目が覚める
薄汚れた壁
茶色いクローゼット
机の上に飾られた家族写真
いつもの見慣れた景色が広がる
和彦
壁にかけられた時計を見ると
短い針は9を指していた
外は暗闇に包まれているが
ザーザーという音が聞こえて来る
おかしい
俺は確か飲み会で飲みすぎて倒れて
眠ってしまって…
一日中寝てたのか…?
疑問を感じながらも 小腹が空いたので
俺はリビングへと足を運んだ
和彦
和彦
和彦
家族は出かけているのだろうか
そう思った刹那
玄関のドアが開いて 彼らが入ってきた
和彦
和彦
しかし返事がない
和彦
和彦
ついふと声に出してしまう
真由美は高校二年生だが
中学に上がる頃には 既に
『反抗期』 というものが始まり
洗濯は一緒にするな 風呂は最初に入らせろなどと
何かと俺を嫌っていた
一歩もだ
まだ中学一年生だが
姉が嫌うのを見て自分も 真似したのか
はたまた最初から嫌いだったのか
最近から無視をされるようになった
前はパパ,パパ言って 可愛かったのにな…
和彦
和彦
返事はない
和彦
和彦
しかし二人はそれも聞こえないかのように
テレビのリモコンへ手を伸ばす
みずき
突然声をあげたのは 妻のみずきだ
和彦
和彦
みずき
それには答えず彼女は続ける
一歩
一歩
真由美
真由美
和彦
和彦
みずき
みずき
和彦
妻のみずきもまた
最近は俺をゴミでも 見るかのような目で見てくる
和彦
和彦
少し強い口調になってしまった
しかし俺がこう思うのには 訳がある
以前肺炎で入院した時
命の危険もあったらしい
三人とも大声で泣き出した
あれからまだ半年も経っていない
和彦
和彦
和彦
みずき
彼女はそれには答えずそう言う
真由美
真由美
みずき
みずき
みずき
真由美
一歩
みずき
みずき
みずき
みずき
みずき
一歩
和彦
和彦
真由美
真由美
みずき
みずき
みずき
みずき
みずき
真由美
一歩
みずき
一歩
一歩
真由美
みずき
一歩
真由美
何を言ってるんだ?
誰の話をしてるんだ?
俺は死んだのか?
じゃあ…三人は…
俺の葬式に…
違う
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
これは夢だ…
夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ
なぁ…頼むよ…
無視しないでくれ
コメント
7件
三潴さん! コンテストへのご参加、 ありがとうございます!🙇🏻♂️ 〝無視〟を題材にした1つの救いもないお話で、読んでいてグサグサと辛かったです…😭 本来なら聞けないというか、聞きたくない話を一方的に聞かされて、さらに自分はもうこの世にいないという…🤯 これは辛すぎる…泣
うおお恐ろしい… 「声をあげて泣いた」のは演技だったのでしょうか…😱
えーーーーーー❗️❗️怖いよ❗️