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セイヤ

ツヨシのやつ、やけに自信あるみたいだけど大丈夫なんだろうか?

ヨウタ

分からないけど、あいつの班にはナギがいるからな。

アカリ

あの子、頭がいいからね。

マドカ

頭がいいのと勉強ができるのって別物なんだけどな。

ハカセ

確かツヨシとナギは交際をしているんだっけ?
実にアンバランスなカップルではあるな。

マドカ

まぁ、高校の時の男女の仲って、長続きしないものだけどね。

ヨウタ

夢のない話をするなよ。

ツヨシの班には、彼の彼女であるナギがいる。

トイレで話した時も、ナギのほうがなにかを提案してくれたと言っていたが――。

志賀先生

ツヨシ、開票するぞ。
いいな?

ツヨシ

さっさとしろよ。
なんでもお前の思い通りになると思ったら大間違いだ。

担任は少しばかり笑みを浮かべると、開票を始めた。

志賀先生

1票目――ツヨシ。

黒板にツヨシの名前が書かれ、名前の下に【正】の字が構築される。

志賀先生

2票目、ツヨシ。

志賀先生

3票目もツヨシ。

ハカセ

全員の票をツヨシに集めて、2番目に得票した人間はいないと主張する方法か。

マドカ

私達も一度は試そうと思ったけどさ、実はかなりリスクあるよね?

ハカセ

あぁ、まず全員が必ずツヨシに投票しなければならない。
ツヨシ自身も含めてね。

セイヤ

ツヨシは自分自身に投票して、他の5人もしっかりツヨシに票を集めなければならないわけだよな。

アカリ

あのさ、いまさらなんだけど、自分に投票するのって大丈夫なの?

セイヤ

投票してはいけないと明言されているのは、他の班の人間だけだ。

セイヤ

それは問題ないよ。

マドカ

しっかり事前に照らし合わせて投票する。

マドカ

その当たり前が、あの班にできるかなぁ――って思って。

セイヤ

それ、どういう意味だ?

マドカ

見ていれば分かるよ。

志賀先生

4票目もツヨシだ。
ここまではナンバーズと同じ展開だなぁ。

そう言ってナンバーズ達の席に視線をやる担任。本人達は脱力したかのようにうなだれていた。

志賀先生

いや、違うか。
5票目――ツヨシ。

ツヨシの名前の下に、とうとう【正】の字が完成する。

ヨウタ

票がツヨシに集中すれば、実質的な2位は残りの得票数0の人間になる。

マドカ

この実質的な2位ってのも気になるのよ。

マドカ

確かに2位は得票をしていないけど、実質的に2位だからって、殺されるような気がするのよね。

ハカセ

最初の班は白紙で投票しただけで全員殺された。

ハカセ

確かに、担任ならルールを理不尽に曲解する恐れはあるね。

セイヤ

なんにせよ、ツヨシ達のやり方が上手くいってくれればいいんだけど。

最後の1票。

それを開票した時、担任がかすかに笑ったような気がした。

志賀先生

ふふっ……。

志賀先生

人間ってのは残酷だなぁ。
特にお前達くらいの年齢は、
色々と不安定だ。

志賀先生

またひとつ勉強になったな。ツヨシ。

静まり返った教室に、チョークが黒板を走る音だけが響いた。

【ナギ 1票】

ツヨシ

え……なんで?

志賀先生

結果、ツヨシが5票、ナギが1票で、2位はナギ!

志賀先生

ツヨシ、残念だよ。
せっかく彼女と同じ班にしてやったのに、真っ先に彼女が死ぬなんて。

ナギ

……ツヨシ。

ツヨシ

……誰が入れたんだ?

ツヨシ

誰がナギに票を入れたんだ!

いきなり立ち上がると、班のメンバーに対して怒鳴るツヨシ。

カナ

ツヨシ君、落ち着いて。

カナ

ね?

ツヨシをなだめようとしているのは、クラスでは大人しめのカナだった。

マドカ

おー、やってるわねぇ。

マドカ

ここだけの話、カナってさ、ずっとツヨシのこと好きだったらしいのよね。

マドカ

さてさて、裏切って、ツヨシの彼女に投票したのは誰なのかなぁ?

ヨウタ

マドカ、なんか楽しんでねぇか?

ヨウタ

どういう神経してんだ?

