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主
主
主
主
天気のことなんて普段気に止めない
でも、今日はやけに雨音が耳にうるさかった
部屋は薄暗い。カーテンは開けてない。照明もつけていない。
それでも俺の目にはあの時の光景ばかりが焼き付いて離れない
ハジメさん あの人の声、笑い方、手の温かさ、優しさ。
全部覚えているのに…ッ
塔翠
その現実だけがいつまで経っても体に馴染まない
静かな部屋で俺は膝を抱えたまま動けなかった。
飯も食べてない多分、風呂も入ってない。
何をする気も起きなくて、ただひたすら時間が過ぎていくのを眺めているだけだった
ードアのノブが静かに回る音がした
Mr.サカキ
その声だけで誰かは分かる
Mr.サカキ。相変わらず遠慮って物を知らない
塔翠
Mr.サカキ
その名前の呼び方がいちいち頭につく…いつから翠って呼ばれるようなになったんだろう
塔翠
Mr.サカキ
サカキは部屋にドスドスと入り込んで紙袋をテーブルに置いた
パンの香りがふわっと広がる
塔翠
Mr.サカキ
塔翠
冷たい声でそう言ったつもりだった。でもサカキは一歩も引かない
いつもそうだ。嫌なところだけはブレない
Mr.サカキ
塔翠
感情が一気に溢れて俺は立ち上がりざまサカキの腕を…
振り払った
彼が差し出してきた紙袋ごとテーブルから落ちる
塔翠
怒鳴りながら涙が溢れてくる。悔しい、情けない。でも止まれない
塔翠
沈黙が落ちる。自分の声だけが部屋に響き渡っていた
サカキは拾ったパンをテーブルに戻しながら
小さく、本当に小さく呟いた
Mr.サカキ
塔翠
Mr.サカキ
その声は低く、真っ直ぐで、妙に現実味があった。
いつもの皮肉も棘もない
Mr.サカキ
塔翠
Mr.サカキ
Mr.サカキ
サカキが俺の肩にそっと手を伸ばしてきた。俺は反射的に振り払ってしまった
塔翠
Mr.サカキ
サカキはあっさり手を引っ込めた
怒りも、呆れもしなかった
ただ、それ以上踏み込んでは来なかった
Mr.サカキ
塔翠
Mr.サカキ
それだけ言ってサカキは床に置いた缶コーヒーを俺の隣においた
塔翠
Mr.サカキ
Mr.サカキ
塔翠
俺は缶コーヒーを手に取った
まだ…温かかった
Mr.サカキ
塔翠
Mr.サカキ
言い放題言ってサカキは部屋を出ていった
ドアがしまった後は静かだった
けど…さっきよりは少しだけ静かじゃなかった
缶コーヒーの苦みが心に染みた
塔翠
届かなくてもいい。ただ言葉にしないと何も始まらない気がした
窓の外はまだ雨
でも少しだけ体が呼吸しやすくなっていた