことを想うことさえ… 叶わないというのなら…

私は一体なんなのだろう。

麗美

あなたは飾りにすぎなぃ…

愛弓

!?

麗美

本体は、私なの。

麗美

これは昔からそうだったでしょ?

麗美

この身体は"楠橋 麗美"のもの

麗美

あなたは私に取り付く邪魔な"生霊"…

麗美

ちがう?

愛弓

生霊…っ……

麗美

そうよ、

麗美

だから存在するべきじゃないの……

そんな…そんなの、

だったら私は…今まで彼女に利用されて…

愛弓

いやだ!!!

愛弓

そんなのやだよ!

愛弓

私はだったら何の為に…

麗美

麗美

麗美の為に生きてきたんでしょ?

麗美の為に……?

違うっ……、

愛弓

違う!!!

私は………っ、

私は……!

麗美

それに…あなた、榎本のこと好きになったんだよねぇ…

愛弓

っ…それは…、

麗美

そんなの許さないから。

愛弓

はぁ…?

愛弓

なんで…っ?

麗美

さっきから言ってるじゃない、

麗美

本体は、私。

麗美

私が主人公だから…。

愛弓

主人公とか……

愛弓

なんだよそれ……

今までどう接してきたろう…

コイツとは、何度も笑いあった。

だけど全部……、

私は利用されて、コイツは私を利用した。

思うままに動かされて………、

もう限界だ。

愛弓

好きを…………、

麗美

愛弓

好きを貫き通して何が悪い!!

麗美

愛弓

アンタも同じだろ!?

愛弓

本体なんて……

愛弓

本体なんて、

愛弓

愛弓

私達には関係ない!!!

麗美

……。

麗美

はぁ、

麗美

愛弓、あなたのこともっと信用してたのになぁ…

麗美

麗美

どの口が言ってるのよ…

麗美

私に逆らわないで、生霊の分際で。

麗美

あぁそっか……

麗美

瑠色のこと好きになればいいよぉ…

麗美

そしたら麗美、自分の身体だからいくらでも応援してあげる。

麗美

愛弓もその方が楽だと思うけどぉ?

愛弓

つまり、

愛弓

私にアンタになりきれって言いたいの?

麗美

もちろんじゃない…

愛弓

やだね。

麗美

……。

麗美

意味分かんない、何がいいのよ…

麗美

麗美

叶わない恋じゃない。

愛弓

それはアンタも同じだろ…。

麗美

え…、

愛弓

全部悠真にとられるんだ。

愛弓

でも私は悠真はいいやつだと思う。

愛弓

好きだもん悠真のこと。

麗美

どうしてよ…

麗美

好きな人が彼女ばっかり見つめることに…

麗美

不満とかないの!?

愛弓

あるよ…

愛弓

でも私は不満より、彼を愛する気持ちを持ちたい。

愛弓

私はまだ……好きを伝えてない。

愛弓

だからどいて……。

愛弓

ここからは…

愛弓

私が主人公だから!!!!

私は麗美を突き飛ばした。

『ありえない…』そう言った彼女が、 呆気なく消滅していく。

もう誰にも左右されない。

私は私。

彼女は彼女。

これで終わりだ。

夏輝

くそっ………開かねぇ…

落ちていた木で扉を、開けようとボロボロになった両手に血が滲む。

どれだけの時間がたったろう…

俺はすでに、 ここから出ることを諦めていた。

明日になったら先生が見回りに来てくれるだろう…、

俺はため息をついてその場に寝転んだ。

ボロボロの体操マットは、 やはり土臭かった

俺はゆっくりと目をつぶる。

カチャン

愛弓

夏輝!!!

体育倉庫の鍵を開けると、

私は夏輝のもとへ駆け寄った。

体育マットの上に寝転んでいた彼は

どうやら眠っているらしい…

愛弓

な、夏輝…?

私は呆気にとられたまま、 彼の横に座った。

同級生だっていうのに…、

なんでだろう。

後輩みたいだな……、

愛弓

可愛い。

私は悪戯心を抑えきれず、彼の頬をつついた。

すると眠そうな彼がゆっくりと瞼を開く。

愛弓

あ…

夏輝

ふぇ…?

一瞬何が起こったかわかっていない様子の彼は、私をみると状態を起こした。

夏輝

猫娘…2号………、

愛弓

う…うん……💧

夏輝

なんで俺、ここに……?

愛弓

あ…えと……、

私は、ようやく自分が言わねばならないことがなんなのか思い出した。

彼の寂しそうな瞳を見るととても辛い。

愛弓

夏輝…、

愛弓

ごめんね。

愛弓

ごめんなさい。

夏輝

え……

夏輝

なんで?

