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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

井川悟志さんに対する証人尋問が始まった

海辺裁判官

井川かすみさんが娘さんに対して行っていた虐待について

海辺裁判官

あなたはどのように認識していましたか?

井川悟志

攻撃しているのは知っていました

悟志さんは全てを知っていた上で黙認していたことを自供

海辺裁判官

止めようとは思わなかったのですか?

裁判官の問いに驚くべき発言を繰り返す

井川悟志

必要ないと判断しました

海辺裁判官

それはなぜですか?

井川悟志

元々、産むなと言っていたんです

井川悟志

それを勝手に産み落とした……

井川悟志

私は”あれ”を認めてはいません

海辺裁判官

家族として認めていないと言うことですか?

井川悟志

最初から必要なかったんです

井川悟志

それをなぜ認めなければいけないのですか?

とても良識のある人間とは思えない発言に

法廷内が再びざわめく

海辺裁判官

静粛に!

悟志さんはかすみさんの虐待を全面的に認める発言をしつつ

あすみさんに対する親としての感情は一切、見られなかった

それと同時に

妻であるかすみさんに対しても

擁護するような発言は一切なく

堕胎を迫った自分の言葉を無視し

勝手に出産した悪妻だったと主張

その言葉にかすみさんはずっと悟志さんを睨み続けていた

井川悟志

必要だったのは男児なんです

海辺裁判官

息子さんがいらっしゃいますよね?

井川悟志

私の息子ではなく妹の息子です

井川悟志

それを無視してあんなものを……

まるで機械のように

淡々と答える悟志さんの姿

あすみさんが生まれてから一度も

悟志さんは本当に彼女を娘と思っていなかったようだ

海辺裁判官

あなたには罪の意識が感じられませんが

海辺裁判官

あなたは自ら警察に出頭していますよね?

井川悟志

どうせもう家族は崩壊する

井川悟志

だったら最後に全てを暴露してやろうと思っただけです

悟志さんからも一切の謝罪の言葉は出てこなかった

検察官と弁護人の尋問が終わり

悟志さんが法廷を去る直前

裁判官が悟志さんにもあの質問を投げ掛けた

海辺裁判官

最後に……

海辺裁判官

娘さんに対して謝罪の気持ちはありますか?

法廷内の誰もが息を飲む

井川悟志

ありません

井川悟志

何度も言いますが私は”あれ”を認めていない

井川悟志

認めていないものに謝罪などできません

井川悟志

それに私は直接、手を下していません

再び凍りつく法廷内

裁判官が静(じん)さんのことを訪ねたが

悟志さんは何も答えることなく法廷を後にした

悟志さんがいなくなり

傍聴人の視線が一気にかすみさんに集中するも

かすみさんの表情は変わらず

遂にはこんな言葉を発してしまう

井川かすみ

有罪でいいです……

かすみさんは立ち上がり更に大きな声で続けた

井川かすみ

私は娘を虐待しました!

井川かすみ

死ぬかもしれない状況に娘を放置しました!

井川かすみ

でも反省も後悔もしていません!

海辺裁判官

被告人は発言を控えてください

井川かすみ

執行猶予なんていりませんから

海辺裁判官

発言を控えなさい!

その日はそのまま休廷となり

後日、再び審議が行われることとなった

沢田マリカ

認めていないって……

沢田マリカ

謝罪も無しですか!?

芹沢大和

父親の発言にはみんな背筋が凍ったよ

芹沢大和

あの状況で毅然とした態度を貫いた裁判官は凄かったけど

あすみさんは血の繋がった実の娘なのに

悟志さんは最初から助けるつもりなどなかった

父親としての責務を自ら放棄し

あの歪んだ環境で平然と暮らしていたと思うと

実際に虐待を行ったかすみさんよりも罪深く思えてくる

それに法廷でのかすみさんの言葉は本心なのだろうか

裁判の日程が決まってから

かすみさんは私達との面会を拒否していて

今となってはもう確認する手立てがなく

心の奥にモヤモヤとした気持ちが残っていた

渇愛と純情ー愛の鎖に繋がれてー

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