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らん
右手を口に当てて、典型的なあくびのポーズをつくる
今日も変わらず、白い部屋の白いベッドの上で目覚める。
病院特有の消毒の匂いが鼻をくすぐる朝。
俺は、病室にある小さな窓から空を見つめた。
あの日、出かけてから約1週間が経ったが
最近夢にいるまが来なくなってしまった。
俺が眠りにつき、夢の中で目覚めると
目にするのはいつもの光景。花畑だ
けれど、広い野原のどこを探してみても
俺の夢の中にはいるまが居ない。
ただ、俺が見つけられるのは
ほかの花とは違う輝きを放つ
1本のシュウメイギクだけだった。
いるま
あの日からどれだけの時間が経っただろう
あの後、俺は案の定彼奴らに気づかれてしまい、
キモイ男たちに無理やり車へと乗せられた。
俺の体には手錠と目隠しが付いていて、
此処が何処なのか把握できなかった。
建物の中に入ってからしか俺の視界には映っていないから
詳しくは分からない。
が、きっと廃墟かなにかだろう。
車から降ろされたあと、建物の中に入った途端目隠しだけが外されて
建物の地下室に放り込まれた。
よくある監禁パターンだ。
地下室に着いた後、また目隠しをつけられ
部屋の端側に、鎖で足が繋がれている。
何も見えないし、動けない。
そんな状態で、俺は彼奴らから暴行を受けた。
キモイ奴
いるま
顔や腹、足など
沢山のところを殴られ蹴られ
俺の体は傷だらけ。
此処に来てからもう1週間くらい経った気がするが
彼奴らは日によって暴力のやり方を変える。
普通に俺をひたすらサンドバックにする日もあれば
カッターやナイフなど、凶器を持ち出してくる日もある。
キモイ奴2
いるま
俺の体に沢山傷をつけた後は
血が出ている傷口を何回も押して
痛みを悪化させる。
その繰り返しが何度も行われる
地獄の監禁生活なのだ。
キモイ奴3
キモイ奴3
いるま
でも、どんなに俺をいたぶって、苦しめても
死なないよう、最低限の世話はしてくれる。
ご飯も三食あるし
トイレも行かせて貰えるし
風呂だって入れる。
こんなにも俺を奴隷みたいに好き勝手するくせに
死なせてはくれないんだ。
この環境が最悪すぎるせいで
眠りについたって、らんのとこに行けやしない。
...まぁ、らんの前に現れないのは
汚い俺を見せたくない、という自分の意思からかもしれない。
実際、俺はここから出てらんに会えても
多分一目散に逃げるだろう。
こんな俺を見せたくない
彼女?
彼女?
キモイ奴
お、早速お出ましだ。
この女は、前も会ったことあるが
らんの彼女のふりをしてる女だ。
偽彼女野郎だな。
どうやらこの偽彼女野郎の親が裏社会の人間らしく
キモイ男達はそこから連れてこられた雑魚なのだと。
俺が居る前で、その事を悟らせるような話をベラベラとしてやがった。
こっから出た瞬間通報してやるからなこのクソババア
彼女?
彼女?
いるま
いきなりなんだこの女
俺の事ここから出してくれんのか?
願うならば一刻も早くこんな所おさらばしたいが……
彼女?
はぁ?
こんな身体にしたのはお前らのせいだろうが……
という訳で、俺はあの廃墟から出られたんだけど……
いるま
家に帰ってみると、俺の目に映るのは
ゆらゆらと燃え上がる炎。
俺の家が、炎に包まれていた。
通行人
通行人
いるま
待ってくれ、冗談じゃない
ここは俺とらんの家なんだぞ?
二人での思い出が詰まった……
大切な家なのに……
俺は、あんなクソ女のせいで
らんも、らんの記憶も、思い出の証も……
大事なものを、全部奪われなきゃいけないのか……ッ?