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手探りで今日も君を探す

何処を探しても見つからないのは

頭の何処でだって 分かってるけど

隣は勿論、どこを探しても 君は見当たらないなぁ

人の憎しみとか悪意とか ろくなものが落ちていないよ。

君のいない世界は こんなにも窮屈だ

去年の夏の暑い日。

僕は校庭の隅で君に告白した

…ごめんなさいっ!

勢いよく礼をされて 逃げるように去られたけど

僕はまだ君への気持ちに 区切りがつかなかったみたいで

無口な僕は何も言えないまま その場に立ち尽くしていました

薄いシャンプーの香りに 少しだけ酔ったまま

紅くなった頬を 冷ましながら

あの告白の結果は 悲しい結果だったけれど

あれから変わったことが一つだけ

ね、風磨

ポン、と肩を叩かれるのと同時に 声の方を向くと

ポニーテールを揺らした君が 何やら楽しそうにしている

どうしたの?

海行きたいから、さ

付き合ってよ、放課後

……はいはい

なにその興味なさそうな顔!

別に、興味無い訳ではないですよ〜

いや絶対めんどくさい顔したでしょ!

してない、してない

適当にあしらうと 諦めたようで

放課後に、いつものとこね

耳うちするように声を潜めて 他の友達のもとへ行っていた

告白して変わったのは

前より君が よく話しかけてくること

まだ諦めきれないこの気持ちを 後押しするようで

僕の心臓は誰にも知られずに うるさくなっていく

そんなことも知らずに 君は話しかけてくるけどね。

おぉー!海だぁー!!!

はしゃぐ君を横目に 僕は砂浜を歩く

真夏の海は思ったよりも冷たくて

冷たいよ!ねぇ!

笑いながら寄せる波と戦っていた

そうだねぇ…

元気だな…

はしゃぐ君とは正反対に 海に乗り気になれない僕

狭い教室と比べて 大きい海がなんだか怖かった

海って…こんなにも大きかったんだなぁ…

やっぱり、そう思うんだ?

釣り堀の端っこに座った 君の横顔を見た

そりゃあ、校舎の一部屋に閉じ込められてたら思うでしょ

あはは、と笑うその笑顔は 何処か切なげで

世界というか、世間が窮屈だね

うん。

考えたくないくらい、苦しいなぁ…

なんとなく呟いた言葉も 波の音に掻き消されて

まるで無かったことのように 沈んでいく

傾き始めた太陽は 残酷なほどに美しくて

この夕焼けは老若男女 構わず美しいことに吐き気がした

私さ、

うん?

死にたい

……っ

淡々と呟いた君は さっきの笑顔を浮かべたまま

綺麗すぎる夕焼けを見つめていた

僕を取り巻く空気だけが

特別遅い

嫌い。
嫌いだよ

教室の狭さとか

クラスメイトの鋭い目とか

ビルに切り取られた狭い空とか

言葉の裏に隠された真相とか

夜の深さとか

全部、全部

えっ…と

まくしたてるように 小さく叫ぶ彼女の声は

震えていた

でもね

そうやって全部嫌って自分を正当化してる自分が一番

大嫌い

いつの間にか潤み始めた 君の目から涙が零れた

夕焼けよりは幾らか醜いのに

彼女の涙は夕焼けより ずっと魅力的だと思った

好きでいてくれてありがと。

私のこと、ちゃんと忘れてね。

やっと僕の目を見た彼女は 泣きながらも笑っていた

死なないで、ください

僕はまだ彼女が好きだ

え?

僕は、貴女とまたこの海に来たい…

縋るように呟くと

彼女は何故か おかしそうに笑って

バカ

「死なないで」なんて「生きる意味」をくれてから言ってよ…

最期に柔らかく笑った彼女は

深くて広い海に飛び込んだ

ちょっと…?!

やっぱり、冷たいね!!

早く……、沈むぞ…!!

釣り堀から手を伸ばすと

沈むよ、私

え?

さよなら、好きになってくれてありがとうね

恋愛的じゃないけど、私も好きだよ

そんな告白、なにも嬉しくない

早く君が陸に上がってくれたら それでいい

存在するだけで嬉しい人

「好きな人」って そういう人でもあるよ、多分

ねぇ…!ねぇ!!

必死で叫ぶけど 君は波と一緒に海に飲まれていく

沈みかけた太陽と 沈んだ君の残骸を

時間だけが過ぎた釣り堀で 眺めていた

それからの日々はよく覚えていない

なんとなく受験して なんとなく就職して

空っぽの人生を無心で生きる僕は 多分、何よりも醜い

あの日から僕には閉塞感がまとわりついている気がする

狭いな

心も空も居場所も視界も

息苦しい世界で目に見えないものと戦っているような

終わりの見えない戦いに 迷い込んだような気がした

地上から遠ざかっていった空から 冥土の土産のように雪が落ちる

手の中に落ちれば 溶けてしまうのに

君に、会いたい

なんとなく呟いた言葉は

栄えた街の雑踏に もみ消されて殺された

あの夏の一握りの青春を思い出す

僕は今でも君を探して海岸を歩く

あの釣り堀に君が夕焼けを 見つめて座っている気がして

呆気なく終わるであろう人生を 君の一欠片が邪魔をする

優花

君が嫌いだった世界は今日もこんなに夕焼けが綺麗だよ

「残酷なほどに」

と、つけたそうと 口を開きかけたまま辞めた

行き場を無くした言葉が 波に消されていく

その言葉と共に僕も消してくれ

残酷な世界はもう散々だ

そう感じた時には体が動いていて

釣り堀の端っこから 彼女と同じように海に沈んだ

肺から空気が零れて 海に溶けるように沈む体

雪の散る空の下に置かれた海は 人の視線よりかは温度があった

誰にも手を差し伸べられない 君の温度にすら触れられない

淡い期待が水に溶けて飽和する

冷たい空気と窮屈な空を 僕は最期まで眺めていた

この作品はいかがでしたか?

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コメント

116

ユーザー

ブクマ失礼します、、!!

ユーザー

切ないのに何かが誇らしく見える……内容の一つ一つが心に響きました。最高です。

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