マドカ

楽しんでなんかいないわよ。

マドカ

そこまで神経図太くないわ。

志賀先生

とにかく、ナギはここでサヨナラだ。

担任の言葉に合わせて、フルフェイスAのほうがツヨシの班のほうへ向かう。

フルフェイスA

立て……行くぞ。

ヨウタ

これで、あのフルフェイスも教室の外に出たら、ここには担任しか残らない。

ヨウタ

一斉に担任に飛びかかれば、なんとかなるんじゃねぇか?

フルフェイスBは、ナンバーズと共に教室を出たまま、まだ戻っていない。

これでフルフェイスAも教室の外に出てくれれば、担任だけになる。

反撃のチャンスだ。

そんな考えが頭をよぎるが、しかしタイミング悪くフルフェイスBが教室へと戻ってきた。

アカリ

まぁ、こうなるよね。
抜かりなしって感じ。

フルフェイスAに促されても、ナギは中々立ち上がろうとしない。

フルフェイスA

聞こえないのか?

フルフェイスA

立てと言っている!

ツヨシ

あのさ!
俺が代わる!

ツヨシ

なぁ、俺が代わるから!
ナギを連れて行くのはやめてくれよ!

フルフェイスAの前に立ちはだかるように、ツヨシが割って入る。

ツヨシ

なぁ、いいだろ?
俺が代わるんだからナギは助けてやってくれよ!

担任のほうへと訴えかけるツヨシ。

すると、担任はまばらな拍手を始めた。

志賀先生

いやー、青春だねぇ。

志賀先生

愛する者のためには命を捨ててもいい?

志賀先生

そんな自分カッケーとか思ってんじゃないのか?

志賀先生

あのな、世の中には星の数ほど女はいるわけだし、これからの人生でもっといい女に出会うことがあるだろうさ。

志賀先生

高校なんていう、狭苦しい環境で出会った男女なんて、長続きしないんだよ。

志賀先生

もし、お前がここを生き延びて大人になった時、きっと俺に感謝するよ。

志賀先生

あー、先生。あの時はありがとう……。

ツヨシ

ふざけんなよ!
誰が感謝なんてするか!

志賀先生

まだ話の途中だったんだけどな。
まぁいいや。連れてって。

フルフェイスAがナギを羽交締めにすると、そのまま教室の外へと向かう。

戻ってきたばかりのフルフェイスBも手伝わねばならないほど、ナギは抵抗をしていた。

ナギ

助けて!
ねぇ、ツヨシ。
助けてよ!

ツヨシ

ナギっ!

ナギに駆け寄ろうとするツヨシに向けて、フルフェイスBが銃口を向けた。

ナギ

ツヨシ!
ツヨシーー!

ツヨシに助けを求めながら、ナギは教室の外へと連れ出されて行った。

教室の外に出ても、ナギはツヨシの名前を叫び続けていた。

しかし、無情にも一発。

それと同時に助けを求める声も途絶えた。

ツヨシ

……志賀。
てめぇぇぇぇぇぇ!

セイヤ

まずい!
ヨウタ、ハカセ。
ツヨシを止めるぞ!

担任に向かって殴りかかろうとするツヨシ。

担任ならば、迷うことなく引き金を引く。

そう考えたセイヤは立ち上がり、声に応じてくれたヨウタとハカセの2人と共に、ツヨシの前でスクラムを組む。

セイヤ

やめるんだツヨシ!
命を無駄にするだけだぞ!

ヨウタ

落ち着こう!
な、一旦落ち着こう!

ハカセ

君の心中は察する。
でも、君にはナギの仇を討つ使命があるんじゃないのか?
だったら、生きるべきだ。
生きろ!

猟銃を構えた担任に向かって飛びかかるなんて、命を捨てるも同然だった。

ツヨシ

……くそ。
くそぉぉぉぉぉぉっ!

ツヨシはその場で泣き崩れ、そこにカナが声をかける。

志賀先生

いやぁ、ナイスセーブだ。

志賀先生

思わず引き金を引くところだったよ。

志賀先生

さて、セイヤ達は席に戻れ。

志賀先生

続きをするぞー。

淡々とした口調でありながら、銃口はしっかりとセイヤ達のほうに向けてくる担任。

セイヤ達は席に戻る。

志賀先生

よーし、それじゃあ、たった今素晴らしいスクラムを見せてくれたセイヤ達の開票を始めようか。

感情の整理がつかない中、とうとうセイヤ達の班の開票が始まる。

3年D組のクーデター

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