手探りで今日も君を探す
何処を探しても見つからないのは
頭の何処でだって 分かってるけど
隣は勿論、どこを探しても 君は見当たらないなぁ
人の憎しみとか悪意とか ろくなものが落ちていないよ。
君のいない世界は こんなにも窮屈だ
去年の夏の暑い日。
僕は校庭の隅で君に告白した
君
勢いよく礼をされて 逃げるように去られたけど
僕はまだ君への気持ちに 区切りがつかなかったみたいで
無口な僕は何も言えないまま その場に立ち尽くしていました
薄いシャンプーの香りに 少しだけ酔ったまま
紅くなった頬を 冷ましながら
あの告白の結果は 悲しい結果だったけれど
あれから変わったことが一つだけ
君
ポン、と肩を叩かれるのと同時に 声の方を向くと
ポニーテールを揺らした君が 何やら楽しそうにしている
僕
君
君
僕
君
僕
君
僕
適当にあしらうと 諦めたようで
君
耳うちするように声を潜めて 他の友達のもとへ行っていた
告白して変わったのは
前より君が よく話しかけてくること
まだ諦めきれないこの気持ちを 後押しするようで
僕の心臓は誰にも知られずに うるさくなっていく
そんなことも知らずに 君は話しかけてくるけどね。
君
はしゃぐ君を横目に 僕は砂浜を歩く
真夏の海は思ったよりも冷たくて
君
笑いながら寄せる波と戦っていた
僕
僕
はしゃぐ君とは正反対に 海に乗り気になれない僕
狭い教室と比べて 大きい海がなんだか怖かった
君
僕
釣り堀の端っこに座った 君の横顔を見た
君
あはは、と笑うその笑顔は 何処か切なげで
僕
君
君
なんとなく呟いた言葉も 波の音に掻き消されて
まるで無かったことのように 沈んでいく
傾き始めた太陽は 残酷なほどに美しくて
この夕焼けは老若男女 構わず美しいことに吐き気がした
君
僕
君
僕
淡々と呟いた君は さっきの笑顔を浮かべたまま
綺麗すぎる夕焼けを見つめていた
僕を取り巻く空気だけが
特別遅い
君
君
君
君
君
君
君
僕
まくしたてるように 小さく叫ぶ彼女の声は
震えていた
君
君
君
いつの間にか潤み始めた 君の目から涙が零れた
夕焼けよりは幾らか醜いのに
彼女の涙は夕焼けより ずっと魅力的だと思った
君
君
やっと僕の目を見た彼女は 泣きながらも笑っていた
僕
僕はまだ彼女が好きだ
君
僕
縋るように呟くと
彼女は何故か おかしそうに笑って
君
君
最期に柔らかく笑った彼女は
深くて広い海に飛び込んだ
僕
君
僕
釣り堀から手を伸ばすと
君
僕
君
君
そんな告白、なにも嬉しくない
早く君が陸に上がってくれたら それでいい
存在するだけで嬉しい人
「好きな人」って そういう人でもあるよ、多分
僕
必死で叫ぶけど 君は波と一緒に海に飲まれていく
沈みかけた太陽と 沈んだ君の残骸を
時間だけが過ぎた釣り堀で 眺めていた
それからの日々はよく覚えていない
なんとなく受験して なんとなく就職して
空っぽの人生を無心で生きる僕は 多分、何よりも醜い
あの日から僕には閉塞感がまとわりついている気がする
狭いな
心も空も居場所も視界も
息苦しい世界で目に見えないものと戦っているような
終わりの見えない戦いに 迷い込んだような気がした
地上から遠ざかっていった空から 冥土の土産のように雪が落ちる
手の中に落ちれば 溶けてしまうのに
僕
なんとなく呟いた言葉は
栄えた街の雑踏に もみ消されて殺された
あの夏の一握りの青春を思い出す
僕は今でも君を探して海岸を歩く
あの釣り堀に君が夕焼けを 見つめて座っている気がして
呆気なく終わるであろう人生を 君の一欠片が邪魔をする
僕
僕
「残酷なほどに」
と、つけたそうと 口を開きかけたまま辞めた
行き場を無くした言葉が 波に消されていく
その言葉と共に僕も消してくれ
残酷な世界はもう散々だ
そう感じた時には体が動いていて
釣り堀の端っこから 彼女と同じように海に沈んだ
肺から空気が零れて 海に溶けるように沈む体
雪の散る空の下に置かれた海は 人の視線よりかは温度があった
誰にも手を差し伸べられない 君の温度にすら触れられない
淡い期待が水に溶けて飽和する
冷たい空気と窮屈な空を 僕は最期まで眺めていた
コメント
116件
ブクマ失礼します、、!!
切ないのに何かが誇らしく見える……内容の一つ一つが心に響きました。最高です。