愛弓

こんなとこに閉じ込めて…本当にごめんなさい。

私は俯いたまま彼に謝罪した。

夏輝

なんで…謝んの?

夏輝

だって俺のこと閉じ込めたのは…

夏輝

夏輝

猫娘1号の方だろ?

愛弓

え……

てっきり彼は、私と麗美の違いをわかってくれてないと思っていた。

だけど彼は………

愛弓

なんで…わかったの?

夏輝

そりゃ、わかるよ…

夏輝

ダチのことくらいすぐわかる。

愛弓

あ………

"友達"か………

夏輝

ん…?どした?

愛弓

あ、いやなんでもない。

愛弓

あのさ、夏輝……!

君はどう思ってるんだろうって…

ずっとずっと…考えてた。

私のこと…どう感じてくれてる?って

でもやっと確信したよ…、

だけどどうであろうと、関係ない。

私はね…この恋にケリをつけたいから…

愛弓

私っ…夏輝のことが好きだから!!!

夏輝

え、あ…

彼をちゃんとみつめて…

私はきちんと伝えた。

伝えたかったこの気持ちを…

夏輝

お前っ……、

愛弓

そうだよ、私はアンタのことが好きなんだ。

愛弓

これは…

愛弓

"楠橋 愛弓"の気持ちだから!!

夏輝

っ…、

ねぇ、今どう思ってる?

知りたくて仕方ないんだ。

こんなに私を惚れさせて…

こんなに夢中にさせて…

本気で恋させて……。

君の視線の先はどうであれ…

今はこの時間を大切にしたかった。

夏輝

あり…がとよ…

かすかに漏れ出た君の言葉に、

私は胸が熱くなる。

あぁ…この言葉が聞きたかったんだと…

ちゃんと伝わったんだと…。

夏輝

麗美を押しのけてまで、このことを伝えに………

夏輝

助けに来てくれたんだよな……

夏輝

マジで嬉しい。

そうだ…この顔がみたかった…

何よりこの顔が…

大好きだから…。

夏輝

そう…だよな…、

夏輝

確かに嬉しいよ、その言葉をくれて…。

夏輝

本当にお前はいいやつだな……。

夏輝

でも、男には女の気持ちに…

夏輝

夏輝

YESかNOかこたえなきゃなんない時がくんのさ………、

夏輝の顔が、更に真剣になっていく…

夏輝

俺が真っ直ぐに恋してぇって思ってんのは…

夏輝

夏輝

先輩だ。

愛弓

………

愛弓

うん。

夏輝

多分だけどこの気持ちは…

夏輝

2人が結婚しても失せねぇな…

愛弓

うん……

夏輝

先輩はずっと前から俺の中の光なんだ…。

夏輝

諦めきれねぇさ、あの綺麗な輝きは……………。

"輝き"

愛弓

そっか…

愛弓

さすが悠真だね!

愛弓

じゃあ私は失恋ってことに…

愛弓

なるんだな…

改めて思うと少し悲しいけど…

私は笑顔を続けた。

愛弓

アンタがその気なら…私だって言い分があるよ…

夏輝

え?

愛弓

アンタが悠真を想う分…

愛弓

私だって…

愛弓

こりるまでアンタのこと、想い続けてやるよ!!!

夏輝

…!

夏輝

そっか……

夏輝

さすが猫娘2号…っ!

夏輝は相変わらずの笑顔で私の頭を撫でた。

くすぐったくて、嬉しかったけど…

やっぱり…

悔しいなぁ…

でも私も…

私だって笑い続けなきゃ…

頑張るんだ。

愛弓

猫娘2号ってなんかやだ!

夏輝

は、はぁ?

愛弓

麗美の複製みたいだからやだ…

愛弓

私は私だし。

愛弓

だから……

愛弓

夏輝

そっか、

夏輝

わかったよ…

夏輝

愛弓。

愛弓

ふぇ…!?

夏輝

な、なんだよ……

愛弓

急に言うな!気持ち悪い!!

夏輝

なんだよー!お前が言えって言ったんだろ!?

愛弓

だけど、不意打ちだから拒否するし。

夏輝

はぁぁーー!?

愛弓

でも……

愛弓

愛弓

有難う。嬉しい。

夏輝

……ん。

夏輝

友達として、でいいか?

友達……

まだ私には… これが丁度いいのかもしれない…

愛弓

おう!!!

君らしい君が好き。

どうか、ずっと……

想いたい誰かを、君が…

想い続けられますように…✨

愛弓

好きになって…よかった。

隠れるように落ちた雫は、

たったひと粒だけ、地に落ちたきり…

もう落ちてはこなかった。

愛弓Side 完

好きになってはいけなかった2

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