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涙が出てくるぐらい切ないです。2人の思いが叶うことを切に祈ります………(冗談抜きで普通に泣いてた。神作をありがとうございます!)
過去を捨てようと歩く蘇枋と、 過去に縋るように生きる桜。 蘇枋が振り返らず歩いたのはきっと……
話をしよう。 そう言い、ぐちゃぐちゃに 広がった荷物を拾い上げるも、 出てくる言葉は1つもなかった。 無言で物を拾い上げては、 ダンボールへと放り込む。
蘇枋
蘇枋
あまりにも無言の時間が 長かったからか、 蘇枋が痺れを切らして 話を切り出した。 少し冷たい声色に、 俺の体からは 冷や汗が吹き出した。
今までに感じたことがない 蘇枋の冷たい視線を向けられる 感覚に、俺の体は 恐怖を覚え硬直していた。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
言葉がつまり、 口がパクパクと動く。 何を話せばいいのか、 何から話せばいいのか、 高校生から何年も経った今でも、 正直に話すというのは 中々に難しく、 簡単に言葉は出てこなかった。
桜
蘇枋
蘇枋
桜
結局俺は何も話せず、 蘇枋のペースに飲まれてしまった。、 ぐちゃぐちゃだったはずの 部屋は綺麗に片付き、 この部屋から出ていこうと ドアノブに手をかけた 蘇枋の背中を、 俺は静かに見つめる他 成す方法はなかった。
部屋に1人取り残された 俺は、 壁からずり落ちる様にして、 床に座り込んだ。
桜
手で目を覆い隠して、 俺の見ている景色は、 闇の中へと消えていった。 せっかくもう一度話す チャンスだったのに、
後悔してもしきれない 俺の思考は 深い闇へと落ち、 意識はいつの間にか 呑まれてしまっていた。
焦り、急いで 家から出てしまった所為で、 ホテルの鍵を 忘れてきてしまったのを思い出した。 とっくに日が暮れている空を 眺めつつも、 俺の足は迷いを混ぜながら 彼のいる家へと引き戻って行った。
蘇枋
蘇枋
しばらく経っても返事は 帰ってこず、 鍵が掛かっていないドアを ゆっくり遠慮ガチに開けた。
蘇枋
俺と一緒に住んでいた時と まるで変わらない不用心さに 相変わらずだなぁ、と しみじみ思ってしまった。
ドアを閉め 中へと進んで行くと、 小さな部屋が見えていた。
蘇枋
奥に進み、いざ部屋へ 足を踏み入れると、 壁に凭れながらも 静かな寝息を立てて座っている 俺の…… 元恋人がいた。
蘇枋
顔を除きこもうと しゃがみこむも、 気持ちよさそうに目を閉じ、 全く起きる気配もなかった。
あれだけ引越しの手伝いを してくれたんだ。 疲れてぐっすり眠って しまったのだろう。
蘇枋
今にも崩れ落ちてしまいそうな 君のきれいな肌に、 俺はそっと手を添えた。 いつでも半袖で 過ごしている君は、 少し肌寒そうに 唸り声を上げていた。
蘇枋
蘇枋
君より少し大きな俺の上着を 掛けた。 寒そうに唸っていた君は、 また静かに奥深い眠りへと 着いてしまった。
俺は机に置いてあった ホテルの鍵を手に持ち、 今度こそはと 思い出に別れを告げた。
蘇枋
少し深く黒い色に染まった空を 見上げながら、 俺は後ろを振り向かずに 前を見え歩いた。
突然日が登りかけていた夜に 目が覚めた。 また誰かが寂しく タバコを吸ってるんじゃないか、 そう思った。 けど見つめた先のベランダには 誰もいないし、 狭いはずのこの部屋は、 前よりももっと広く感じた。
動こうと踠いていると 何かが軽い音を立てて床へ落ちた。
桜
落ちた上着をひろいあげ、 暗い部屋の中目を凝らし よく見ると、 俺が何度も見たことのある、 懐かしい色の上着だった。
持っている上着から、 仄かに匂いが香ってきた。 その匂いはものすごく安心し、 俺の心を落ち着かせた。
その上着を持っている内、 俺の意識はまた闇へと呑まれてゆくのを感じ、 抗おうともせず、 俺は静かに力が 抜けて行くのを感じた。