この作品はいかがでしたか?
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今よりも数十年前のこと
魔王軍と人類の戦争が激化していた殺伐とした黒の歴史の頃合だろうか
禁断の魔法に成功しそれにより大きく戦力が増強された
人の体を奪い魂を魔物のものにする
魔王軍に新たな配下が加えられた
それは通称人魔という新たなる生き物だ
人でありまた、魔物でもある
その力は個体差によるがベースとなる人の体がより強ければ強いほど
受肉した魔物の魂も強化されていく
数こそたかだか10何名と少ないが
その実力は魔王軍幹部たちも認めるほどのものだった
その中に1人イレギュラーな人魔がいた
ほかの人魔は魔王に忠誠を誓い
そして破壊の限りを尽くす… そんな奴らばかりであった
そんな中【ルイ】と名付けられた人魔は他の人魔とは違い
忠誠は確かに誓っているが破壊の限りを尽くすかと言われればそれはなかった
刈り取る必要のない命は奪わず見逃す
仲間の人魔にそれを咎められても自分のした事は間違いではないと
きっぱりと面と向かって言えるそんな少し変わった人魔だった
腕も確かなもので彼の得意とする剣技の中に蒼い炎を剣に宿し
人間の隊長格の人物をその技で仕留めるだけに留まらず
たった1人で敵の1部隊を壊滅させてしまうほど大きな力も有していた
後に彼は蒼炎の剣豪という異名を得る
彼らが生まれて数ヶ月後のことだった
魔王の命により人魔の半数を南の大陸
に派遣しそこに築き上げられた砂の王国
サバクシス王国を管理下に置くようにと命じられた
その派遣部隊にルイも含まれている
そして人員が決まり翌日にはサバクシス王国をめざして進軍することとなった
人魔部隊をまとめるいわゆる隊長となる人物は魔王により決められており
隊長はルイが務めることとなっていた
仲間達には自分が交渉をするが決裂した場合やむを得ないが国を攻撃するように
作戦を立ててそれをみな不服ながら承諾していた
あくまで管理下に置くだけなのだ
民の命までもとる必要は無い
国王がこちらの要件を承諾さえすれば
国民の安全は必ず保証すると約束するつもりだったからだ
ルイの中での予定は完璧であった
仮に決裂した場合でも国民の戦意を削ぐだけならば
国王の首をとってしまえばこちらのもの
犠牲は出したくないがもし出さなければならなくなった場合は
最低限で抑えるつもりでいる
そこまで考えて彼は行動をしていた
しかし彼はまだ知らなかった
彼の立てたプランの中に予想外の出来事が含まれていることを…
目的地であるサバクシス王国に着いたが
どうも中の様子がおかしい
城下町といえば人々が行き交い商店が開かれて賑わっているはずなのに
人の姿はほとんど見られなかった
唯一見られたのは険しい顔をした兵士たちのみ
これにはルイだけでなく仲間の人魔達も少し不安な顔をしていた
とりあえず国王と話すために城を目指す
警戒態勢なのか門番の数も他の比べるとかなり多く城内に入れるかどうか
それすらも怪しい雰囲気があった
一応門番と話をつけて国王の元にと案内される
そしてルイが国王と自分たちだけにして欲しいと願い下げると
少しの間の後国王はそれを許し護衛の兵士達を部屋の外にと出してくれた
そしてルイは意を決して魔王軍の管理下に入って欲しいと単刀直入で言う
その後管理下にさえ入ってくれれば国民の命は奪わないと約束する
そこまで話して返事を待つ
静かな時間が緊張とともに流れる
長い思考の末に国王が遂に口を開く
返答は考えさせて欲しい だった
その理由を問いただすと現在この大陸ではとある悪魔がやってくるとのことで
その悪魔から国を守らなければならないと
もしここで魔王軍の管理下に入ったとしてその時国民からはなんという声が上がるか
それが分からないがために保留を選択したと国王話してくれた
これに対しルイたちは返答のしようがなかった
本来予定していた回答は2つYESかNO
しかしここに来てそのどちらでもない回答が返ってきたのだ
返事をしようにもどう返せばいいのかそれがわからない
とりあえず一度それを呑むとして
魔王に確認を取らなければならない
しかしルイが持ち場を離れる訳にも行かず
ダメもとで仲間たちにこれを伝えて欲しいとお願いし
そこから数名一度魔王城にと帰還させた
残った数名はしばらくこの国で滞在することとなる
その間もしかするとその悪魔がこちらにやってくるかもしれない
もしそうなった場合自分達も戦闘に参加するかもしれないのか
もしくは手出しはせず大人しくその場を引くのが正しいのか
どれが正しき答えなのか分からないまま時は過ぎ去っていく
仲間達も少し苛立ちが見えてきている
それもそのはず自分と違い彼らは破壊の限りを尽くす暴君だ
大人しくしてろと言われてそのまま素直に従えるわけが無い
むしろ今こうして大人しくしてくれてるのが奇跡に近いのだ
彼らが暴れ出すのもまた時間の問題
ルイひとりが抱える問題にしてはとても捌ききれるものではなかった
それから時が経ち数日後彼らがようやく帰ってきた
魔王の伝言曰く最終的にどちらに着くかだけを聞いて欲しいとの事
それ次第では破滅させても問題ないと
その言葉を聞いたルイと聞こえてしまった国王は深刻な顔をする
ルイが今の話を国王に伝えるとかなり苦しそうな顔をしていた
管理下に入れば安全は確保されるが国民からは非難される
しかし入らなければこの国は滅亡する未来しかない
国民の命を取る代わりに国王としての威厳はその時点で腐ってしまう
そう思い悩む国王を横目にルイもまた苦しんでいた
断られれば自分がこの国王の首を取らないといけない
それが必要最低限の犠牲だとしても
自分の命より国民の命を優先して考えてる人格者なのだ
そんな人を自分がやらなければならないとなると
とても心が痛む……
また静かな時間が流れ出したがそれを破るように部屋の扉が開く
入ってきたのは慌てふためく1人の兵士
報告内容は遂に悪魔が国に進軍してきたと
国王の顔つきも一気に変わりこの話は後にして欲しいと言われた
今はこの事態を何とかしなければならない
だから答えはそれからにしてくれ、と
国王はそれだけ言い残し部屋を後にした
取り残されたルイ達はどうするか悩むしかない
交渉決裂かと言えばそうでは無いが
成立かといえばまたそれも違う
何もかもが中途半端なこの状態
決断するのはルイなのだ
彼の一言が部隊を動かすこととなる
そして悩み抜いた結果るいの導き出した答えは
悪魔討伐を手伝うことだった
これに対し仲間はみな猛反対する
しかしその後ルイはとんでもないことを言い放つ
この決断はルイ自身のもの責任は全てルイひとりが背負い込む
人に手を貸すのが嫌な奴は魔王城に帰ってくれて構わないと
そう宣言しルイは国王の後を追った
残された人魔達はしばらくの間何も出来ずただその場に立ち尽くすしか無かった
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