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目が覚める

薄汚れた壁

茶色いクローゼット

机の上に飾られた家族写真

いつもの見慣れた景色が広がる

和彦

夜か…?

壁にかけられた時計を見ると

短い針は9を指していた

外は暗闇に包まれているが

ザーザーという音が聞こえて来る

おかしい

俺は確か飲み会で飲みすぎて倒れて

眠ってしまって…

一日中寝てたのか…?

疑問を感じながらも 小腹が空いたので

俺はリビングへと足を運んだ

和彦

みずき?

和彦

真由美?

和彦

一歩?

家族は出かけているのだろうか

そう思った刹那

玄関のドアが開いて 彼らが入ってきた

和彦

おかえり

和彦

どこへいっていたんだ?

しかし返事がない

和彦

またか…

和彦

無視しないでくれよ

ついふと声に出してしまう

真由美は高校二年生だが

中学に上がる頃には 既に

『反抗期』 というものが始まり

洗濯は一緒にするな 風呂は最初に入らせろなどと

何かと俺を嫌っていた

一歩もだ

まだ中学一年生だが

姉が嫌うのを見て自分も 真似したのか

 はたまた最初から嫌いだったのか

最近から無視をされるようになった

前はパパ,パパ言って 可愛かったのにな…

和彦

なんで…制服なんだ?

和彦

今日は日曜日だろ?

返事はない

和彦

あれ…日曜か…?

和彦

飲み会は土曜日の夜だったよな…

しかし二人はそれも聞こえないかのように

テレビのリモコンへ手を伸ばす

みずき

二人とも手は洗ったの?

突然声をあげたのは 妻のみずきだ

和彦

おかえり

和彦

どこへ行ってたんだ?

みずき

二人とも!

それには答えず彼女は続ける

一歩

洗った洗った

一歩

ね?ねーちゃん

真由美

うん

真由美

洗ったわよ

和彦

洗ってないじゃないか

和彦

早く洗ってきなさい

みずき

そう

みずき

ならいいわ

和彦

みずき…

妻のみずきもまた

最近は俺をゴミでも 見るかのような目で見てくる

和彦

俺がもし死んでしまったら

和彦

みんな…どうせ泣くくせに…

少し強い口調になってしまった

しかし俺がこう思うのには 訳がある

以前肺炎で入院した時

命の危険もあったらしい

三人とも大声で泣き出した

あれからまだ半年も経っていない

和彦

あれ…みずき…

和彦

なんで喪服なんだ…?

和彦

誰かの葬式か…?

みずき

あーだるかった

彼女はそれには答えずそう言う

真由美

ねーねー

真由美

保険っていくら入った?

みずき

会社からも賠償金が出るから

みずき

あなた達の教育費や

みずき

ローンは大丈夫よ

真由美

よかった〜

一歩

やっと死んでくれたね

みずき

本当よ

みずき

しかも

みずき

毎日弁当に少量の毒を入れたってのに

みずき

会社の飲み会で

みずき

アル中だからね…

一歩

薬代がね〜

和彦

和彦

何を言っているんだ?

真由美

あーキモかった

真由美

なんでお母さんあんなのと結婚したの?

みずき

仕方ないじゃない

みずき

うちまで押しかけたのよ?

みずき

あんた達のおばあちゃんとおじいちゃんが

みずき

彼なら幸せにできるはずだ,って

みずき

どこがだっつーの

真由美

あいつこれ聞いてたりして?

一歩

まさかぁ〜

みずき

知らないまま死ねばいいじゃん

一歩

そういうの

一歩

知らぬが仏って言うんでしょ?

真由美

そうそう

みずき

馬鹿でもわかるのね

一歩

失礼な

真由美

あはは

何を言ってるんだ?

誰の話をしてるんだ?

俺は死んだのか?

じゃあ…三人は…

俺の葬式に…

違う

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う

これは夢だ…

夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ

なぁ…頼むよ…

無視しないでくれ

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コメント

7

ユーザー

三潴さん! コンテストへのご参加、 ありがとうございます!🙇🏻‍♂️ 〝無視〟を題材にした1つの救いもないお話で、読んでいてグサグサと辛かったです…😭 本来なら聞けないというか、聞きたくない話を一方的に聞かされて、さらに自分はもうこの世にいないという…🤯 これは辛すぎる…泣

ユーザー

うおお恐ろしい… 「声をあげて泣いた」のは演技だったのでしょうか…😱

ユーザー

えーーーーーー❗️❗️怖いよ❗️

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