ミツルギ
うぉぉぉぉぉ!!
ドーリ
ぎゃぁぁぁぁぁ!!?
ドーリ
ミツルギ先輩こっち来ないでぇ!?
ミツルギ
フハハハっ!!死なば諸共ぉ!!
ドーリ
なんでカブケラトプスの突進を味方に擦り付けようとぉ!?
ミツルギ
どうだぁ!?
ミツルギ
怖かろう!?
ドーリ
えぇ!怖いですね!あなたの思考が!!
ミツルギ
では、こうしよう
ミツルギ
さながら砂浜で追いかけっこをするカップルかのごとく
ミツルギ
うふふ、あははと言えば恐怖は和らぐだろぉ?
ドーリ
馬鹿じゃないですか!?
ドーリ
どこの世界に巨大生物に追われながら青春謳歌するカップルがいると!?
ミツルギ
あはは♪待ってよ、ドーリくーん♪
ドーリ
うぁぁぁぁぁ!!
ドーリ
恐怖が二倍に増幅した!
ドーリ
なんなら今は巨大生物よりも先輩の方が怖い!
ドーリ
なんかこう、精神を攻撃してきてる感じしてすごく嫌!
ミツルギ
待て待てぇ♪
ドーリ
本っ当にこないでぇぇ!!?
ヴェロス
ヴェロス
………これ見せられてる私が1番嫌
ミツルギ
……よし!お戯れはこの辺にしとこうか
ドーリ
ふぇ?
ミツルギ
カブケラトプスを殺るにはこうやって低空飛行で追わせないと行けなくてね
ミツルギ
ヴェロスちゃん
ヴェロス
は、はい
ミツルギ
カブケラトプスの背面撮ってるけど
ミツルギ
羽の下のあの柔らかい部位
ミツルギ
君の全力で引いた弓で射抜けるかな?
ヴェロス
……わからないです
ヴェロス
風圧で飛ばされるかもしれません
ミツルギ
まぁ、物は試しだ
ミツルギ
僕止まると死んじゃうから
ミツルギ
追いながら狙い定めてみてくれる?
ヴェロス
……姉ほど器用では無いですが
ドーリ
……なら、俺が協力するっす!
ミツルギの前を走っていたドーリは切り返し右に逸れたあと槍を地面に突き刺し、台として利用する
カブケラトプスの上を超えつつ、事前に槍にまきつけていた布を引っ張り手元に回収させ背後を取る
ミツルギ
アクロバティックだねぇ
ヴェロス
で、でもどうやって協力を?
ドーリ
時にヴェロスさん
ヴェロス
?
ドーリ
体幹は強い方かな?
ヴェロス
人並みだと思いますけど……
ドーリ
よーしじゃあ、チャレンジしよう!
ヴェロス
え?
ドーリ
俺が槍を思いっきり投げるっす
ドーリ
その投げた槍の上に乗って矢を撃ち込んで欲しいっす
ヴェロス
そ、そんなこと言われても…
ドーリ
まぁ確かに現実的では無いっすけど
ドーリ
これ出来たらカッコイイっすよ?
ヴェロス
……カッコ良さよりも、確実性を取るものじゃ?
ドーリ
おねーさんと比べられるの
ドーリ
もう飽き飽きっすよね?
ヴェロス
!
ドーリ
おねーさんにはおねーさんの良さがあるように
ドーリ
ヴェロスさんにはヴェロスさんの良さがある
ドーリ
見せてあげましょうよ
ドーリ
比べてきた連中にヴェロスさんの、ヴェロスさんだけの魅力を、ね?
ヴェロス
……分かった
ヴェロス
自信はないけどやってみる
ドーリ
その意気っす!
ドーリ
手順は簡単で俺が先に槍を投げるっす
ドーリ
その時ヴェロスさんは俺の前を少し走ってて欲しくて
ドーリ
槍が当たらない左右どちらかを走り、来たと同時に飛び乗って欲しいっす
ヴェロス
ドーリくんの槍はどうするの?
ドーリ
狙い通りならそのままカブケラトプスに直撃ですが
ドーリ
その槍はブラフ
ドーリ
本命はヴェロスさんの渾身の矢ですからね!
ヴェロス
………分かった
ヴェロス
ドーリくん信じるよ
ドーリ
任せて欲しいっす!
ミツルギ
あ、あのぉぉぉ!!?
ミツルギ
流石に僕も疲れたよぉ!?
ミツルギ
足取れちゃうからお願いできるかなぁ!?
ドーリ
先輩も呼んでるしやりましょう!
ヴェロス
うん
ドーリ
まずは、俺の槍をぶん投げるっす!!
勢いを付けて思いっきり投げる。およそ人体から投げられたとは思えないその槍は勢い殺さず真っ直ぐ進む
その槍を目視で確認後、意を決してその槍の上に飛び乗る。
ヴェロスが乗ったことで勢いが落ちるかと予想されたが、そんなことはなく変わらぬ勢いを保つ
そしてその上フラフラとはしているが立つヴェロスは、呼吸とバランスを整え弓を構える
ヴェロス
(お姉ちゃんは私と同じ状況になったらどうするかな)
ヴェロス
(他の協力を仰ぐかな?)
ヴェロス
(それとも、一人で片付けちゃうかな?)
ヴェロス
(どっちに転んでも結果は同じ)
ヴェロス
(お姉ちゃんは負けない)
ヴェロス
(その立場が私になったら)
ヴェロス
(後者は難しい)
ヴェロス
(一人であれこれできる技力は私には無い)
ヴェロス
(だから他の協力を仰ぐを選択するしかない)
ヴェロス
(でも、私はそれすらも選択できなかった)
ヴェロス
(一人でなんでも出来る姉と補助輪が必要な妹)
ヴェロス
(比べる対象が大きいから私が何を選んでも劣っているで終わる)
ヴェロス
(だから私は選択を放棄した)
ヴェロス
(けど、今は違う)
ヴェロス
(マジックウェポンの適性者として選ばれた)
ヴェロス
(私に後ろ指さしてた人達を見下すことはしない)
ヴェロス
(代わりに私はもう一度『選択』を手にすることが出来た)
ヴェロス
(私は立つよお姉ちゃん)
ヴェロス
(今、初めて私はスタートラインに立てた)
ヴェロス
(もうお姉ちゃんは随分先に行っちゃったけど)
ヴェロス
(すぐに追いつく…)
ヴェロス
(そして、追い抜くよお姉ちゃん)
ヴェロス
(この一撃はその誓い)
ドーリの投げた槍は見事カブケラトプスを貫く、しかしそれでもなお彼は動きを止めない
ドーリ
さぁ!やっちゃってください!
槍が当たる数瞬、ヴェロスは宙を舞い背に陽を浴び狙いを定める
ヴェロス
これが今の私の……
ヴェロス
ありったけ!!
空中からカブケラトプスの柔らかい肉目掛けた矢がその肉を引き裂く
ミツルギ
よ、よくやった……
ミツルギ
僕はもう……歩けん
ドーリ
いやー
ドーリ
やっぱり虫さん強いっすね!
ヴェロス
………ふぅ
ドーリ
あっ!ヴェロスさん!
ドーリ
めっちゃカッコよかったっす!!
ヴェロス
……そう、ですか
ミツルギ
ん?どうかした?
ヴェロス
ヴェロス
た、高いところ怖かったぁぁ………
ミツルギ
…アッハッハッハッハッ!
ミツルギ
僕が考えてるより君達面白い人で良かったよ
ドーリ
締まりが悪いっすよ?ヴェロスさん?
ヴェロス
…怖いものは……怖いんです